紅麴サプリメントの続報!現状はどうなっているの?#788

紅麹サプリメントの被害状況が明らかに

今回は、前回の紅麹サプリメントの問題について、被害状況の詳細が出てきましたので、最新情報をいくつかまとめて行きたいと思います。

3月30日現在の死者数、入院者数

まず、3月30日現在、小林製薬さんから正式に発表されている被害状況としては、死亡者が5名、入院患者が114名、通院患者が500名以上、とされています。

これは回収対象のサプリメントを服用していた方で、確認されたという内容です。

まだ原因究明の途中ですので、サプリメントとのはっきりとした因果関係は不明ですが、このような状況になっています。

回収対象のサプリメントを服用していた方で、サプリメント由来と思われる不調により、通院や入院をする場合には、小林製薬さんがその費用を負担するという方針になっています。

そのほか、健康被害の相談、報告の数としては、現在では12000件を超えていますが、これは健康被害の報告以外にも、服用について心当たりのある方からの相談も含む数になっています。

また、台湾でも小林製薬さんの紅麹を原料として使用したサプリメントで、急性腎不全が起きたという報告がされています。

現状だといずれの健康被害も、回収対象のサプリメントで起きている可能性が高く、食品のほうで健康被害が起きたことはまだ確認されていません。

そして前回、未知の物質ということで確認できていなかった物質ですが、これはプベルル酸という物質の可能性が高いことが現在分かっています。

プベルル酸は青かびによって生成される成分の一つで、紅麹とは関連が無いものですので、製造段階のどこかで混入したという可能性が高いです。

現在はっきりと確認されている健康被害は腎臓に関するがほとんどで、急性腎不全も非常に多いです。

急性腎不全は摂取してからおよそ数日から1カ月ほどの間に出ることが多いです。

症状としては、重い手足のむくみや尿の出方が悪いといったものがあります。

現在は、何の食品に当該の物質が入っているか分からない部分もあるため、もし最近で腎臓に関する症状が出たというような場合は、腎臓内科のお医者さんに診てもらうのが安全です。

これまでの経緯が明らかに

先日、小林製薬さんが正式に会見を開き、現在分かっている経緯が時系列順に発表されました。

まず今年の1月、医師とその患者さんから何件かの連絡が入りました。

これを受け、2月5日に小林製薬社内で原因究明を開始し、2月中に同じロットのサプリメントを使用した方から、健康被害があるということが分かり、3月16日には一部のサプリメント製品とその原料である紅麹において、意図しない成分が含まれていることが分かりました。

そして3月18日に緊急対策本部を開き、22日に記者会見、自主回収となりました。

そしてつい先日の3月28日に、当該の紅麹の供給を受けているメーカーも公表され、各メーカーで自主回収が始まりました。

翌29日には厚労省も、当該の紅麹の健康被害対応のための緊急コールセンターを開き、対応に当たっているという状況です。

紅麹という「原料」

前回にも重なりますが、今回問題となったのは、成分で言うと紅麹になりますが、小林製薬さんが製造をした紅麹を原料に含む食品になります。

回収対象の紅麹サプリメントのように、商品名に紅麹と入っているものであれば分かりやすいですが、例えばイカの塩辛の製造過程や、さくらあんみつの製品にも原料として紅麹が入っており、実際に自主回収の対象製品になっています。

現在、自主回収対象のものは厚労省のホームページで全てまとめられていますので、心当たりがあれば確認してみてください。

ただし、先述のように現在では食品によって急性腎不全が起きたというケースは確認されておらず、万一対象商品を摂取していても、およそ1カ月ほど経過して何も症状が無ければ、まず問題無いですので、気にしすぎないようにしてください。

健康被害をいち早く食い止める姿勢を

今回、この問題が深刻化したのは、この紅麹が自社の製品だけではなく、原料として他社のサプリメントや食品に使っていたことが大きいと言えます。

多岐にわたる食品に使用しており、さらに海外にまで輸出していることから、状況把握が一層難しくなり、被害を拡大する一因になったと思います。

さらに、そうした要因があることで、健康被害の報告を受けてから公表、自主回収に至るまでおよそ2カ月ぐらいかかったという現実があります。

もちろん、因果関係を把握するまでにも時間を要したのはそうですが、医療従事者としては、因果関係の究明よりも、いち早く健康被害が起こる可能性を取り除くことをして欲しいと感じました。

騒いでもそれとは何も関係が無かった場合、ただそのメーカーが利益を失っただけと思われそうですが、医療従事者としては、騒いで何も関係が無かったことが分かったとしても、それで良いという考え方があります。

悪いほうに考えてから検査をして、それで違ったとしても、それはそれで良かったという考え方ですが、これほど大きな企業で起きたことで、関係各所も多岐にわたる以上は、そのように考えるのは難しいのかもしれません。

自社に責任がある可能性が高いことを分かっていながら、社内での対応を決め、筋道を立ててから、自主回収と販売取りやめを行うというのは、ある意味購入する消費者に目が向いていないようにも見えてしまいます。

まずは、健康被害をいち早く食い止めることを念頭に置いて、分かった時点ですぐに公表して自主回収をして、それから原因究明するという姿勢であって欲しかったという風に感じました。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属