デルタ株への効果は?ワクチンの気になるメーカー別効果#533

Voicy更新しましたっ!

今回は徐々にわかってきた、デルタ株とワクチンの効果に関するお話

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ワクチンのデルタ株への効果

オリンピックが正式に開幕し、続々と競技が行われている現在、東京では感染者数が3000人を超えるなど、依然としてcovid-19が猛威を振るっています。

2021年の感染拡大の大きな要因とされている「デルタ株」という変異型ですが、最近、国内外でのワクチンの効果にまつわる報告が徐々に上がってきています。

今回はこれについて、最新情報をお伝えしていきたいと思います。

 

世界で最もワクチン接種が進んでいるイスラエルの例

少し前の配信などで何度か触れていますが、イスラエルは世界中で最もワクチン接種が進んでいる国です。

高額な費用の上に、得られたデータのほとんどを提供するという条件でファイザー社のワクチンを購入した国になります。

このイスラエルで、当初はファイザー社のワクチンはcovid-19への予防効果が64%あったとされていたのが、現在では39%しかない可能性が高い、という報告がされました。

一方で入院リスクや重症化リスクは、それぞれ88%、91%防ぐ効果がある、とされていますが、つまりワクチンを打っても軽症の症状が出る可能性が高く、かかるリスクが高い、ということが言われ始めたのです。

ワクチンの効果が低下した原因が、デルタ株なのでは、とみられているのです。

イスラエルの今年の感染状況は、1月がピークで1日7000人の感染者が確認されました。

その後、ワクチン接種が加速して4月には全人口の6割が1回目の接種を終え、さらに2回接種した人も同月中に5割ほどというペースで接種が進みました。

また、感染者数も1月のピークから減少傾向になり、3月の半ばあたりから徐々に減少していったところでのワクチン接種のスタートだったため、4月の感染者数は1日数百人程度と、ピーク時の10分の1程度にまで減っていました。

6月には感染者数が国内で0人、確認されない日もありましたが、6月後半ごろから徐々に感染者数が増え、再び1日1000人規模で確認されるようになりました。

当然、ワクチン接種も進んでおり、2回接種した人も6割程度、1回接種した人は6割以上ですが、感染者数だけで言うと再度増加に転じたということです。

一方で、死者数は確実に減少しており、接種が始まった4月時点で1日一人二人ほどの死者で、デルタ株で感染者数が増えた現在でも死者数は増えず、一人、二人程度となっているのは数字で表れています。

これらのことを踏まえると、デルタ株は極めて強い感染力があるウイルスであるものの、ワクチンを接種したら入院や重症化のリスクを抑えられる、という裏付けになると言えます。

 

モデルナ社のワクチンの最新データ

もう一つ、モデルナ社のワクチンの最新データは、カナダのチームが、1回目の接種後のデルタ株への予防効果を調べた報告があります。

これでは、モデルナ社が72%、アストラゼネカ社が67%、ファイザー社が56%の予防効果、と発表しました。

そして、1回接種を終えた段階で、デルタ株による中等症、例えば強めの咳が出たり酸素吸入が必要なレベルの症状を防ぐ効果はどれくらいあるのか、という部分では、モデルナ社が96%、アストラゼネカ社が88%、ファイザー社が78%と発表しました。

ただし、実はイギリスのチームでの、同様の条件下による調査結果もあり、それによるとアストラゼネカ社が30%、ファイザー社が36%の予防効果、と、カナダのチームの発表と大きく差があります。

ですので、言ってしまえばこれはどちらもあまり参考にならないデータ、裏付けが不十分なデータと考えて差し支えありません。

一部のネットニュースなどでは、モデルナ社の方が効果があるという風な言い方がされていますが、このようにいくつもの研究チームがそれぞれで発表しているため、モデルナ社のワクチンの正確なデータは、まだ出てきていないのが現状です。

ですが、開発当初から製薬会社が発表しているように、2回打つ必要があり、2回打つと効果は十分得られる、ということは、いずれのワクチンでも確定しております。

 

デルタ株と隣り合わせの現在

現在、日本でも首都圏を中心に増加の一途をたどっていますが、前述のイスラエルの例にもあるように、特別何かの対策が失敗しているということはありません。

デルタ株の影響が、世界的に出ているのです。

日本イスラエル以外だと、アメリカでは一時数千人程度にまで減りましたが、現在では1日5万人程度出る日もあります。

日本ではデルタ株が流行っている上で、緊急事態宣言の効果、自粛要請の効果がほぼ完全に限界にきている面もあると思います。

ワクチン接種については、大規模接種会場や職域接種ではモデルナ社、自治体主導のものではファイザー社という風に使い分けがされていますが、接種数が増えていくため、日本でのデータの精度はこれから確実に上がって来ます。

ですので、現状で、海外の研究結果や報告で一喜一憂する必要は無いと思って大丈夫です。

併せて、前述したように2回打つことで十分効果はあるうえに、入院予防効果、重症化予防効果もどちらも確実に存在しますので、打った方が良いということについては変わりありません。

そしてこちらも忘れずに、感染症対策はこれからも十分必要です。

徐々にワクチン接種が進み、お年寄りの方でワクチンを打ったからマスクをしなくていい、というような感覚でいる方がたまに見られるようになりましたが、自分は無症状でもほかの人、周りの人にうつしてしまうリスクは確かにあります。

ですので、これからも引き続き、距離をとること、会話をするときはマスクをする、手洗いをこまめにする、食事の時はできるだけ会話をせずに飛沫を飛ばさない、といった一つ一つの対策を、続けて行きましょう。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属