インフルエンザの薬は何が良いの?【リスナーからの質問】#688

インフルエンザ用のお薬の種類

先日、インフルエンザと診断された方から「イナビルが処方された」というコメントをいただきました。

4種類ぐらいのインフルエンザ用のお薬が記載されたリストを提示され、タミフルなどもあった中でイナビルが処方された、というようです。

現在、インフルエンザ用のお薬はタミフル、ゾフルーザ、リレンザ、イナビル、ラピアクタの5つが主流となっていますが、実はそれぞれ違いがあります。

今回はインフルエンザそのものというよりも、これらのインフルエンザ用のお薬を中心にお話ししていきたいと思います。

インフルエンザとは

初めに簡単に、インフルエンザについてのおさらいですが、典型的なインフルエンザの症状としては、38℃以上の高熱が出て主に関節などの節々が痛んだり、急な寒気が起きます。

症状の進行はゆっくりではなく、急激に出て来ることが多く、朝はすこぶる健康でも帰宅して夜になったら熱が急激に上がるとか、体のだるさが一気に重くなる、と言うように出てきます。

また例えば、寝る前は少し痰が絡む程度だったのが、朝起きたら激痛でご飯を食べるのも難しくなる、といったこともあります。

反対に通常の典型的な風邪は、37℃台程度の微熱が長く続いたり、鼻水や咳の症状が多く、体や関節の痛みは軽いことが多いです。

ただし、どちらにしても個人差が大きいという特徴もあり、体質によって出る症状が大幅に変わってきます。

新型コロナでも無症状感染という状態があるように、インフルエンザでも同じく感染しているにもかかわらず症状が出ない、という事があります。

反対に、熱が急激に上がったからと言って必ずインフルエンザに感染したということも言い切れないため、普通の風邪とインフルエンザとを見分けるのは意外と難しいです。

インフルエンザについてはかなり前になりますが、283回と284回にわたって詳しくご紹介しておりますので、是非参考にしていただければと思います。

症状が出てから48時間以内に使う必要が

今回の本題に入りますが、インフルエンザのお薬は全て、症状が出てから48時間以内に飲まないとあまり意味が無いという特徴があります。

これは現在流通しているインフルエンザ用のお薬は全て、体内でウイルスがこれ以上増えないようにする、というお薬なためです。

インフルエンザウイルスは、体内で症状がでてから48時間から72時間程が、最も体内で量が多い状態になり、そこから体の免疫によって抗体ができ、徐々に減っていき治っていくという流れになります。

つまり、インフルエンザのお薬は、感染してから早めに使うことで、体内でウイルスが増えない状態になり、症状が重くなる前に早く治る、という仕組みなのです。

言い換えれば、72時間以上経ってから薬を飲んでも、体内にはすでに抗体ができて免疫によって既に戦っているため、その時にお薬を飲んでもほとんど意味が無くなるのです。

飲み薬以外のお薬も

種類としては飲み薬が2つ、吸入式が二つ、点滴が一つとなっています。

飲み薬は有名な、タミフルとゾフルーザが該当します。

違いは飲み方で、タミフルは1日に朝晩の2回を5日分飲み切ります。

ちなみに一時期、タミフルを飲んだお子さんが異常行動をすると話題になりますが、それはインフルエンザの初期症状の一つで、タミフルは関係ありません。

インフルエンザによって、うつろな状態になったり、いつもと様子が違う感じになることはあるので、もしお子さんが感染したという場合には注意してください。

もう一つのゾフルーザは、1回4錠ほどを一度飲んだら終わりというお薬で、錠剤のサイズもそこまで大きくないため、タミフルよりも手軽という特徴があります。

ただし、コストがかなり高く、値段としてはタミフルの5倍で、耐性ウィルスを作る可能性があることで、あまり推奨していないお医者さんもいます。

次の吸入のお薬がリレンザと、今回のきっかけとなったイナビルというお薬です。

どちらも普通の吸入式のお薬で、特別タミフルやゾフルーザより良い効果があるわけではなく、かといって逆に劣っているところがあるお薬でもありません。

リレンザは吸入のお薬としては楽な方で、軽い深呼吸でしっかりと入ってくるため、使いやすい方と言えますが、操作は難しい部分があり、手間になる部分も少しあります。

イナビルはゾフルーザに近いお薬で、一度に2回吸い込んだら完了というお薬です。

ただ、リレンザよりもしっかりと深く吸い込まなければならず、吸い方にコツがいるため小さいお子さんには不向きです。

コストもタミフルの3倍ほどな上に、効果がそれほどない可能性があるというデータも出ているため、一概に良いとは言えません。

最後に点滴式のお薬となるのがラピアクタです。

点滴1回で終わるというお薬ですが、病院内で行われるため使える対象や状況が限定されており、実際に使用するのも吸入が難しい方や重症している方、高齢者などが主です。

タミフルがコスパ、効果ともに優れている

これらの中でどれが一番良いかと言われると、実はかなり難しいところです。

前項で述べたように、いずれも症状が出てから素早く飲まなければ効果が薄くなって行くため、いずれも素早い診断と処方が必要になります。

吸入も少し難しくコツが必要で、ゾフルーザは1回で飲める分簡単ですがコストがかかる、という事を考えると、やはりタミフルで5日間お薬を飲んで安静にして回復するというのがコスト的にも優れており、安全かと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属