健康診断って意味あるの?人間ドックとの違いは?#681

健康診断の意味

最近、患者さんと「健康診断」の話になることが多々あり、大丈夫だった、良くなってた、ひっかかった、等々お話しをしていました。

今回は毎年何気なく行っている健康診断の意味、そして併せて人間ドックについて、簡単にですがまとめていきたいと思います。

健康診断は「会社に義務付けられている」

何らかの企業で社員として働いている場合、1年に1回どこかのタイミングで必ず健康診断を受けると思います。

これは会社の義務として、労働安全衛生法という法律で定められているためです。

この法律によって、その会社の従業員、労働者は年1回定期健康診断を受けられるようになっています。

大きな会社であれば何百人、何千人という数の社員に対して受けさせる必要があり、その健康診断の費用は全て事業者の負担になるため、最低限の一般的な検査になっています。

内容は年齢に応じて変わり、20代から30代の比較的若い方は身長体重と血液検査、尿検査が主ですが、40代を超えると「特定健康診査」という制度が適用され、いわゆるメタボ検診の対象となります。

腹囲を測ったり、バリウムを飲んで行うレントゲンではなく胃カメラが追加されることもあります。

ちなみにバリウムも胃カメラも、同じく胃の中の異物を見つける検査になりますが、どちらかと言うと胃カメラの方がおすすめです。

バリウムで影が見つかった後、それが本当に危険なものなのかは再度胃カメラを使って見るため、最初から胃カメラを使って見る方が安価で素早いためです。

その他詳しくは以前571回で詳しくご紹介しておりますので、参考にしてみてください。

定期健診は見逃しも多い

一般的な健康診断は、いわゆる事務的に行うものですので、「見逃し」が出ることも少なくありません。

例えば、毎年レントゲンで肺や胃を見ていても、突然かなり進行していた肺がんや胃がんが見つかったというケースや、毎年心電図をとっても突然心臓の病気を抱えていることが分かった、という事が珍しくないのです。

特にがんは、突然大きくなることは無く、徐々に大きくなるため毎年検査をしていればわかるものですが、それでも突然見つかることが多々あります。

この理由は、一つは単純に見つけづらい検査をしているという点です。

実は、肺がんはレントゲンだけで見つけるのはかなり難しい上に、肺がんにも種類があり、レントゲンに映るものと映らないものがあるためです。

心電図も単純に、調子が悪い時に受ければ不調に気付きますが、正常な時に検査をすれば結局正常なままで、異常があることに気付くことはできません。

そうしたことを防ぐために、もっと見つけやすく精度の高い検査をしてほしいと思いますが、そうした検査はやはりコストが高く、会社にとってはかなりの負担になります。

そしてこれは見方を変えれば、こうした最低限の検査で異常が見つかって、要精密検査とか要受診となった場合は、かなりの確率で異常が起きている表れですので、その場合には出来るだけすぐに、確実に病院に相談してみてください。

血液検査でも、一般的な健康診断の場合では広い範囲で見るため、少し気になることがあっても誤差の程度だと思って気にしない方も多いですが、血液検査は毎年の積み重ねで、過去数年の推移がわかることが多いです。

そうしたこと踏まえて、年々徐々に数字が悪くなっているなどの場合で再検査となれば、やはり再検査を受けることが望ましいです。

また要受診となった場合はかなり深刻な状態と言えるので、早めに病院に行ってください。

様々な部分を検査できる人間ドック

一方の人間ドックですが、これは健康診断とは違い個人の意思で受けられる検査の事で、全額自費で行います。

その分、実施している病院ごとで様々な種類があり、かかる費用もまちまちです。

ただ、いずれも一般的な健康診断よりは詳しく検査できるのが特徴で、例えば血液検査一つでも、男性の場合は前立腺がんの腫瘍マーカーを見るなどが出来ます。

画像であればレントゲンではなくCTやMRIを活用して、多角的により詳しい検査ができます。

また人間ドックの種類も、心臓や肺、胃と言った部分に特化したものから、認知機能なども含めた脳に特化したもの、さらには女性特有の病を中心に調べるものなど、医療機関ごとで様々なものがあります。

その分、検査費用はかかりますが、信頼度や安心感は極めて高いですので、もし興味があれば一度受けてみるのも良いと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属