知り合いの薬局が倒産する事態に
先日、知り合いの薬局が倒産しました。
閉店ではなく、倒産という不本意な形で営業を終えたということで、個人的にショックでした。
薬局は形態としては、普通の小売店と変わらず、お薬を製薬会社などから仕入れて、販売をするという形ですので、利益が上がらないと倒産するリスクを持っています。
そして今回のケースは、少し珍しい理由で倒産したのも、個人的に気になりました。
今回は医療や健康についてとは少し離れて、久々に薬局そのものについてお話していきたいと思います。
薬局特有の倒産リスク
薬局は薬九層倍(くすりくそうばい)ということわざもあるように、薬は原価の9倍ぐらいの利益があり、とても儲かる、というイメージがありました。
しかし当然、現代ではそんなことはなく、倒産する薬局もあまり珍しくありません。
今回の知り合いのケースでは、やはり患者さんのために仕入れたお薬が大きな原因です。
簡単に言うと薬局で扱う抗がん剤のお薬で、単価が高く、在庫を抱えてしまった状態になり、倒産に至りました。
問題なのは、高いお薬ほど利益が出ないという点です。
高い商品が売れると利益も大きくなる、というのが一般的ですが、実はお薬や処方箋によっては、売ることによって得られる利益が著しく低い、というケースもあるのです。
例えば、6万円を超える高額な医薬品でも、薬局には4円の利益しか入らないこともあります。
この原因の一つが消費税で、薬局は卸などからお薬を仕入れるときには消費税が発生するため、単純な薬価だけで購入しているものではありません。
ですが、実際に処方する際には、患者さんに消費税を請求することはなく、医療報酬にも計算はされません。
お薬によっても違いがあるため一概には言えませんが、高額な商品を仕入れて、それが売れたからと言って必ずしも利益が出るというわけではないのです。
また、余剰在庫の問題も当然あります。
仕入れた数に対して、どうにも捌けない端数が出てしまうと、それは余った在庫になり、その分赤字となります。
薬価の問題
もう一つ、対策が難しい大きな問題が、薬価です。
毎年4月1日、実は基本的には、お薬の値段は下がっていっていることをご存知でしょうか。
お薬の値段は国が決めており、実際にお薬がどれほど市場に出回っているかを調べて、その結果に合わせて年に1回改定されるようになっています。
今年の4月1日には、全体で4.67%のお薬が値下げとなりました。4.6%は、およそ300万円分ほどの在庫があった場合、14万円は価値が下がったことになります。
薬局側は毎年、3月には仕入れをせずにできるだけ余分な在庫を持たないようにしますが、当然それも限度があります。
稀に、薬価が上がるお薬もありますが、一般的なお薬は値段が下がってしまうのです。
結果的に、高い値段のお薬はなるべく在庫を持たないようにする流れになり、患者さんが来てから発注、取り寄せるという薬局も増えています。
さらに中には、高いお薬の取り扱いそのものを辞め、処方箋を受け付けずに断るケースもあり、深刻な問題になってきています。
薬局の利益の中心
現代の薬局の利益は、技術料が中心になっています。
技術料とは、基本料や調剤料とも言える部分で、例えば処方箋を受け付けた時や、お薬を分包したり、軟膏を作る際の手数料として発生するものです。
また在宅医療の際に、患者さんに直接お薬を届けたり、患者さんをチェックしたりするのも、薬価とは違う形で料金が発生します。
薬局の経営は一昔前よりは遥かに難しくなっているのは明らかで、ジェネリック医薬品も年々増えている現状、全部のお薬を揃えることはほぼ不可能です。
患者さん側としては、出来る限り、1週間分ぐらいは余裕を見て、お薬が必要そうになったら早めに薬局に連絡をして、お薬を取り寄せてもらうのが最善です。
必要に迫られてから薬局を探しても、時間がかかることが増えていますので、出来るだけ事前に連絡して、余裕を持って確保するようにしてください。