基礎代謝って何?どうすれば維持できるの?#766

基礎代謝量を落とさないために

前回、中高年になると基礎代謝量が落ちる、ということについて触れましたが、今回はこの「基礎代謝」というものについて掘り下げていきたいと思います。

基礎代謝量とは簡単に言うと、何もしていなくても消費されるエネルギー量のことです。

運動しなくても消費されるエネルギー

人間の体の中で最もエネルギーを消費するのは筋肉であり、実際に基礎代謝も筋肉の動きが大部分を占めます。

ですが、例えば呼吸や心臓の動き、体温を維持する際にもエネルギーを使いますので、体を動かさずともエネルギーは消費されて行きます。

また筋肉そのものを維持するのにもエネルギーは使われます。

基礎代謝量とは、そうした活動に必要な動き全てにおいて使うエネルギー量のことを指します。

これは筋肉が増えると、当然基礎代謝量も増えますが、体組成や遺伝によっても変わります。

個人差が大きく、同じ体重でも筋肉量が変わると基礎代謝量が変わるのはもちろん、体組成によっては筋肉量が同じでもそれと同じだけエネルギーが消費される、とも限りません。

具体的に言うと、筋肉量が一緒でも体質的に体温が1度高いと、基礎代謝量は13%上がるとされています。

これは、体が熱を生むための消費エネルギー量が変わるためです。

このように、鍛えて筋肉を付けたとしても、遺伝や体質的に他の人と同じぐらいの基礎代謝量を得る、と言うのは難しいという特徴があります。

筋肉にアプローチをして基礎代謝量を維持する

前項で最初に書いたように、基礎代謝は何よりも筋肉が大きな役割を持ちます。

ですので、基礎代謝量を上げたいというときは筋トレから始めてみてください。

最も良いのは、週に2,3回ほど全身を対象にした筋トレか、もしくは部位を変えながら毎日どこかの筋肉を鍛えるというものです。

この二つが一番効果的ですが、やったことのない方だとかなり難しく、習慣づけるのも厳しいと思います。

その時は、体の中で一番大きな、下半身の筋肉を重点的に鍛えるのがおすすめです。

激しいものでなくとも、スクワットやウォーキングのような、脚に刺激を与えるものでも良いので、動かすようにすると筋肉が発達するため、基礎代謝量は上がって行きます。

睡眠も基礎代謝の維持に大切

人間の体は睡眠中も心臓が動き、呼吸をしているため、エネルギーは消費されます。

もっと言うと、睡眠という時間は体を回復する時間でもあるのと同時に、成長ホルモンが出る時間でもあります。

これは成長期を終えた大人であっても同様で、成長ホルモンそのものが、体を回復させるのに働いているのです。

ですので言い換えれば、睡眠不足になるということは基礎代謝量が低下しやすい状況にある、と言えます。

ライフスタイルによっても変わるため一概には言えませんが、一般的には7,8時間ほど睡眠をとるのが、基礎代謝においては望ましいとされています。

ちなみに普段から動いていると、その分エネルギーの消費量も増えるため、可能であればなるべく体を動かすのがベストです。

例えば自分もですが、普段からデスクワークだと、動いている時間よりも座っている時間が長くなってしまい、基礎代謝量が下がって行くということにつながります。

デスクワークの場合は、1時間に1回立ち上がるだけでも、運動になるため、基礎代謝の維持に役立ちます。

また体温も、上がっている方が基礎代謝が上がりますが、逆に冷え性で末端の体温が低いと、血液の流れが悪くなっているため、基礎代謝量が下がることにつながります。

ですので、冷えがある場合はその冷えを改善することが先決になります。

甲状腺によって基礎代謝が変わるケースが

ちなみに、健康診断で甲状腺機能を測りますが、この甲状腺機能は基礎代謝に関わり、甲状腺の病気によって基礎代謝量が不自然に上がりすぎるとか、逆にどれだけ筋肉を付けたりしても基礎代謝量が上がらない、ということがあります。

甲状腺の病気は気づきにくく、基礎代謝量が高い低いというのも、自力で感じ取るのはまずできないため、健康診断などがある場合には定期的に数字を確認していくのがおすすめです。

栄養バランスをしっかりとること

最後に、基礎代謝に良い食事ですが、やはり基本は運動であり、筋肉量が大切ですので、食事で出来ることは限られています。

ポイントはやはり、バランスよく食べることに尽きます。

もちろんたんぱく質も重要ですが、筋肉を成長させるためには、多少なりとも炭水化物の補給は必要であり、最低限の脂分も必要で、特にDHAやEPAのような脂分は、筋肉にも非常に便利に活用されます。

より基礎代謝を維持しやすくするためには、1日一食ではなく、1日3食に分けて取るのが望ましいです。

そして1日に必要なたんぱく質量は、体重1キログラムにつき1グラムから2グラムのたんぱく質が必要、とされていますが、これはプロテインのような純粋なたんぱく質での数字ですので、一般的な食品となるお肉やお魚から摂る場合にはその5倍ほどの量を食べる必要があります。

つまり、体重1キログラムあたりにつき5グラムから10グラムの量のお肉、魚を食べる必要があるということです。

そう考えると非常に難しそうですが、これは1日に必要な量ですので、例えば朝であればゆで卵やヨーグルト、チーズと言った乳製品、豆類を活用するのも充分効果的です。

また、水分も当然大切で、水分をとることで血液の流れが良くなるため、基礎代謝にも自然と良い影響が出てきます。

最後にビタミンで言うと、ビタミンB群がエネルギーを生み出す代謝を助けるため、基礎代謝には良いです。

食べ物で言うと豚肉やレバー、乳製品、野菜では緑黄色野菜に多く含まれているため、意識してみてください。

重ねてになりますが、やはり代謝は運動によって行われるため、基礎代謝量を上げたいというときはまずは筋肉を付けるなど、体を動かすことを習慣づけることから、始めてみて頂ければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属