吉田 聡 お腹の不調の患者さんが増加
最近、「お腹の調子が悪い」といって薬局に駆け込む方が増えてきました。
実はこれは偶然ではなく、梅雨明けから夏にかけての時期特有の傾向なのです。
さらに言うと、夏だけではなく、季節の変わり目にお腹を壊しやすい人が増えると感じることも多いです。
これはやはり、気温や湿度の急激な変化、暑さと涼しさの繰り返しなどが影響して、自律神経が乱れやすくなるためで、自律神経は胃腸の働きにも関係しているため、気温や湿度の変化から胃や腸の不調が出やすくなるのです。
また夏の時期は冷房の使用も始まりますので、体が冷えすぎることで胃腸の動きが鈍くなることも一因になります。
今回は、今から気を付けていきたい、胃腸に関するお話についてです。
食べ物・飲み物・エアコンに注意
自律神経の不調の原因は多岐にわたりますが、夏場と胃腸ということに関連するものでは、前述のように体が冷えすぎることで、胃腸の働きが大幅に悪くなります。
つまり、強い冷房はもちろんですが、冷たい飲み物やアイスなどを摂りすぎるのも、腸を冷やす原因になります。
暑い日にはどうしても冷たいものが欲しくなりますが、摂りすぎることで胃腸が冷えて動きが鈍くなり、消化吸収がうまくいかなくなることがあります。
また夏は同時に、暑さによって食欲が落ち、食事量が減ると、栄養不足になり腸の働きが低下します。
さらに腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど、精神状態と深く関わっており、季節の変わり目で気分が不安定になりやすく、ストレスが腸に現れるケースも増えます。
不調時には「腸を休ませる」ことを優先に
お腹の不調を感じたときには、まずは腸を休ませることが最も重要です。
食事は消化に良いものを選んで、お粥やうどん、湯豆腐など、温かくて胃腸に優しいものを摂るようにしてください。
飲み物も冷たい物ではなく、常温のお茶やお水などを、ゆっくり摂るのが理想です。
もし下痢がひどい場合は、水分補給に集中して、無理に固形物を摂らないようにしてください。
また、食べない時間を意識的に作る「プチ断食」も腸の回復に効果があります。
前述のようにストレスによって胃腸が悪くなっていることがあるため、自分がストレスを感じているかどうかも振り返ってみて、気分転換に音楽を聴いたり、好きな香りを嗅ぐ、お風呂に入るなど、手軽にできるリラックス法を複数用意しておくことも、予防と改善に役立ちますので、是非意識してみてください。
病院を受診するタイミングと予防法
最後に、病院を受診するタイミング、サインについてですが、お腹の不調に加えて発熱がある場合や、血便、激しい腹痛、嘔吐などがあるときは、すぐに医療機関を受診してください。
逆にお腹の痛み以外の症状が無い場合は、市販薬を使って安静にして、様子を見てみるのがベストです。
この時期は食中毒などのリスクも高まるため、食あたりの可能性もありますので注意が必要です。
予防についてはやはり、日常生活の中で腸への負担を減らすことが一番になります。
冷たいものを控えるとか、エアコンの風を直接浴びない、設定温度を26度以上にするなどの些細な心がけでも大きな予防につながります。
体調に応じて腹巻きや薄手のカーディガンを活用して、体を冷やさない工夫もおすすめです。
そして、軽いウォーキングやストレッチなどの運動で腸を動かすとか、入浴によってリラックスと発汗を促すことも、自律神経にも良い影響が出るためとても有効です。
特に夏場は、熱中症の回などでも触れたように、暑熱順化と言い、暑さに慣れるように準備しておくという意味でも、湯船に浸かるのは効果的です。
食べ物では、腸活という言葉もあるように、ヨーグルトや発酵食品を積極的に取り入れることももちろんおすすめです。
ただ、少し余談になりますが「生きたまま腸に届く」というようなキャッチコピーがありますが、平たく言えば生きたまま腸に届いたからといって、しっかりと働くかは別の問題であり、死んでいる菌がしっかりと届くほうが栄養になり、むしろそっちの方が重要という説もあります。
ですので、キャッチコピーにはあまり期待をせずに、普段から長期的に、食物繊維や善玉菌のエサとなるオリゴ糖やビフィズス菌などを取り入れていくと、腸内環境の改善につながっていきますので、腸内環境を整えたいというときは、習慣づけて摂って行くと良いかと思います。