質問より!ワクチンは令和のサリドマイド事件になるの?#523

Voicy更新しましたっ!

今回は頂いたコメントから、サリドマイド事件に関するお話

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ワクチンの影響が、数年後に出る可能性は?

コメントにて「ワクチンを打つことによって、何年か後に悪い影響が出ないか心配です」と頂きました。

そして続けて「60年ほど前にあったサリドマイド事件を思い起こすと、もっと慎重になった方が良いのではないかと思ってしまいます」と頂きました。

ワクチンは現在は安全でも、数年後、数十年後の影響を考えると、不安に思う方も多いかもしれません。

そして日本とドイツでは実際に、サリドマイド事件という薬害事件が起きています。今回はcovid-19のワクチンにも絡めて今一度、サリドマイド事件も含めて触れていきたいと思います。

 

サリドマイド事件とは

サリドマイド事件とは、1957年、ドイツが東西に分かれていたころ、西側ドイツで開発された睡眠薬の事です。

睡眠薬、胃薬、さらに妊婦さんのつわり止めまで幅広く使われていたお薬でしたが、このお薬を妊婦さんが飲んでしまうと、奇形の子供が生まれる、という症状がありました。

元々、1957年にドイツで開発流通された直後、翌年の58年にすぐに日本でも承認された上に、審査にかかった時間はわずか2時間と言われています。

さらに、この薬害のことはすでに58年には海外諸国で確認されており、レンツ博士という方が奇形児の原因がお薬のサリドマイドにある、と指摘をしました。

この指摘はすぐに認められ、サリドマイドが流通していた国々ではすぐに自主回収されたものの、日本の厚労省はその調査に信ぴょう性が無いとみなし、販売をしばらく続けたのです。

その結果、奇形の子供はどんどん報告されていき、海外諸国で流通が停止してからおよそ10か月後に、自主回収という形になったのです。

日本はこの対応の出遅れにより、世界では3番目に多い、およそ1000人が被害を受けた国となったとされています。

 

サリドマイド事件は「人災」

サリドマイドというお薬は、欧米では速やかに回収したお薬を、国内では調査に信ぴょう性が無いとして10か月もの間流通が続けられました。

さらに承認審査も、国内向けに治験をするなどは一切無く、わずか2時間程度の簡単な審査で終えたという現実があります。

承認審査については、voicyでも以前から、特にcovid-19のワクチンに関連して何度も触れております。

例えば他国で承認されてから、日本で承認されるまで、最短でも3か月か4か月ほどはかかったという経緯があります。

この時間は日本国内でも、きちんと日本人に効果があるかを審査するために必要な時間です。

ここを省いて、他国で安全性が分かっているからと簡単に承認してしまうと、サリドマイド事件のようなことになりかねません。

そして現在、PMDAという機関が日本にあります。PMDAでは医薬品や病院で使う医療用の機械などと言ったもののに対して、販売後も品質や安全性を調査したり、情報提供したりといった業務をします。

これによって、何らかの問題が起きた場合はそのお薬や機器を使っている病院、薬局にすぐさま連絡が行くようになっており、さらにはその対象の製薬会社、メーカーさんにまで素早く連絡でき、すぐに自主回収やメンテナンスに出向ける仕組みが整っています。

 

副作用は何年後かに出る?

コメントにあった、covid-19のワクチンが何年後かに、何らかの副作用を及ぼす、という点は確かに全く分かりません。

現段階で、打った段階では安全性が高いことは日本も含め世界中で確認済みですが、まだワクチンが出来て間が無いため、数年後、数十年後を考えて安全かどうかは、今では何とも言えません。

ただ、数年後、数十年後を考えて打たない方がリスクが高いのか、打つ方がリスクが高いのかをきちんと比べて考える必要があると思います。

例えば今回取り上げたような問題があって、打った方がリスクが高い、長期的な安全性のリスクを取るという点では、確かに正確なことは今の段階では分からないため、確かなリスクではあると思います。

しかし、このcovid-19のワクチンの仕組みとなる、メッセンジャーRNAワクチンというワクチンは、研究自体はおよそ40年ほど前から欧米で続けられており、当然ながら治験も数年、数十年という単位で行われているものです。

また、そもそも医薬品ではなくワクチンというものに関しては、長期的な安全性と言うのは確保されていますので、新しいワクチンだからと言って数年後に問題が起きるのは極めて考えにくいと言えます。

反対に打たないリスクは、covid-19による死亡率、重症化率で考えられます。日本で言うと死亡率が1.8%と、100人のうち2人が亡くなる恐れがある、ということが分かっています。さらに全体で2割程度の方が、感染することで重症化することが分かっています。

重症化は単純に生死の境をさまようというだけではなく、嗅覚が戻らないとか、体力が戻らないと言った後遺症の恐れもあります。

ワクチンを打つことで、感染するリスクも、重症化するリスクも大幅に減らせられますので、何度もお伝えしているようにワクチンを打つ方がリスクは低い、と考えられます。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属