Rh?HLA?知ってるようで知らない血液型の話#423

Voicy更新しましたっ!

今回は血液型の深いお話

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「血液型」というものについて

今回は血液型のお話です。

まず、現在日本も含めた世界中で一般的に使われているのが「ABO式血液型」です。A型、B型、O型、AB型の4つです。

この4種類は、赤血球にある「抗原」の有無で分けられています。

A抗原が赤血球についていれば、A型の血液、B抗原が赤血球についていれば、その人はB型の血液、という風に分かれます。

ただし、O型は赤血球に抗原がついておらず、AとBの抗原が両方赤血球についていれば、AB型となります。

ここから、なかなか知られていない、血液型のややこしく深いお話に入って行きます。

 

輸血で同じ血液型を使う理由

前回、リンパの回で出てきた、血液を構成する「血漿」という成分があります。

血漿の中に、A型の抗原がついている人であれば、抗B抗体というものが入っています。

一方、B型の抗原がついている人であれば、抗A抗体というものが入っています。

これは何かというと、対の抗原を見つけると攻撃するというものです。

そして、O型となる人、つまり赤血球に抗原が無いということは、血漿の中にAとBの両方の抗体があり、AとBどちらであっても入ってしまうと、攻撃をすることになります。

持っていません。

なぜこのお話をするかと言うと、今の医療でとても重要な処置となる「輸血」の際に必要なためです。A型なのにB型の血液を入れてしまうと、A型が持つB抗体が、外から入ってきたB型の赤血球を攻撃してしまい、逆もまた然りとなるのです。

これを踏まえると、A型、B型、AB型の人に、O型の血液を輸血するのは可能で、逆にAB型の人はその他の血液型の人に、輸血することはできません。

O型の赤血球には抗原が無いためで、AB型の赤血球には両方の抗原があるためです。

ちなみに、O型の血漿の中には両方の抗体がありますが、基本的には、輸血に用いるのは赤血球だけで作った専用の製剤ですので、血漿の部分は含んでいません。

つまり、抗原が無い赤血球だけが体内に入るので、自分の血漿の抗体が反応することはありません。

 

Rh式分類

以上が一般的な血液型のお話でしたが、ここからさらに深く掘り下げると、実は血液型が全部で「36種類」もの数に分けられます。

マイナー過ぎてほぼ誰も使っていない分け方などもあり、非常にたくさんありますが、ABO式血液型とはまた違った公言で分類するのが「Rh式」の血液型分類です。

ABO式と同じく、赤血球についている抗原で分けている方式ですが、簡単に言うとD抗原というものを持っているかどうかで、「プラス(+)」と「マイナス(-)」に分けています。

Rh-の人に、Rh+の赤血球を入れてしまうと、攻撃してしまうので入れられませんが、逆に、Rh+の人に、Rh-を輸血するのは問題ありません。

ちなみに、Rhのお話でしばしば、ほとんどの人がRh+と言われますが、日本人のRh-はおよそ200人に一人程度で、中でも非常に少ないRh-AB型でも2000人に一人程度となって言われています。

一方で、白人の人種のデータでは、Rh-は6,7人に一人程度で、全体で15%の方がRh-と、日本人よりも大幅に多いとされています。

 

Rh-に気を付けたいのは妊婦さん

Rh-や+に関しては、妊娠している時、胎児の問題があります。

一人目の出産の場合、お母さんの元々の血液型がRh-で、胎児の血液型がRh+だった場合、胎児に黄疸や若干の貧血の症状はあると思いますが、基本的には問題なく出産できます。

しかし、その一人目の赤ちゃんの出産によって、お母さんの体にRh+の抗体が出来ます。

そしてその次、2回目に妊娠したときに、胎児の血液がRh+だった場合、胎児の時点で、お母さんの持つ抗体が攻撃してしまいます。

産婦人科のお医者さんは、この事態も充分分かっており、攻撃しないようにする治療法ももちろんありますので、女性の方で血液型がRh-であれば、必ず産婦人科で相談してください。

 

「HLA」と言う分類

血液型と言えば、ここまでも書いたように基本的に「赤血球」の違いですが、白血球にも同じように違いがあり、型となるのではと調べてわかったのが、HLAです。

これは、白血球のみならず、人間のほぼ全ての細胞、体液に同じような型があることが現在では分かっています。

現在も、人の免疫力にかかわる要素として研究が続けられていますが、他にも、自分と自分以外の認識、という面でも重要な意味を持っています。

前述のABO、Rhでの分類は、それぞれ4種類やそれに加えて2種類程度でしたが、HLAはそれらよりも遥かに多い、いくつもの要素が組み合わさってできています。

これは、数で言うと数万通りあることが分かっています。

両親からの遺伝では、半分ずつ受け継がれて、必ずしも全部一致することはありません。

このHLAの分類が使われるのは、骨髄や臓器の移植の際です。

移植を必要とする患者さんと、提供をするドナーの人、両者のHLAの型が近くなければ、移植したときに自分のものでないという風に判断して、攻撃をしてしまって受け付けないという事態になります。

数万通りもある中で、少しでも合う方を見つけて、すぐに提供ができるようにするのが、骨髄バンクや臓器移植ネットワークと言う制度なのです。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属