季節の変わり目のメンタル面の不調
3月も終わりを迎え、4月から心機一転新生活という方も多いと思います。
実は薬局では、春先や秋口ごろに、患者さんのお薬が変わることが増えます。季節の変わり目という時期は、気圧の変動が大きいことなどから自律神経が乱れやすくなり、気分の落ち込みが強く出る人が増える傾向にあります。
これは当然、元々うつの症状がある方だけではなく、今まで問題がなかった方でも、突然気分が沈むことがある、ということです。
そしてうつのような症状が現れたとき、それが一時的なものなのか、それとも病気として治療が必要なのかを判断するのは極めて難しいです。
もし、身近な人や職場の同僚が普段と違って元気がないと感じたら、適切な声のかけ方を知っておくことが大切です。
今回はこのメンタル面での不調、うつ症状について今一度まとめて行きたいと思います。
文章で伝えるのが難しい部分も多いですが、もしよかったら意識してみてください。
心の風邪と言われる「うつ病」
まず始めに、うつ病と、うつ状態、という違いがあります。
うつ状態とは、一時的に気分が落ち込んだ状態で、気分転換などによって自力で対処できる範囲のものです。
一方のうつ病は、気分の落ち込みが長期間続き、自力での気分転換ができなくなり、日常生活に支障をきたしてしまう状態で、一つの病になります。
うつ病の直接的な原因は、一説には脳内の神経のバランスが何らかの影響で崩れることで起きている、とされています。
具体的な症状としては、やる気が出ない、楽しいと感じない、常に疲れているといった不調だけではなく、集中力が下がったり、食欲不振や不眠などの症状も起きます。
一般的に、気の持ちようでなんとかなる、と言われるのは前述のうつ状態で、なんとなく気分が落ち込むという程度の範囲に限ることです。
うつ状態が進行してしまってうつ病となると、カウンセリングやうつ病のお薬の服用のような、医療的なサポートが不可欠となりますので注意が必要です。
ちなみに、うつ病と似た症状を持つ病気としては、適応障害、甲状腺機能低下症、双極性障害などがあり、さらに認知症の初期症状もうつの症状と似ています。
これらはそれぞれ別のメカニズムによって起きている病で、症状が出ている時間の長さや症状の細かな違いなどを見ないと、見分けがつかないことも多いです。
また、いずれの病も、それぞれで治療法が大きく異なりますので注意してください。
うつ病の方に言ってはいけない言葉
うつ病の方への接し方で大切なこととして有名なのが、頑張って、という言葉は言ってはいけない、と聞いたことがあると思います。
うつ病にかかっている方は、精神的に限界まで追い詰められているような、いっぱいいっぱいの状態にあります。
ですので、たとえ気軽な励ましのつもりでも、頑張ってとか元気出して、という言葉は非常に刺激が強く、不向きな言葉になるのです。
他には例えば、前は元気だったのに、という言葉は、周りの人が過去の自分と今の自分とを比較される感じで、過去のことを持ち出される感じがしてより落ち込む、ということもあります。
どうにか声掛けをして回復して欲しい気持ちも分かりますが、それだとさらに追い詰めてしまうことにつながります。
確実なのは、励ますことよりも、出来るだけ気持ちに寄り添って見守ることです。
うつ病の方への適切なサポート
うつ病にある方への接し方として最も確実なのは、無理に励ましたり何でも手伝ったりせずに、出来るだけそっと見守ることです。そこで、もし何か話をしたい様子があれば、共感しながら話を聞いてあげることが大切になります。
共感しながらと言うのがポイントで、あるお医者さんが、話を聞いて欲しいという患者さんの要望に応えて、丸1日付きっ切りで8時間ほど、1日の全ての診療時間を使って聞いてみたということがあったそうです。
その最後に患者さんが、全然先生話聞いてくれないね、と先生に言った、というエピソードを聞いたことがあります。
先生は単に、患者さんの言いたい話をただ聞いていたというだけで、共感も返事もなかったため、患者さんの気持ちは変化しなかったということです。
ですので例えば、頑張って、ではなく、頑張ったね、という声掛けは一つの共感になり、負担が解消されていくように、気持ちが軽くなります。
また例えば、本人としては不本意で、やりたくないと思いながらもそうするしかなかった、というような事柄があった場合で、それを否定も肯定もせずにじっと聞くのではなく、それはそうするしかなかったよね、という風な返事をするのも大きな共感になります。
こうした会話ができると、気持ちに良い刺激が生まれ、軽くなったり落ち着いたりする可能性があります。
ただし、うつ病の症状が重い場合などは、会話もままならないこともあり、医療的なサポートが必要になります。
その際には、一緒に病院に行ってみるように提案するのも一つの手です。最近ではオンライン診療もあり、外出をせずに医師の診察を受けることができる病院もあるため、一昔前よりはハードルが低くなっています。
また、うつ病の方をサポートする側も一人で抱え込まずに、できるだけ家族などの身近な人や、公的な支援機関などを活用することが大切です。
重く受け止めすぎると、サポートする側の心身にも負担がかかりますので、無理のない範囲で支援していくことが、本人にとっても周囲にとっても安全です。