お風呂での事故や溺死ってよくあるの?#856

お風呂場で起こる事故

先日、数多くの映画やドラマなどで活躍されていたタレントの中山美穂さんが、54歳という若さで亡くなりました。

死因はお風呂場内で、入浴中の不慮の事故とされており、多くの人に驚きと悲しみを与えました。

入浴中の事故というと、高齢者や小さいお子さんに多いイメージがあるかもしれませんが、50代の健康な方にも起こり得ることです。

今回はこの訃報から、お風呂場で起こる事故、お風呂で気を付けたいことについて詳しくまとめて行きたいと思います。

ヒートショックに要注意

実は、冬場のお風呂は、事故が増える傾向にあります。その大きな原因が、ヒートショックです。

ヒートショックとは、寒い脱衣所から暖かい浴室へ移動した際、急激な温度変化によって血圧が大きく変動するという現象のことです。

寒い場所に行くことで、瞬間的に血管が収縮して血圧が上昇しますが、温かい場所に行くと逆に一気に血管が拡張して、血圧が急激に低下します。

こうして血圧が急激に変動することで、心臓や血管に負担がかかり、急激な心筋梗塞や脳卒中を引き起こす原因になるのです。

特に高齢者は持病を抱えていることが多く、体内の水分量も減少していることから、ヒートショックのリスクが高まります。

日本では現在でも、年間でおよそ約1万人の方がが入浴中に亡くなっており、ヒートショックが大きな割合を占めているとされています。

ヒートショック以外のお風呂場の事故と、若年層の方が気を付けたいこと

そして当然、ヒートショック以外でも様々な事故が発生します。

例えば、滑って転倒して頭部を打つことはもちろん、ヒートショック以外でも、入浴中に何らかの原因で意識を失い、そのまま溺れて命を落とすという事故もあります。

特に溺死では、年間でおよそ5000人の方が浴槽内で溺死しているとされています。

このような事故は高齢者に多いと考えがちですが、若い世代でも発生する可能性があります。

特に飲酒後の入浴は極めて危険で、アルコールは血管を拡張させる効果があり、さらに温かいお湯の中に入ることで、血圧が大きく低下するため、意識を失いやすくなり、溺死のリスクが高まります。

そのうえ、睡眠不足や疲労が溜まっていたり、水分が少ないと、当然リスクが上がるため、若い方が亡くなるケースは複合的な原因であることが多いです。

温度差を減らしてヒートショック予防を

予防についてですが、まずヒートショックを予防については、脱衣所と浴室の温度差を減らすことが最善です。

可能であれば脱衣所を暖房器具で温めて、室内の温度差を一定に保つようにしてください。

お風呂のお湯の温度については、40度以下が推奨されています。熱いお風呂は人気があり、好きな方も多いと思いますが、実はヒートショックのリスクを考えると、少しぬるめのお湯に、ゆっくり長く入る方が安全です。

そして当然、飲酒後の入浴は避けてください。もしアルコールが入っている状態で入浴する場合は、シャワーだけにとどめることが望ましいです。

高齢者については、声掛けがすぐできるなど、出来るだけ家族が見守れる環境を作るのが最も安全です。

万が一の際には、すぐに対応できるようにするのがベストです。

お子さんの場合も、出来るだけ保護者が目を離さないようにして、可能であれば、滑り止めのマットや手すりを設置すると、予防につながります。

安全にお風呂に浸かるために

お風呂場での事故を未然に防ぐためには、普段から日常的に注意していくことに尽きます。

例えば、入浴前に水分補給をしっかり行い、脱水を防ぐことも予防になります。

入浴中は汗をかきますが、湯船に浸かっていることから体感しにくく、知らず知らずのうちに水分不足の状態になっていることがあり、水分が不足するということは、血流が滞りやすくなるため、ヒートショックのリスクが高まります。

また例えば、入浴中に、調子が悪いと思ったときはすぐにお風呂から出て休むことも重要です。

大丈夫だろうと思って何気なく我慢してしまうと、突然湯船の中で意識を失い、溺れるという可能性もあるため、おかしいと感じたらすぐに上がるようにしてください。

まずは、入浴前にはコップ1杯ほどのお水を飲んで、お酒を飲んだ時の入浴は控えることを意識してみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

相談されたい薬剤師
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属