膀胱炎ってどんな病気?予防と対策は?#798

膀胱に起きる炎症

今回は、これまでと少し趣向を変えて、膀胱炎についてのお話です。

膀胱炎そのものについて、voicyで取り上げておりませんでしたので、今回取り上げてみたいと思います。

簡単に言うと、膀胱という尿を貯める臓器の中に炎症が起きるというもので、多くの場合は大腸菌によって起こります。

膀胱炎が女性に多い理由

膀胱炎は男性よりも女性に多いという特徴がありますが、これは尿道の長さに違いがあるためです。

女性は男性との性器の違いにより、膀胱までの尿道が短く、大腸菌をはじめとした雑菌類が入りやすく、膀胱炎になりやすいという特徴があります。

他には、男女問わず糖尿病だと、尿に糖分が増えるため、大腸菌にとって栄養になって繁殖してしまい、膀胱炎になりやすいという面もあります。

膀胱炎の症状としては、頻繁に尿意を催すとか、尿を我慢した際に痛みが走る、尿が不自然に濁ったり、血が混ざるといったものがあります。

そして、膀胱炎に関連して尿道に炎症が起きる、尿道炎という病もあります。

尿道炎は、雑菌類が膀胱の中まで入らず、尿道の部分で止まって炎症が起きたという状態ですので、膀胱炎と比べると軽いほうですが、症状は膀胱炎に似ており、辛い病になります。

逆に、膀胱炎や尿道炎が進行して酷くなった、腎盂腎炎(じんうじんえん)という炎症もあります。

腎盂腎炎は膀胱より先にある、尿を生成する腎臓に菌が入り、炎症が起きたもので、高熱が出たり背中に激痛が走ったりと、場合によっては命に関わる危険もある病です。

膀胱炎は単なる炎症の一つと思われがちですが、慢性化すると治療が難しくなり、腎盂腎炎が起こるリスクも高まり、腎臓にも悪影響ですので、しっかりと注意が必要な病になります。

抗菌薬で治療

膀胱炎は炎症の一つですので、やはり抗菌薬を用いて炎症を鎮めていくという治療をします。

前述のように、一般的な成人であれば大腸菌によるものが多いですが、特に施設に入居されているような、きちんと健康管理が出来ている高齢者においては、大腸菌以外の菌で発症することもあるため、使う抗菌薬を見極める必要があります。

通常は3日から1週間ほど抗菌薬を飲むと改善していくことが大半です。

ちなみに、膀胱炎に効く市販のお薬は、漢方を主成分としたお薬があります。

例えば有名なのが、小林製薬さんが出しているボーコレンというもので、テレビCMも流れていますが、これは猪苓湯(ちょれいとう)という漢方薬が主のお薬です。

効果としては尿の排出を促して、炎症を早く治すというものですが、菌を殺すという効果は無いため、膀胱炎らしき症状が出た場合はやはり泌尿器科さんのお医者さんに行くのがベストです。

慢性膀胱炎の治療については、長期的な治療になり、通常よりも少ない量の抗菌薬を長期間使って、定期的に検査も行い、炎症が再発しないように注視していくという形になります。

腎盂腎炎については命に関わることもあり、入院して治療していくという場合もあります。

水分をこまめにとって雑菌を繁殖させない

膀胱炎の予防は、やはり尿の健康に大きく左右されるため、水分をこまめにとって尿をしっかりと排出するということが一番です。

1日2リットルの水分を、というのは有名かと思いますが、voicyでも度々お伝えしているように、これは食事から得る水分も含んでの事ですので、果物や野菜類から得られる水分も含めて、1日2リットルほどを目安に、と考えてください。

水分をしっかりと、こまめにとることで膀胱や尿道の菌が洗い流され、炎症を防ぐことにつながります。

そしてこれは、言い換えれば尿を長時間膀胱内に貯めない、ということでもあります。

尿が長時間貯まってしまうと、菌が繁殖しやすくなり、膀胱にも負担になるため、炎症が起こるリスクが高まりますので、尿意を催したら長時間我慢することはせずに、出来る限り早めに排出するようにしてください。

そして特に女性は、トイレで尿を排出した後、前から後ろに拭いて性器を清潔に保つのも、膀胱炎予防の一つになります。

また、男女問わず、通気性の良い下着や、刺激にならない素材のものにするのも、細菌の繁殖を防げるため、結果として膀胱炎の予防になりますので、心当たりがあれば下着を変えてみるのも手です。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属