脳の「幸せ」に関わるセロトニン
前回、配信750回記念として、ドラム奏者の牟田昌広さんをお迎えして1時間ほどの対談をお送りしました。
牟田さんが行っている活動に、セロトニン活性化講座というものがあります。
個人的にとても興味を惹かれ、牟田さんと知り合う大きなきっかけともなった、このセロトニンという物質ですが、これまであまりご紹介していませんでした。
今回からこのセロトニンを含めた幸せホルモンについて、詳しくまとめていきたいと思います。
未解明な部分も多い「感情に反応するホルモン」
今回のタイトルにある、「3大幸せホルモン」ですが、具体的に言うとセロトニン、ドーパミン、オキシトシンの3つです。
いずれも脳の中で、人間の感情によって分泌されているホルモンです。
人間の脳は未だ解明されていない現象も多く、脳内物質で言うと、こうした物質が出ることで幸せに感じる、不幸に感じるのか、それとも物質は関係なく、起きた出来事に対する反応として反射的に分泌されるのか、といったような具体的なメカニズムは未だ研究中です。
ですが、こうした幸せホルモンが出ているときは、人間が幸せを感じているとき、ということは明らかになっています。
これが、この3つが幸せホルモンと言われる所以ということです。
ちなみに脳内の不安や恐怖を司り、そうした出来事が起こることで分泌されるのがノルアドレナリンという物質です。
これは強いストレスに打ち勝つために分泌されるもので、多く出すぎるとヒステリーやパニックといった症状の原因となります。
この反対に、喜びや快楽、精神的なやる気、活力といったものを司るのが、前述の幸せホルモンのうちの一つのドーパミンです。
喜びや快楽に強く影響するため、多く出すぎることでアルコール依存や前回の糖質依存などのような、依存症の原因になります。
そして、このノルアドレナリン、ドーパミンの二つの量を、適切に調節する働きがあるのが、セロトニンです。
この二つは出すぎても少なすぎても問題で、バランスが取れていることで穏やかな、適切な幸福感が得られるという仕組みになっています。
また他には、セロトニンは夜の深い睡眠を引き起こすような物質の元となるため、セロトニンがしっかりと出ていると目覚めが良くなることにもつながります。
セロトニンと「うつ」の関係
脳の大きな病の一つが「うつ」です。
うつは人間の気分に深くかかわる病で、セロトニン不足からうつになる、ということがしばしば言われますが、これは実は非常に難しい部分です。
簡単に言えば、セロトニンが不足した状態が続くことで幸せな気分になれず、うつ状態になるのか、それともうつ状態の人はセロトニンが不足しているが、うつの原因はそれ自体ではないのか、という具体的な部分がまだわかっていません。
ただ、うつ状態の場合ではセロトニンが不足しているというのは明らかになっているため、やはり幸せに密接に関わっていることは確かと言えます。
セロトニンが不足すると、不眠や食欲不振の症状が出てきます。
前述のように、セロトニンが適切に出ていると快眠につながりますが、不足するということは逆に睡眠の質が大きく悪化していきます。
また、セロトニンが不足するということは、前述したノルアドレナリンとドーパミンのバランスも取れなくなるということですので、イライラするとか、他人に対して攻撃的になるとか、気持ちの中の不安や恐怖感が増大していくということになってきます。
さらに、こうした状態が長く続くと、当然幸せは感じにくくなるためセロトニンそのものが出しづらくなり、それによってさらに不幸な気分が増してセロトニンが出にくくなるという、悪循環も起きる可能性があります。
ちなみに最近では、女性ホルモンの関わりが深いことがわかってきており、生理前の特有の気分の沈み込みなどの症状を総称したPMSに関わっているとか、更年期障害の精神的に不安定になる感じも、セロトニンの不足が大きな引き金とされています。
まだはっきりとしたメカニズムは分かっていませんが、気分の落ち込みにはやはり、セロトニンが何らかの部分で関わっている可能性が高いと言えます。
セロトニンを増やすために
以上を踏まえて、セロトニンを増やすために大切なことですが、まず大前提として、現在うつ状態にある人が、こうしたらすぐに良くなる、という問題ではありません。
うつ状態だと、セロトニンを増やすために行動を起こす元気、気力も失っている状態ですので、ある意味無理矢理、勧めるようなことは辞めてください。
前提として、うつ状態ではない方に向けて、セロトニンが不足しないように、セロトニンがきちんと補給できるように、という内容ですので注意してください。
まず最初が食べもので、セロトニンの原料ともいえる物質がトリプトファンというものです。
トリプトファンが補給できるのが、たんぱく質です。
お肉、お魚、大豆、卵、乳製品といったもので、飲み物だと牛乳やトマトジュースに多いのでおすすめです。
次が非常に有名ですが、日光浴です。
朝起きたらカーテンを開けて、朝日を浴びるというのはvoicyでも自律神経の折などに触れて度々お伝えしていますが、日光を浴びることでセロトニンが増えることは明らかになっているため、確実に増やしていけます。
また、体内時計もリセットされるため、夜の睡眠にももちろん良い影響が出てきます。
そして、最初にご紹介した、今回セロトニンを取り上げるきっかけとなった、牟田さんとのお話の中で出てきたのが、20分以上の一定のリズム運動をすると、セロトニンが出るというものです。
20分ですので少し長く感じそうですが、リズム運動であれば何でもいいので、運動で言うとウォーキングやサイクリング、一定のリズムで行うダンスや、牟田さんが行っているドラムのような楽器ももちろんおすすめです。
楽器を行うスペースが無くても、手で膝を一定のリズムで叩くだけでも効果があります。
一番簡単なのは、ガムを一定のリズムで噛むだけでも、同じくリズム運動になりますのでおすすめです。
これは嚙みすぎても意味がありませんので、あくまでも20分程度にしてください。