13都県にまん延防止等重点措置!今後はどうなる?#580

13都県に「まん延防止等重点措置」が再発令

前回、まん延防止等重点措置が沖縄、広島、山口県に発令されたとお伝えしましたが、19日には東京都を含む首都圏の1都4県に加え、岐阜、愛知、三重、熊本、宮崎、長崎にも発令され、合計で13都県に上りました。

さらにこれに加え、新潟、香川県が国に対してまん延防止等重点措置の発令を要請しており、栃木と群馬県も本格的に検討に入っていると報道されています。

完全な「第6波」とも言える、今回の状況について最新情報を踏まえてお伝えしていきたいと思います。

合計感染者数のピークが、第5波を超えている

まず現状の感染者数で言うと、感染拡大以降で初めて、国内の新規感染者数2万7000人を超えました。

これは前回の第5波のピーク時よりも多い数字で、例えば大阪では5396人と、過去最多を更新するなど、増加のペースはこれまでよりも圧倒的に早いことが明らかになっています。

グラフで見ると、現在は山が急激に上がっているさなかの状態ですので、おそらくピークはまだ来ておらず、患者数で言うと1万人を超えるぐらいでピークアウトになるかどうか、という所と思います。

今回のまん延防止等重点措置の期間は、現状では1月21日から2月13日までとされていますが、この感染者数の増加のペースとこれまでの状況を考えると、2月13日で終了するどころか、その前に緊急事態宣言へ移行する可能性も充分あり得ます。

例えば東京都では病床使用率が20%以上でまん延防止等重点措置、50%以上で緊急事態宣言と、基準を明確にしており、1月17日時点で20%を超えたため要請した、という経緯があります。

感染力が強いオミクロン株の特徴と、ウイルスが活動しやすい冬場の相乗効果

今回の感染拡大は、何よりもオミクロン株の特徴と、冬という季節が合致してしまったということが大きな要因です。

以前から、オミクロン株の感染力はデルタ株の最大で4倍と言われていますが、そもそもデルタ株は従来型のcovid-19に比べると2倍から3倍程度の感染力を持っている変異株です。

それのさらに最大で4倍ということになりますので、オミクロン株の感染力はとてつもなく強い、と考えても差し支えありません。

そうした強さを持ったウイルスが、年末年始という全国的に最も冷え込む、冬場の環境で拡大したというのが現在の日本の状況です。

インフルエンザをはじめとした様々なウイルスは、乾燥している方が活発になって感染しやすく、換気もしにくいことから感染のリスクが夏よりも非常に高まります。

さらに、年末年始は人出が最も多い時期で、実際に今回の年末年始は以前のまん延防止等重点措置や緊急事態宣言時よりも明らかに多い印象がありました。

そのうえ、以前の回にも重なりますが、ワクチン接種した人でも5か月以上経過するとオミクロン株への予防効果はほぼ無くなる可能性が高く、実際にワクチン接種済みの人でも感染、発症してしまうブレークスルー感染も頻繁に見られるようになりました。

予防効果が大幅に薄まってしまうのは陽性者、感染者が増加する大きな要因ですが、一方で重症化予防効果はある程度保たれていることも、データで徐々に裏付けられてきています。

東京都では病床使用率は20%を超えていますが、重症者は5人で全体の1%となっています。

ただし、全国の重症者数は1月13日の時点で100人程度だったのが、現在は243人と、5日ほどで2倍以上になっていますので、このことを考えると、やはり感染者が増える分重症者も増えることは確実と考えられます。

重症者数は感染者が増え始めてから2週間後から増加し始めますので、この感染者数での重症者の数は、再来週ごろ出てくると思われます。

そして前述したように、感染者数のピークはまだ見えておらず、まだまだ増加する可能性も充分あります。

治療方法に幅がある

しかし、これまでの感染拡大と決定的に違うのが、選択できる治療方法の種類です。

初期のころ、レムデシビルをはじめとした重症者向けのお薬がいくつかありますが、それらはあくまでも重症者への治療であり、軽症や中等症の方への治療方法の選択肢が極めて少ないということがありました。

その少し後に抗体カクテル療法が実用化されましたが、点滴な上に使いどころも難しいという欠点がありました。

しかし去年12月の24日に飲み薬が承認され、まだ限定的にですが薬局で飲み薬が処方できるようになりました。

さらに、ファイザー社のパクスロビドというお薬もあり、早ければ来月中にも承認され、日本へは200万人分供給される予定となっています。

感染者数が急増することで出てくる問題

最後に、オミクロン株は感染力が強いものの軽症で済む可能性が高く、重症化しなければ問題なさそうに思われますが、現状では感染者数が拡大すると様々な社会的な弊害が出てきます。

まず、最近特に表面化してきた問題が「濃厚接触者の定義」についてです。

感染拡大当初のころにほんの少し触れましたが、濃厚接触者になると隔離を命ぜられ、その間は外に出られないという措置がされています。

医療従事者の一部では、濃厚接触者になってもPCR検査で陰性であればすぐに復帰できる体制も本格的に検討されていますが、そうはいかない業界、職種もたくさんあり、濃厚接触者認定による人手不足が深刻化してきています。

これでは同じ職場内の他の人にしわ寄せが行くどころか、会社全体で業務を縮小したり、場合によってはこの措置によって閉業を余儀なくされるというケースも充分考えられます。

そしてもう一つ、医療費の問題も徐々に出てきています。

まず治療薬はどれもコストが極めて高いという欠点があり、例えばcovid-19治療薬の先鋒として出てくるモルヌピラビルは5日間で飲み切るお薬ですが、これは1人当たり85万円になる見通しです。

また、全国的に自治体が行っている無料のPCR検査も、実際には検査キットの費用や会場確保などを税金から予算を組んで行っています。

これだけの費用が発生し続けている状況が、もうすぐ丸2年になるのが、2022年の今なのです。

このしわ寄せが何らかの形で、国民へ返ってくる可能性を考えると、やはり感染者数は出来るだけ増えないように、日ごろから意識して、きちんと感染対策をしていくことが大切かと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属