起立性調節障害ってどう治療するの?【リスナーからの質問】#670

自律神経の不調

先日コメントにて、「起立性調節障害と自律神経について教えてください」と頂きました。

なかなか馴染みがなく、聞いたことが無い方も多いと思いますが、これは簡単に言えば「自律神経の不調」ということです。

自律神経とは心臓の働きや血圧を調整など、自分の意志とは関係のない、別の部分で働く神経で、この神経に不調をきたすという病が「起立性調節障害」です。

例えば、横になっているところから立ち上がろうとしたとき、血圧が急激に下がって立ちくらみを起こすとか、動悸がするといったことが起きます。

重いものだと、立ちくらみによって意識を失って倒れることもあります。

また腹痛が起きたり、疲れやすくなるとか、乗り物酔いしやすくなるといった症状としても現れます。

この起立性調節障害は、小学校高学年から中学生の第二次性徴期ぐらいまでのお子さんに多く起きます。

症状としては単なる自律神経の乱れと言えますが、これによって学校に行くのが嫌になるとか、周りの目を気にしすぎる、といったことにも繋がるため、実はかなり辛く、大変な病と言えます。

今回はこの起立性調節障害について、詳しくお伝えしていきたいと思います。

病に見えず、治療が難しい

起立性調節障害は前述のように自律神経の不調ですので、自分の意志でどうにかすることはできず、さらに具体的な症状も乏しいため、傍から見ても病には見えにくいという特徴があります。

起立性調節障害には4つの種類があり、立った直後に急激に血圧が下がるタイプ、立ち上がって少し経つと急激に血圧が下がって失神したり、逆に立ち上がって血圧はそのままでも心拍数が突然急増するタイプ、立ち上がると同時に少しずつ血圧が下がっていくタイプの4つです。

症状が軽いもの重度なものまでありますが、大きな分類としてはこの4つに分けられます。

この治療ですが、お薬もありますが自律神経の不調が大きな原因ですので、生活習慣の改善が大切になってきます。

まず規則正しい生活としっかりとした睡眠は、治療においては欠かせません。

お薬としては、血圧をあげるお薬を主に使います。

起立性調節障害は血圧が下がることで立ちくらみが起きたり心拍数が上がるため、低血圧を防ぐことで症状を抑えて行きます。

漢方薬についてですが、漢方の考え方は体の余分な水分によって血圧が下がる、という考えですので、体内の余分な水分を出すお薬を使う事があります。

具体的には「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」が挙げられ、起立性調節障害で漢方が処方される場合にはよく出て来きます。

場合によっては水分によるものではないこともあり、その場合は「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」を使う事もあります。

体の血液量を増やして予防を

起立性調節障害の予防は、やはり生活リズムを整えるとか睡眠をしっかりととる、運動をする、そしてストレスを溜め込まないといった基本的なことに尽きます。

ただ、前述のように血圧が下がることによって様々な症状が起きるため、貧血を防ぐとか血液量を増やすことによって、改善が見込めます。

ポイントは水分と塩分を摂ることです。

高血圧には塩分が大敵と言われるように、逆に低血圧の場合には塩分をしっかりと摂ることが非常に重要です。

目安としては水分は1日2リットル、塩分は1日10グラムの量を摂ってください。

これはあくまでも目安で、基本は1日3食、バランスよく食べることが一番重要です。

次に運動が大切ですが、下半身の筋肉をつけることも改善につながります。

下半身は心臓に血液を戻すポンプの役割がある上に、面積も大きいため、下半身の筋肉が付くと血圧が下がりにくくなり、大きな予防になります。

これは重い筋トレではなく、軽いウォーキングやジョギング、ストレッチ程度で大丈夫ですので、こまめに継続して動かすだけでも変わって来るはずです。

そして、日ごろの生活の中でポイントになるのが、不必要にあまり寝転がらないようにすることです。

家に居るとき、特に眠くもないのに暇だからと言って横になると、自律神経は体が横になっている状態に都合のいいように調節するため、結果として起きるのが難しい体調になってしまい、起き上がりにくくなってきます。

ですので、日中に休む時は椅子に座るなどで、出来るだけ体を横にせずに過ごして、横になるのは夜に睡眠をとるときだけにするようにしてください。

もう一つ、立ち上がる動作をゆっくりと行うように意識すると、血圧の急激な変化が起きないため立ちくらみ予防になります。

さらに消極的な理由にはなりますが、できれば長時間立つような場面は避けるのも、一つの予防になります。

学生のころ、校長先生の話が長くて、ふらっと来たり、しゃがみこむような子がいると思いますが、それはこうした血圧の変化による立ちくらみが起きていることがあります。もちろん難しいことも多々ありますが、不安があれば先生に言うなどで、対策するのも手です。

自律神経、ストレスについてのお話しは421回や456回にて詳しく触れておりますので、こちらも参考にしてみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属