間違ったファスティング・酵素ドリンクによる健康被害
最近、自分が担当した糖尿病の患者さんで、ファスティングを勧められて低血糖を引き起こし、酵素ドリンクをたくさん飲むように勧められた、ということがありました。
低血糖を起こす可能性がある方に、ファスティングを勧めるという行為自体が危険であり、間違っています。
ですが酵素ドリンクの販売事業者は、単に健康食品を売るだけとしか考えていないのか、その危険性を知らないでいる方が多いと思います。
今回はこの具体的なケースと、適切なファスティングの方法について解説していきたいと思います。
糖尿病の患者さんへ安易なファスティング指導が
まず、その患者さんは、インスリンを使用している重度の糖尿病の患者さんです。
その方にファスティングを勧めた事業者は、その患者さんが使用しているインスリンの種類や作用時間を全く考慮せずに、食事を取らない日はインスリンの量を減らしてください、と安易なアドバイスを行ったのです。
患者さんはインスリンを使っているとしか言っていないにもかかわらず、そして事業者側もインスリンの知識が明らかに乏しいにもかかわらず、こうしたアドバイスをしたのです。
インスリンには即効型、中間型、長時間型などさまざまな種類があり、それぞれの作用時間が異なります。
今回の方は幸いにも長時間型のインスリンで、緩やかに低血糖になっていったため悪影響は最小限でしたが、万が一即効型のインスリンを使用していた場合で時間通りに服用しなかった場合は、急激な低血糖を起こし、命の危険があった可能性もあります。
このように、十分な知識もなく安易にファスティングを勧める行為は極めて危険です。
酵素ドリンクの問題点と誤った健康情報
患者さんは続けて、低血糖が起きてしまったらファスティングも辞めたほうが良いのか、と相談したら、低血糖になった時の対応として勧めたのが、その会社の酵素ドリンクでした。
糖尿病の際の低血糖からの回復には、飴やラムネなどで手軽に血糖値を上げるのが最も安全ですが、事業者が自社の酵素ドリンクを勧めるのは完全に商売目的であり、消費者の安全を全く考えていない証拠と言えます。
例えば、酵素ドリンクの中には、糖質だけではなくアミノ酸やミネラル分も含まれているものがあり、健康的に思われそうですが、それはいわゆるスポーツドリンクなどの清涼飲料水と基本的には変わりません。
ピンからキリまであるのは確かですが、酵素ドリンクと言われる大半のものは単なるジュースのような飲料で、継続的に摂取すると糖尿病のリスクを高める可能性があるのです。
実際に、あるファスティングを推奨していた美容サロンで、販売員が栄養ドリンク的に毎日酵素ドリンクを飲み続けた結果、重度の糖尿病を発症したという例もありました。
もちろんその方の普段の食生活によるところもあると思いますが、ジュースを飲み続けると糖尿病になる、というのと違いはあまり無いと思います。
繰り返しになりますが、酵素ドリンクは基本的に清涼飲料水ですので、インスリンを服用しているような重度の糖尿病の患者さんには適しておらず、低血糖医薬品のような効果を期待するのは誤りなのです。
正しいファスティングの仕方
以上を踏まえて、正しいファスティングの方法についてですが、まず初心者や健康に不安のある場合は、まず16時間のファスティングから始めるのがおすすめです。
1日24時間のうち、朝昼か、昼夕方などの8時間の間で全ての食事を済ませて、残りの16時間は水分補給のみで食事は摂らない、という方法です。
このやり方であれば、極端な血糖値の変動を防ぎつつ、胃腸を休める効果が期待できます。
続いて本格的なファスティングを行う際には、事前の準備期間を設けることが大切です。
ファスティング開始の2、3日前から、おかゆや味噌汁、野菜スープなどの消化の良い食事を中心に取り、動物性タンパク質やジャンクフードを避けて、体を馴らしていきます。ファスティング期間に入ったら、固形物は食べずに、水分補給をしっかりとしていきます。この時は例えば味噌をお湯に溶いただけの具なしの味噌汁や、フルーツスムージーのような、消化に優しい飲み物を取り入れるのがおすすめです。
そして、ファスティング後の回復食も、急に固形物を摂取すると、消化器官に強い負担がかかって体調不良の原因となりますので、再び野菜スープやお粥などの消化しやすい固形物から食べ始めて、徐々に通常の食事に戻していくのが理想です。
特にファスティング後の食事は、栄養の吸収率が高まっているため、普段以上に栄養バランスを意識することが重要です。