災害時、お薬手帳が命を救う!#708

お薬手帳は携帯しましょう

先日、石川県で強い地震があり、さらにすぐ後には千葉でも地震が起き、今後しばらくは予断を許さない状況と言われています。

災害の折に触れて、今一度周知しておきたいのが「お薬手帳」の扱いです。

これまでもvoicyで度々触れていますが、お薬手帳は災害時には非常に重要な、その人個人にとって必要な情報を得れる大きなアイテムの一つになります。

今回は今一度、お薬手帳についてご紹介しておきます。

お薬手帳は災害時に生まれた

お薬手帳とは、文字通り服用中のお薬を記録するための手帳で、処方時に病院や薬局が発行するものです。

お薬が医療機関ごとなどで重複したり、飲み合わせで問題が起きたりしないように、現在患者さんが飲んでいる薬を把握するために使います。

手帳サイズでシールを貼って記録していくのが主流ですが、実はお薬手帳が生まれたのは、災害の時に患者さんに必要な薬を届けるためのものとして作られた、とされています。

大きな災害が起こり、避難所が開設されて数百人規模で避難生活を送るという際、普段飲んでいる薬が無いという問題が起きます。

通常程度の医薬品であれば、医師や看護師とともに災害用の医療チームによって避難所に届けられますが、避難生活を送る方それぞれが何の薬を必要としているかは、その場で診察、聞き取りをしていかなければなりません。

そこで、お薬手帳があれば今飲んでいるお薬がすぐに、細かい情報まで分かるため、処方が劇的にスムーズに出来ます。

結果的に全体の診察時間も少なくなり、処置が素早くなるため助かる命も増えることになるのです。

お薬手帳は持ち歩くのがベスト

はじめに、お薬手帳は携帯しましょう、と述べましたが、これは突然の災害の時もそうですが、何かの発作を伴うような持病がある場合、倒れたり意識を失ったという時にどういう処置が必要かも、お薬手帳から分かることがあるためです。

そして、お薬の中には、飲み合わせで救命の際に使うお薬が効かないというケースがあります。

例えばエピネフリンというお薬は心臓が止まらないようにするお薬ですが、他のあるお薬を服用中の際には効果が薄まるため同じ働きを持つ別の薬を飲む必要があります。

こうしたときに、お薬手帳があると、万一の際にエピネフリンが効くかどうかをすぐに確認でき、最初からエピネフリン以外の救急のお薬を与えるという処置が出来ます。

またお薬にもアレルギーがあるため、飲めるお薬の情報、これまで飲んでいたお薬の履歴がわかるというのは非常に重要であり、便利なことなのです。

スマホではなく紙の手帳が最善

ちなみに最近では、スマホアプリでお薬手帳を配信しているところもありますが、スマホだとロックがかかっていて見てないケースが多く、見れたとしてもアプリを探して中を見るのは、ある程度時間がかかると思います。

また充電がままならない災害時には、スマホは情報収集や連絡等でとても大切ですので、診察の際に見せるのは難しいという点もあります。

ですので、アプリ形式ではなく、紙での手帳にするのが最善です。

ただ、それでもデジタル化の波は強く、マイナンバーカードが保険証と紐づけられたことで、医療機関側のネットワークで情報を管理して、医療機関側から患者さんのお薬の情報を引き出す、と言う事も理論上は可能ですので、今後紙媒体でのお薬手帳が無くなって行く可能性は充分あります。

とはいえ、現状ではまだそこまで実用化はされていないため、もしお薬を服用中で、お薬手帳をお持ちでしたら、是非普段から持ち歩くようにしてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属