第9波は来るの?見通しはどうなる?#699

感染者数が増加傾向に

当番組、医療・健康ナビなくすりーなは次回で配信700回を数えます。

その節目を迎える直前となる今回は、久々にcovid-19について取り上げたいと思います。

3月4月と、マスクを着用しない卒業式や入学式、入社式が各地で目立ち、以前のような生活が一層身近になって来た現在ですが、実は東京都内では感染者数がわずかに増加傾向にあります。

前回触れたように、現状では全数把握はしておらず、陽性と判断されいない感染者もおそらく大勢いると思われる中で、増加の傾向がありますので、大きな感染爆発がこれから起きる可能性が残っているのです。

つまり、当初から数えると「第9波」となる感染拡大になります。

今回は久々に、この新型コロナについて、最新情報を細かにまとめて行きます。

3月23日から前週比プラスに

東京都では、3月22日までは前週比でマイナスと下降していましたが、23日からプラスに転じ、わずかにですが感染者数が増加してきています。

これは3月13日にマスクの着用が個人判断となったことに加え、年度末で人の往来が増えたことや、さらに都内ではお花見も解禁となり、会食の機会も一層増えたことも影響していると思われます。

3月23日から増加し始めていることを考えると、これが波の始まり、入り口となる時期で、このまま増加していってもう少し後にピークを迎える可能性が高いと思います。

今までのパターンではおよそ1か月半後グライがピークで、そこから減少に転じることが多いため、もしかしたらゴールデンウイークぐらいまでは増加し続ける恐れがあります。

ただ、前述のように現在は全数把握もしておらず、病院などでの無料検査をする人も少なくなっているため、確認される感染者の数は第8波より少ない可能性もあります。

また5月7日には正式に5類引き下げもされ、東京都ではそれに併せて無料検査も終了するため、感染者数はより表れにくくなってきます。

重症者数で言うと、第8波で1月12日に全国で700人になったのがピークで、そこから減少に転じて現在は54人となっています。

ちなみに感染者数で言うと第7波の方が多かったものの、重症者数は650人だったというデータがあります。

通常は感染者数と重症者数は比例して増えますので、直近の第8波の方が第7波よりも感染者数が多く、感染が広がっているという見方もできます。

現在流行している株

現在、欧米諸国で流行っているのがXBB.1.5という株です。

これは日本でも流行っていたオミクロン株のBA.5の変異で現在の日本にもすでに持ち込まれています。

現在は全体の6割程度がBA.5から置き換わっているため、およそ1か月半ぐらいでほぼ9割XBB.1.5に置き換わるかと思います。

XBB.1.5の特徴としては、BA.5よりも感染しやすくなっていることはもちろんですが、特に細胞に入りやすくなり、BA.5にあった免疫をすり抜ける性質も持ち合わせているため、より感染しやすいとされています。

これまでの抗体も効きにくいため、抗体カクテル療法は効かない可能性が高いですが、ラゲブリオやパキロビットのような専用の治療薬はこれまで通り効果があることは分かっています。

また重症化リスクもBA.5程度で大きくは変わらず、強毒化している可能性は低いと見られています。

5類引き下げで市中感染が顕著に

以上を踏まえて、これからについてですが、まず5月のゴールデンウイーク明けには正式に5類引き下げとなります。

5類引き下げになると、前述のラゲブリオやパキロビットのようなお薬を除いて、検査の費用や軽い咳止め、解熱剤と言ったお薬の処方には3割の自己負担が発生することになります。

そうなると、今以上に検査控えや受診控えが増え、市中感染が一層顕著になっていくと予想されます。

感染者が増えて医療がひっ迫していけば、政府が方向転換する可能性もゼロとは言えません。

ですもで、意識としてはまず自分がかからないように対策していくのが一番です。

とはいえ、当初のような感染対策をこれからも続けて行くのは、もしかしたら難しい部分もあると思います。

手洗いや手指消毒は非常に重要ですが、マスクについては自分に症状があるときは付けることをおすすめしますが、それ以外の場所で、感染リスクの低い所では外すのも一つです。

ただ、無症状感染のリスクはあるため、例えば同居する家族に高齢者がいるなど、親しい身内がいる場合で感染させたくないようなときには、入念な感染対策をするのは効果的です。

依然として感染のリスクはありますので、やはり出来るだけしっかりと感染対策をするのが確実だと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属