薬とお酒の関係!ノンアルコールなら良いの?#657

飲み会シーズンに増えてくる質問

今年ももうすぐ10月を終え、忘年会のシーズンを迎えます。もしこのままいけば、飲食店への時短要請などが一切無い中で、忘年会シーズンを迎えることになります。

感染対策等は引き続き、気を抜くことなく充分にしていただければと思います。

そんな中で、この時期に増えてくる質問が「お薬と一緒にお酒を飲んでも良いの?」っていう質問です。

正直に言えば、これは考えるまでも無く「ダメ」なことです。

お薬を処方する際、薬剤師にこのように質問して「大丈夫ですよ」と言う事は絶対にありません。

それはもし万が一何かあったときには、その薬剤師の責任になり、そしてお酒は何らかの形で、お薬に影響するためです。

今回はこの場を通して、お薬とお酒の関係について詳しくお伝えしていきたいと思います。

ノンアルコールでも一緒に飲むことはできない

お酒もお薬も、肝臓の働きによって分解されます。

お酒に溶けやすい薬であれば、効く時間が早くなってしまい、本来の効果よりも高い効果が出る恐れがあります。

効果が高すぎることで逆に悪い影響が出たり、副作用が出やすくなるなど、危険な状態になります。

あるいは逆にお酒が入ることで吸収されにくくなり、飲んだ意味が無くなることもあります。

ほかにも様々な面で、お酒とお薬は相乗的に作用してしまうため、一緒に飲むことはできないのです。

そしてこれは、ノンアルコールの飲料でも同様です。

実は、ノンアルコールの飲料でも、アルコールがわずかながら入っていることがあります。

どう言う事かというと、法律上ではアルコールの量が全体の1%以下であれば、ノンアルコール扱いになるためです。

わずかにでも体内にアルコールが入れば、肝臓はその分働く必要があるため、お薬に影響が出ないとは言い切れません。

ソフトドリンクでも影響が出る

お酒ではない、清涼飲料水やウーロン茶など、ソフトドリンクとの飲み合わせですが、これも推奨できません。

例えばコーラのような炭酸飲料は、文字通り酸が入っているため酸性の飲料となり、お薬がアルカリ性であれば中和されてしまって薬の効果が無くなる恐れがあります。

例えば昔からある胃薬の「太田胃散」はアルカリ性で、コーラと一緒に飲むとブクブクと泡が出て薬の効果が無くなります。

他には、グレープフルーツジュースなど一部の柑橘系のジュースは、一部のお薬の効き方が変わりやすい飲み物として注意が必要です。

特にグレープフルーツジュースはお薬と一緒に飲むのはもとより、特定のお薬を定期的に服用している場合は、服用している期間中、飲むのを控えてください。

グレープフルーツジュースは一度飲むと4日間ほどは、体内への影響が出続けるためです。

当然ですが、これはジュースに限らず、グレープフルーツのカクテル、チューハイのようなお酒でも同様ですので、控えてください。

その他だと、緑茶系のお茶にはカフェインが、そして牛乳にはカルシウムが含まれており、それぞれ前述のように一部のお薬に影響が出ることがあります。

そのため、お薬を飲むときには、お水かお湯と共に飲む、という事が推奨されているのです。

飲む時間を考慮する

本題に戻りますが、まずは飲む時間をずらすことで、対策できる場合があります。

例えば飲み会があるという時、お酒を飲む前にお薬を飲む時間を作る、反対にお薬を飲んだ後にお酒を飲む時間を作る、という風に考えます。

薬によっては、お酒を飲んだ後3、4時間時間を置けば、効果に影響がないというものもあります。

また、晩酌として基本的に毎晩、定期的にお酒を飲むという方は、お酒と同じ時間帯に飲む必要があるお薬を、違う時間帯に飲めるお薬に変えてもらう、という手があります。

夕方から夜に飲むと定められているお薬がある場合は、同じ効果で朝昼に飲めるお薬に変えるとか、中には1日に2回飲む必要があるところを、1日1回で済むお薬に変えることができるケースもあります。

お薬や現在の病状、体調によっても変わってくるため一概には言えませんが、いわば「融通が利く」ことは充分あるため、気になることがあったらお医者さんや薬剤師に相談してみてください。

特定の飲み物でお薬を飲みたいときも一度相談を

薬剤師がお薬を渡す際は、基本的にはどんなタイプのお薬であっても、「お水かぬるま湯で飲んで、それ以外では飲まないように」という説明をします。

もしどうしても、お茶じゃないと飲めないとか、これで飲みたいという希望がある場合でも、種類などによっては問題ない場合があるため、是非気軽に相談していただければと思います。

個人的には、そういう相談も結構患者さんごとに答えるようにしていますので、遠慮なくご相談ください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属