枇杷(びわ)の種の健康効果?
先日、農水省が「枇杷(びわ)の種」についての注意喚起を行いました。
これは枇杷の種を使った粉末のことで、これにがんへの効果があるなどと宣伝されていますが、実は効果はなく、特に摂る意味はない栄養素になります。
それどころか、摂り過ぎると危険で、個体差によって毒物になり得るものでもあります。
今回はこのお話しをもとに、枇杷について取り上げていきたいと思います。
江戸時代ごろに中国から伝わる
枇杷は中国が原産の果物で、日本に最初に伝わったのは江戸時代ごろとされています。
ひらがなにすると「びわ」となりますが、これは葉っぱの部分が楽器の琵琶に似ているから来たとされています。
中国では古来より、枇杷の木や葉っぱに薬効があると考えられ、大薬王樹と呼ばれることもあり、中国の古い言い伝えでは病人が枇杷の葉を求め、木に向かって列を作ったという伝説もあるほどです。
枇杷の葉の薬効はあながち間違いではなく、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)という漢方には現在でも成分の一つとして枇杷の葉が使用されており、咳を鎮めたり、痰を取り除くといった効果が得られます。
日本では江戸時代ごろに枇杷が伝わった際に、枇杷の葉といくつかの生薬を混ぜ、枇杷葉湯(びわようとう)という飲み物を主に夏バテ対策として、暑気払いに飲んでいたことが明らかになっています。
現代では枇杷は果物の一つとして実の方が有名ですが、実は古来では葉や根の方が重宝されていたのです。
実も栄養豊富
現在販売されている枇杷の実となる部分ですが、もちろん実も栄養豊富です。
ニンジンなどに含まれる、ベータカロテンが豊富で、体の中でビタミンAに変わり、鼻や喉の粘膜、皮膚を整える働きがあるため、自然とウイルスに強くなり、間接的にですが免疫力の向上につながります。
また以前取り上げたバナナのようにカリウムと食物繊維も多く、むくみ対策と便秘対策、整腸作用が一挙に得られる果物として非常に便利です。
その、実となる部分の中心に「種」がありますが、今回話題となったのが、この種を粉末にした健康食品です。
枇杷の種に含まれる「ビタミン17」
枇杷の種の健康食品は、今回のきっかけとなった商品以外にもいくつか販売されており、いずれのものでも謳われているのが「ビタミン17」という成分です。
これは正式にはアミグダリンという成分のことを指します。
アミグダリンは青梅や桃、杏の種にも含まれている成分で、アミグダリンそのものは漢方薬でも用いられることはありますが、効果としては咳を鎮めたり痰を出しやすくするといったもので、がんに効く効果はありません。
とはいえビタミンの一種として、体に良いように思われそうですが、実はビタミンの一種になっていたのは1980年代以前ぐらいのころのことで、現在では体に必須なものではないという事が分かり、分類ではビタミンから外されています。
またアミグダリンは摂り過ぎるとお腹が痛くなったり吐き気が出るどころか、最悪亡くなったというケースも報告されています。
これは、前述のように、毒物が入っている可能性があるためです。
種をそのまま粉砕して売っている製品に要注意
販売されているものの中には、アミグダリンの含有量は全て基準値以下で安全と謳われているものもありますが、反対に枇杷の種をそのまま粉砕して、加工していないという宣伝文句で販売しているものもあります。
つまり、アミグダリンの量を検査していないというものです。
枇杷の種は成熟していないものであるほどアミグダリンの量が多いという特徴があります。
昔から、青梅をそのまま食べるとお腹を壊す、と言われていますが、それもこのアミグダリンの量が多いことから現れる症状です。
枇杷も同じで、熟す前の種はアミグダリンの量が多いため、きちんと安全確認が必要ですが、そうではないものが出回っていることが確認されたため、今回の勧告、注意喚起に至ったという事です。
自然のものをそのまま加工してある、と言われると安心できそうに見えますが、必ずしもそうではなく危険なものもたくさんありますので、安易に信頼せずに、注意してください。