薬を「長期間飲み続ける」ということ
先日から、オンラインでの服薬指導というものを始めました。
通常は薬局内で、お薬を患者さんに渡す際の会話で行いますが、開かれた空間ですので待っている他の患者さんに聞こえるなどのプライバシーの問題があるため、服薬指導の際には細心の注意を払って話すようにしていました。
そこで、オンライン上で服薬指導することで、これまでよりも一歩、二歩ほど踏み込んでお話しできるようになりました。
こちらも、そして患者さんの側も、言ってしまえば言葉を選ばずに本音での会話ができ、これまで以上にピンポイントで患者さんに即した指導ができると実感しました。
そんなオンラインでの服薬指導の中で、「お薬を飲み続けて大丈夫なのか」という相談がありました。
旦那さんが高血圧や糖尿病と言った、いわゆる生活習慣病の治療中で、相談してきた奥さんのほうは「生活習慣を改善して薬を減らして欲しい」と思っているものの、旦那さんはコロナによって外出の機会が減り、運動量が落ちてしまいなかなか薬の量を減らせない、という状況です。
今回は久々に、お薬の飲み方について、このケースをもとにお話ししていきたいと思います。
長く飲み続けることで起こる副作用
やはり健康が一番で、お薬はなるべく飲まないに越したことはありません。
そして長く飲み続けたら、どういう影響が出るか分からない、というのも一理あります。
実際に、長く飲むことで副作用が起こるというのは、あり得ることです。
お薬は体の中で分解、吸収されて、無害になってから外へ排出されます。
お薬の分解には肝臓や腎臓と言った臓器が働きますが、当然ながらその処理はそれらの臓器にとっては負担となる作業で、お薬を飲んでいない状態に比べると負荷がかかっている状態になります。
その結果、お薬によって肝臓や腎臓の機能が弱る、ということがあります。これをお薬の慢性毒性と言います。
副作用が起こる量・期間は決まっていない
そもそもですが長く飲み続ける、多く飲む、という「長さ」や「量」についてですが、これは個人差が非常にあります。
アルコールの分解のように、いわば「強い」「弱い」があるのとほぼ同じで、お酒を長年飲み続けても脂肪肝や肝硬変にならない人や、ほんの少ししか飲んだだけで倒れる人など千差万別あるように、お薬をこれだけ飲み続けたら肝臓や腎臓が弱る、と一概に断言できることは無いのです。
そしてお酒であれば、お酒を飲まずに肝臓の働きを抑える休肝日を設けられますが、お薬についてはお薬ごとに決められた飲み方をする必要があるため、肝臓のことを考えて休肝日を作るということはできません。
ちなみに、急性アルコール中毒という言葉があるように、毒性にも急性のものがあり、お薬を飲んでからおよそ半年以内に、そのお薬によって肝臓や腎臓へ影響が出るという場合もあります。
血液検査で慢性毒性のチェックを
お薬は「長く飲み続けるほど危ない」、ということはありません。
言い方を変えれば、副作用や慢性毒性が起きなければ飲み続けても大丈夫、ということです。
その副作用や慢性毒性がどれぐらい起きているか、実際に自分の体はどうなのか、ということは血液検査で確認ができます。
血液検査では肝臓や腎臓の数値が確認でき、お酒の飲みすぎなどの判断に使えますが、これはお薬による負担のかかり具合も確認できます。
一般的にはお薬を飲み始めてから半年以内である数値が急激に上がっていると、副作用が出ている事が分かるのでお薬の変更や休止を検討されます。
2年以上飲み続けて徐々に数値が上がって出てくると、慢性毒性が出ている可能性を考えます。
これは徐々に、ゆっくりとしたペース出て来るため、数値が異常レベルであればお薬の変更は検討されますが、実際の肝臓への負担のかかり具合をもとに、お医者さんと薬剤師が飲み続けても大丈夫かを判断します。
負担が大きいと思われる場合には、お薬の種類を見直して、負担にならないものを選んでいくという風に切り替えて行きます。
血液検査をした際、お医者さんはこういうことも含めてチェックしているため、もし特に何も言われなければ、問題ないと思って頂いて大丈夫です。