話題の再生医療!幹細胞治療って何?#746

最近話題の「幹細胞」

先日少しご紹介したように、当薬局では簡単な脱毛やエステのサービスをスタートしました。

それに合わせて、よく耳にするようになったのが「幹細胞」です。

幹細胞とは、一言で言うと自分と同じ細胞を増やす能力を持った細胞のことで、幹細胞美容液という言葉も身近で少し出てきました。

今回は主に幹細胞について、詳しくまとめていきたいと思います。

幹細胞の働き

人間には様々な細胞があります。

髪の毛から脳から各臓器まで、人間の全てが細胞の集まりで出来ていますが、それらの元をたどって行くと、全て幹細胞という細胞になります。

簡単に言うと、幹細胞が心臓へと行けば心臓の細胞になって働き、脳に行けば脳細胞として働く、ということです。

幹細胞は生まれたとき、赤ちゃんの時には総数で60億個ほど、20歳で成人を迎えるころには30億個から20億個まで減り、それからはさらに右肩下がりに減って行く、とされています。

幹細胞は再生医療において非常に重要で、例えば年を重ねると体の様々な傷が治りにくくなっていると思いますが、これは体の中の幹細胞の数が少なくなっているためです。

再生医療とは

再生医療についてもう少し具体的にまとめると、幹細胞は皮膚を怪我したり、また体の中で炎症が起きたり、病気が起こったりしたような際、体の組織を元に修復しようとする働きをもっています。

この働きを応用して、自分の幹細胞を増やし、それを使って病気を治していく、というのが再生医療です。

具体的には、多くの場合はお腹の脂肪細胞から幹細胞をおよそ1000個ぐらい取り出して、それを5週間から6週間ほどかけて増やし、それを点滴で体の中に戻し、体の幹細胞の量を増やして、修復させていきます。

幹細胞の性質として、現在の体内で傷ついている場所を見極め、自動でそこに集まって治すという働きがあります。

ですので、例えば脳梗塞によって体にマヒが残ってしまったような場合は、一言で言えば血管に血が通らず脳細胞が死んだ状態という状態になります。

その時、働ける幹細胞が多いと、通らなくなった血管があった場所に新しい血管の細胞を作り、血液が通るようにします。

そして、その先にある死んでしまった脳細胞を取り除いて、その場所に生まれ変わるように、死んだ細胞の代わりに脳細胞として働きます。

その結果、マヒのあった部分に血液が通り、脳細胞が復活するような形になり、徐々に元のように動けるようになるということです。

これは脳梗塞以外の脳の病気でも応用されており、認知症や難病として知られるALSや、原因が分からないけど痛みがずっと続く慢性疼痛、更年期障害、パーキンソン病や自閉症といった病にまで、高い治療効果が期待出来る手法になっています。

さらに、元は自分が持つ幹細胞を使うため、お薬と違って基本的には副作用がほとんど起きないのも特徴です。

少しずつ実用化されており、幹細胞を使った再生医療も一応は可能ですが、およそ150万円から200万円ほどの費用がかかるため、かなり負担が大きいのが現状です。

幹細胞培養液・幹細胞培養上清液が入った美容液

以上を踏まえて、今回のきっかけとなった幹細胞美容液ですが、幹細胞とは自分が持つ細胞のことですので、幹細胞が含まれた美容液ということではありません。

具体的に入っているのは、幹細胞培養液か、もしくは幹細胞培養上清液のどちらかです。

幹細胞培養液は前述の、体からとり出した幹細胞を5週間から6週間かけて増やす際に使う培養液のことで、幹細胞培養上清液は、幹細胞を増やして幹細胞を体の中に入れた後に、残った液のことです。

幹細胞は増えるときに様々な物質が出ており、成長に関わる体の細胞を治す働きの成分が様々あるため、幹細胞を取り出した後の液体です。

イメージしにくいと思いますが例えるなら、幹細胞は白い米そのもので、米研ぎの際に使うお水が幹細胞培養液、そして米を研いだ後に残った、水が白く濁ってできた研ぎ汁が、幹細胞培養上清液ということです。

幹細胞そのものは無いですが、それに関わった液体が含まれた美容液、と考えてください。

これらはどちらも、体を修復する作用はある程度持っているのは確かですが、どれだけの効果が期待できるか、というのは正直確かなエビデンスもなく、難しいところだと思います。

全体のうちにどれぐらいの割合で幹細胞培養液などが入っているかは特に記載されておらず、名前だけに書いているなど、怪しいものもたくさんあるので、買う前には充分注意して、しっかりと調べてから購入するのがベストです。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属