梅毒って過去の病気じゃないの?#658

梅毒の流行が目立つ

先日、「梅毒」の患者さんが1万人を超えたというニュースがありました。

日本で梅毒の患者さんが1万人を超えたのは史上初のことです。

梅毒と聞くと、遠い昔の感染病の一つと思われがちですが、実は今でも存在しており、現代人でも感染するリスクは充分にあります。

今回はまた趣向を変えて、梅毒という感染病についてお伝えしていきたいと思います。

男性は幅広い年齢層に感染が

現状の感染の広がり方ですが、まず女性は20代前半の方に多い傾向があり、逆に男性は20代から50代と、幅広い方で感染が広がっていることが明らかになっています。

そして新宿区のデータでは、男性の4割が同性間との接触で感染しており、そのうち半数ほどは、2度目の感染、つまり再感染しているとされています。

梅毒は、以前は同性間での感染の方が多く、昔は半数以上が同性間での感染でしたが、現在は4割まで減ったということになります。

異性間で感染した方のうち、男性は4割の方が性的サービスを利用したことによる感染、女性は6割の方が性的サービスの仕事に従事していたによる感染、とされています。

普通の風俗店は、従業員の性病検査も徹底しているから大丈夫、と思われがちですが、やはりそうしたサービスである以上、性病の感染リスクは確実に存在すると言えます。

梅毒とは

梅毒という病気は実際に昔から、日本では江戸時代ごろ、欧米でも数百年前の中世の時代にはすでに確認されており、1943年に「ペニシリン」という抗菌薬が発見、量産されると同時に世界的に梅毒患者が激減し、現在に至ります。

梅毒は感染して時間が経過するごとに症状が変化していきます。

感染後、3週間から6週間ほどは潜伏期で、症状が特にない時期になります。

潜伏期を過ぎると、性器や肛門など感染した箇所に3ミリほどの、大きいものだと3センチほどのできものができます。

これは軽いニキビや湿疹のような、痛みもかゆみも無いもので、1か月もしたら自然に消えますが、消えても治ったわけではなく、一回隠れるように姿を消します。

できものが無くなってから3か月ほどで、手のひらや足の裏などに、赤い発疹ができます。

これも長くても半年ほどで無くなりますが、この状態はすでに体内に梅毒の菌が住み着いている表れです。

そのままさらに3年経過すると、全身に炎症が起き、進行していきます。

体の表面の皮膚はもちろん、筋肉や骨、臓器にも炎症が起き、腫瘍となって現れます。

梅毒にかかると鼻がもげる、という事がしばしば言われますが、鼻の骨に腫瘍が出来ることがあるので実際に起こり得ます。

さらに10年以上治療せずに放っておくと、血管や脳、脊髄などにも影響が出て、最終的に梅毒の菌によって命を落とす、ということになります。

現在は3か月ほど経過したときの、身に覚えのない赤い発疹でお医者さんにかかる方が多いため、梅毒で亡くなるという方はまずいません。

流行していると認識して、気を付けること

梅毒は感染症の一つで、分類で言うと5類になります。

現在はインフルエンザ等と同じ分類で、流行が激しくなっていると注意喚起されている状態にあります。

梅毒の予防としては、まず第一に「感染者が増えている」ことをしっかりと認識することです。

過去の病気だから関係ない、という風には思わず、感染が広がっていることをまず知っておいてください。

次に、梅毒は性感染症ですので、性交でうつることが主な感染経路ですが、口でも感染、発症するため、キスのような行為であってもうつる可能性があります。

感染してから1年未満の梅毒の患者さんと接触した場合、感染する確率は30%となっています。

これは比較的高く、いわば「感染リスクが高い感染症」と言えます。

そして当然といえば当然ですが、他人が梅毒に感染しているかどうかを見分けることはできません。

そもそも潜伏期も長く、症状らしい症状も無いですので、梅毒の予防としては不特定多数との性交渉を避ける、性的なお店やサービスをむやみに利用しないことが最大の予防になります。

コンドームはもちろん、感染リスクを下げるのには非常に役立ちますが、前述のように口でもうつる可能性があるため、100%の予防にはなりません。

ちなみに医療従事者の方は、患者さんの唾液や血液といった体液にむやみに触れないように注意を払いますが、それはこういった感染症を避けるためでもあります。

郵送での検査ができる

最後に、梅毒を見つけるために出来ることが、いわゆる「性病検査」です。

もし何か心当たりがあったり、身に覚えのない湿疹などがあるとき、梅毒かもと思っていきなり病院に行くのは、もしかしたら抵抗があるかもしれません。

その時は、自力で陽性か陰性かを調べられる検査キットを郵送で手に入れられます。

それで調べて、陽性であれば病院に行ってお薬をもらって治療してください。

今ではペニシリンを改良した梅毒用のお薬もあり、スムーズに完治できるので不安があれば是非活用してみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属