実はすぐ効くことも?漢方ってどんなくすり?#610

漢方薬って、結局どういうお薬なの?

当薬局なくすりーなが移転して少し経ちますが、体感で「漢方薬」の相談が、移転前より増えたような気がします。

漢方薬についてはこれまでも何度か触れており、様々な場面で登場していますが、今回は少し角度を変えながら、漢方薬そのものについて、深めに掘り下げてお話ししていければと思います。

”人体のバランス”を整えるという概念

まず始めに、漢方薬の原点となっている東洋医学の概念、仕組みとしては「バランスを整える」ということを重視しています。

この概念は、人間の体は「気」「血」「水」の3要素で成り立っている、というものです。

これを順に見て行くと、まず「気」は、文字通り気持ちを指しており、人間の体を動かすエネルギーという意味も持っています。

例えばストレスのかかり方で、人の元気や機嫌が変わって行くと思いますが、そうしたことを「気が整っている」「気が整っていない」という風に表せられます。

次の「血」は、血液だけではなく、全身をめぐって体に栄養を届ける存在全般のことを表しています。

ですので、血液そのものだけではなく、血液や栄養の循環にかかわる臓器、つまり心臓や肝臓と言ったもののことをも指しています。

最後の水は、文字通り体内にある、血液以外の「水」のことを指しています。

汗や尿、鼻水、リンパ液と言った体の水分のことで、体の免疫を司る要素の一つでもあるため、漢方薬でも水分は重視されています。

気、血、水の3つのバランスが整っている状態が健康な状態で、これが崩れていると不健康な、病気の状態というのが東洋医学の根本、概念になります。

そして、この体のバランスを整えてくれるお薬が、漢方薬ということです。

漢方薬はしばしば、体質改善に役立つと言われますが、こうした仕組みがあるためでもあります。

漢方薬は効くまで時間がかかる?

さて、本題の漢方薬についてのお話しですが、漢方薬は「効くのに時間がかかる」と言われることがあります。

これは前述の、体のバランスの崩れ方で変わってきます。

以前、過敏性腸症候群が漢方薬で症状が改善していった、という方がいましたが、その方は漢方薬を飲んだ次の日には下痢が止まったということがありました。

漢方薬は体のバランスを整えるお薬ですので、バランスがどれぐらい崩れているかによって、効果が出るまでの時間が変わって来るのです。

そして、そのバランスがどのように崩れているのか、どこを調整するべきなのかを見極めることが最も重要です。

その見極めが間違っていれば効果が出ないどころか、逆に悪化させる原因にもなり得ます。

例を挙げると、風邪には葛根湯(かっこんとう)が良い、というのが有名ですが、葛根湯は体を温める成分が主で汗をかく働きがあるため、汗は出ていないがだるさや悪寒がする、という風邪の時には効果的です。

しかし、発熱して汗をたくさんかいている症状の時に飲めば、水分を大量に排出してしまう一因になり、体力も奪われ、風邪の治りが遅くなります。

一般的な西洋薬にも通ずる部分ですが、必ず、症状に適した漢方薬を選んでください。

体質改善の場合は、2週間飲み続けてみる

ただ、前述のようなわかりやすい風邪のような急性期の場合はともかく、体質改善のために漢方薬を飲む場合は、効果が出るまで時間がかかり、その漢方薬が自分の症状に適しているか分かりにくいと思います。

その時は、およそ2週間から1か月ほど飲み続けてみてください。

一般的には、効果があれば2週間ほど飲み続ければ、何か変わった感じがすると思います。

その後、飲み始めて1か月ほど経過すると、効果があったと実感することが多いですので、まず最初の2週間飲んでみて何も変わらない、変化が実感できなければ、その漢方薬は飲むのを辞めて大丈夫です。

ただし、2週間飲み続けてもあまり効果が実感できず、飲むのを辞めた途端に、調子が悪くなったというケースもあります。

その場合は、自分でも実感できていないものの、実際にはお薬の効果が出ていたという状態ですので、また飲み始めることをおすすめします。

そして体質改善の場合の飲み終わり、飲むのを辞めるタイミングですが、治ったと思って辞めてしまうとすぐに元に戻りますので、症状が落ち着いて効果がしっかりと得られたと思ってから、2、3ヵ月ほどは様子を見てください。

具体的には、1日3回飲んでいたところを1日2回にするとか、ペースを1日おきにしてみる、と言ったように調節して、飲む量を減らしていくという形です。

ちなみに、自分の経験則で、確かな根拠はありませんが、体に合っていて現在必要としている漢方薬は味が飲みやすく感じて、体に合っておらず特に必要としていない漢方薬は非常に飲みづらい、と言っている人が多い印象です。

飲み始めは非常に飲みやすく、おいしさも感じるほどだったのが、次第にまずくなって飲みにくくなってくる、ということで、個人的に実際にこういうケースが多いイメージがあります。

これは明らかに、漢方薬が体に効いてきて、バランスが整ってきている表れですので、そういったサインも受け取りながら、飲む量を調節していくと良いかと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属