人との関わりで心を穏やかにする「オキシトシン」
前々回がセロトニン、前回がドーパミンという幸せホルモンについて取り上げましたが、今回は3番目のオキシトシンについてです。
脳内の物質の一つで、恋愛ホルモンとか絆ホルモンなどという呼び方をされることもあります。
オキシトシンが発見された際は、分娩の時に子宮の収縮を促すとか、産後の子宮の回復に使うなどで、主に女性特有のホルモンという見方が強まっていましたが、研究を進めるうちに男性にも生殖機能の中で関わっていることがわかりました。
さらに、男女問わず人間同士の触れ合い、愛情という面での幸せに大きく作用することもわかってきており、現在に至ります。
今回はこのオキシトシンについて、詳しくご紹介していきます。
オキシトシンの効果
オキシトシンにはリラックス効果はもちろん、自然治癒力を高めるとか、腸内環境が良くなる、味覚が鋭くなる、さらにはアルツハイマー型認知症による認知機能の低下を改善させるという効果まであります。
そしてオキシトシンには、前回前々回取り上げたドーパミン、セロトニンといった幸せホルモンの分泌を大きく促す働きがあります。
オキシトシンが不足することで、何か悪影響が起こるということはありませんが、そうした他の幸せホルモンが不足していくことにつながるため、やる気が落ちてうつの傾向が出てくるなど、前回前々回で取り上げたような悪影響が起こることにつながります。
オキシトシンには様々な非常に効果があるため、オキシトシンが不足すると少しずつからの不調がたまっていく可能性はあると言えます。
ただ、ストレス解消法が様々あるように、栄養素も様々あり、通常時には替えが効く物質でもあるため、オキシトシンだけが不足したからと言って、大きな問題が起こることはまずありません。
ただ、オキシトシンが著しく足りない状態がずっと続いてしまうと、愛着障害と呼ばれるような行動を引き起こすケースがあります。
オキシトシン不足で起こる愛着障害
愛着障害とは、その人にとっての家族などのような、極めて大切なものを守りたいあまりに、他者や他の者への攻撃が激しくなり、社会生活に影響が出るとか、ある人や物への愛情が強いあまりに、常識の範囲内での距離感が保てなくなる、などといった症状のことです。
また、配偶者や子供に対して、どのように愛していけばいいかわからないとか、周りの敵、味方が0と100のように、はっきりと区別してしまい、円滑な社会生活が送れなくなる、といった症状も愛着障害になります。
オキシトシン不足が続くと、こうしたことが起こる、と言われていますが、前々回のセロトニンでも触れたように、こうした症状がオキシトシンが不足しているから起こる、と一概には言えないという部分も当然あります。
オキシトシンがあっても、別の原因があり、そうした行動の原動力となっていることももちろんあります。
未だに解明されていない部分も多いですが、愛着障害とオキシトシン不足は大きな影響がある、ということは明らかになっています。
オキシトシンの増やし方
オキシトシンは、栄養素で言うとマグネシウム、亜鉛、ビタミンDが関わってくるとされており、そうした栄養素が減ると、体内でオキシトシンが増えないと言われています。
ですので、魚介のカキやわかめ、昆布といった海藻類、栗、アボカドのようなものが多いとされています。
次にオキシトシンを増やす方法は、前述のように愛情に関わってくるホルモンですので、愛情を感じることがベストです。
動物や人間との、直接の触れ合いはとても効果的ですが、必ずしも人間が相手である必要は無く、身近なペットや物でも大丈夫です。
また、人に親切にしたり、優しい行動をとると心が満たされるような感覚があると思いますが、そうした行動はオキシトシンが増えることになります。
ことわざで、情けは人の為ならず、という言葉がありますが、これは情けは人のためにはならない、という意味ではなく、情けは人のためにするのではなく自分のためにする、という意味を持っています。
他には、人と会話したり、行動を共にするだけでもオキシトシンが増えることがわかっています。
もちろん、自分が居て気分が良いグループや他人であることが大切ですが、人との会話や行動には、一定のオキシトシンを増やすという研究もされているため、非常に重要と言われています。
そしてやはり、ストレス解消もオキシトシンの分泌には大切です。
度々、ストレス解消の方法をいくつも持っておく、ということはお伝えしていると思いますが、オキシトシンは美しい景色を見るだけでも増える、とされているため、簡単に調べて、きれいな景色を見るというだけでも是非やってみてください。