レプリコンワクチンって何?危険なの?#832

新型コロナ用の新たなワクチンが登場

先日、新型コロナ用の新たなワクチンが採用され、10月にも接種が開始されるというニュースが入りました。

レプリコンワクチンと言い、欧米では既に話題になっているもので、新型コロナ関連のニュースをいち早く追いかけている人は、既にご存じかもしれません。

レプリコンワクチンについて、日本看護倫理学会というところが、緊急声明を発表しました。

今回はこのニュースについて、最新情報をまとめて行きたいと思います。

mRNAワクチンの進化版

これまで、2021年や2022年ごろから接種が始まった、新型コロナ用のワクチンは、メッセンジャーRNAワクチンと言い、mRNAワクチンという表記で、voicyでも折に触れてご紹介していました。

簡単に説明すると、ウイルスのタンパク質を作る設計図が入っていて、それを体内に注射することで、免疫細胞がウイルスを正確に見つけやすくなり、ウイルスが入ってきた際にはすぐに対処できるようになる、という効果があります。

ウイルスのタンパク質さえ分かれば、変異した場合でもすぐにワクチンを開発出来るため、今後も何らかの新型のウイルスが出た場合には、より素早い対処が可能になる、というメリットがあります。

これまでのワクチンの製作には数年単位の時間が必要でしたが、mRNAワクチンの実用化により、大幅に短縮できるようになったのも、メリットの一つです。

今回話題になったレプリコンワクチンは、そのmRNAワクチンの進化版のようなもので、仕組みとしてはあまり変わりません。

最大の違いは、注射後に体内で増えるという点です。

mRNAワクチンは、注射後に体内で分解されるため、長期間影響が出ることは無く、言い換えれば打った際に効果が長期間持つことは無く、2回打っても数ヵ月で効果が消えるというものでした。

ですが、レプリコンワクチンは、分解がされず、逆に体内で増えていくという特徴があります。

体内で増えるということは、従来のmRNAワクチンの10〜100分の1の量で、従来のmRNAワクチンと同程度の効果が得られるのです。

新型コロナ用のワクチンは、輸送のコストや人員が一つの大きな問題となりましたが、一人分の必要量が大幅に減ることで、極めて接種がしやすく、より多くの人に届けることが出来るようになる、というのが最大のメリットです。

この仕組みは今後がんの治療から精神医療まで、医療の幅広い分野で応用が期待されている技術になります。

レプリコンワクチンの大きな問題点

このレプリコンワクチンについて、日本看護倫理協会という団体が、大きな懸念があると緊急声明を発表ました。

これは厳密には医療従事者の団体ではなく、看護倫理に関する研究を行う学者で構成されている団体で、そこが発表したのが、まず開発を行ったアメリカでも認可がされていない状態で、日本で実用化される見通しだという点、そしてレプリコンワクチン自体が、ウイルスにように他人に移って行くという点についてです。

厳密に言うと説明が難しいので省略しますが、ワクチンの性質が他人に移る可能性があり、それを人為的に接種するワクチンで起こるのが、倫理的に大きな問題がある、と指摘したということです。

また、研究途中ですが、人間の体内に残る以上は、人間の依存情報に影響を与える可能性があるという点も懸念の一つとしています。

総じて、レプリコンワクチンについて、現場の医療従事者も含む一般の方について充分な周知も無く、さらには諸外国での認可もままならずに、安全性も不透明な状況で、来月10月から一般接種開始というのは非常に不安がある、というのがこの声明です。

不明な部分が多いレプリコンワクチン

以上を踏まえて、個人的な意見で言うと、正直に申し上げて、まだ情報が少ないため判断は出来ない状態です。

確かに、看護倫理協会のこの発表にもあるように、不明な点も非常に多い上、他国でも認可されておらず、実際のデータが全く集まっていないため、そもそもの判断材料が極めて乏しいのも一つです。

ただ、他国で認可が無いからと言って安全ではない、ということは無く、例えばゾコーバは日本でしか認可がされておらず、日本でしか使用されていないお薬になります。

とはいえ、他国で認可が無く、実用化されていないのはやはり不安であり、しかもその理由も不明なのが現状ですので、懸念となるのは当然と言えます。

もう少し踏み込んで、自分で調べた範囲で言うと、治験で打った際の有効性は、これまで流通しているオミクロン株対応ワクチンと同程度で、痛みや発熱、だるさといった副反応は従来のワクチンよりも少ないとされています。

次に、前述の人に感染させる可能性についてですが、これも理論上は実際に、飛沫感染の可能性はあり、少ない量でも体内に入ることで増える可能性があるのも確かですが、製薬会社の説明としては、実際にはほぼ起こり得ないとしています。

接種は自己判断で

従来のワクチンもですが、最終的には自己判断で決めるのが一番です。

ただ、現状を踏まえて個人的に考えると、現状のレプリコンワクチンは打つ方がリスクが多いと思います。

データが集まれば安全かどうかの判断もしやすくなる上、もし危険だとなれば政府や厚労省でも見過ごせない問題になりますので、日本での流通は見送りになることももちろんあり得ると思います。

またコロナ自体の流行を踏まえても、今の感染状況と命のリスクを考えると、ワクチン等を使わずとも手指消毒や手洗い、換気、マスクといった一般的な感染対策を引き続き行えば問題無いレベルかと思います。

予防のために今すぐレプリコンワクチンを打つより、そうした感染対策を続けていくほうが安全、というのが現状と言えます。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属