夏の食中毒に注意!#726

食中毒にも充分に注意を

夏には必ず、熱中症について取り上げますが、熱中症と併せて注意したいのが食中毒です。

食中毒は年中起きる可能性がありますが、やはり温度が高くなる夏場に増えてきます。

これは、食中毒を起こす細菌が30℃から40℃で最も増えやすくなるためです。

冬場の食中毒はノロウイルスが代表的なように、ウイルスのものが多いですが、夏場はウイルスではなく細菌が繁殖しやすく、高温多湿の環境になる今の時期が最もリスクが高まる季節になります。

症状は重い嘔吐や発熱が主ですが、重症化すると入院が必要になるなど、重大な事態になる恐れもあります。

熱中症と併せて、食中毒にも気を付けて行ってください。

代表的な食中毒の細菌

日本で主に確認される食中毒を引き起こす細菌は、サルモネラ菌、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、O-157、アニサキスです。

簡単に説明していくと、まずサルモネラ菌は卵に多く、加熱されていない鶏肉に多いのがカンピロバクター、人の手指に棲んでいて、手洗いが不十分な場合に感染する恐れがあるのが黄色ブドウ球菌、加熱が不十分な牛肉に多いのがO-157です。

最後のアニサキスは魚に多く、厳密に言うと虫の一種ですので夏に限ったものではありませんが、夏場に感染者が増えるという特徴があります。

特に、アニサキスは近年症例がどんどん増えているため、充分な注意が必要です。

食中毒の症状

これらの細菌による食中毒の症状としては、前述のように嘔吐と発熱、下痢が多いですが、黄色ブドウ球菌は熱があまり出なく、アニサキスは非常に激しい腹痛が起こるというのが特徴です。

食中毒で嘔吐や下痢が起こるのは、体が悪いものを排出しようとする働きをするためです。

ですので、症状が治まるということは体から出し切れたということになり、下痢止めや吐き気止めを使うということは体の中に細菌をずっと留めることになり症状がずっと続くことになります。

食中毒と思われる症状が出た際は、下痢止めや吐き気止めを使わず、水分補給をしながら安静にしてすべて出し切るようにしてください。

下痢や嘔吐をすると、水分と同時にミネラルも失われる上に普通の水分も受け付けなくなることがあるため、できれば経口補水液があると便利です。

嘔吐が激しく、普通にお水を飲むのが難しいときはペットボトルキャップ1杯分のお水を15分おきに飲んでいくのがおすすめです。

もしそれでもお水が飲めない場合は、病院で点滴によって水分補給をする必要があるので、早めに相談してみてください。

寝るときは仰向けではなく横向きに

症状が辛く、横になって安静にする際、姿勢は仰向けではなく横を向いて寝るようにしてください。

食中毒はいつ嘔吐するか分からず、突然嘔吐することがあるため、仰向けで寝ているとそのまま気管に詰まるということがあるため、横を向いて気管が詰まらない姿勢をとってください。

通常の成人であれば大丈夫そうですが、例えば高齢者やお子さん、乳幼児の場合は筋力が弱いため自力での寝返りが難しいため、もし食中毒が起こって寝る際は姿勢を変えてあげてください。

水分が取れない場合はもちろんですが、下痢が10日以上続いて食中毒の症状がずっと続いているような気がするとか、逆に半日以上尿が出ないというような場合は別の病の可能性があるため病院に行ってください。

また、胃痛が明らかにおかしいレベルで激しい場合や意識がもうろうとしている時は、危険ですのですぐに救急車を呼んでください。

ばい菌をつけない、増やさない、やっつける、の3原則

最後に食中毒の予防についてですが、3原則というものがあります。

ばい菌をつけない、増やさない、やっつけるという3つで、学校や病院などでも度々周知されているかと思います。

まず「つけない」というのは、手指の消毒はもちろん、調理の食材を洗うことや、生肉や生魚と生で食べる野菜を付けないことや、包丁やまな板をきちんと洗ったり、分けるといった対策のことです。

「増やさない」は調理したものを早く食べるとか、食べない場合は常温で放置せずにきちんと冷蔵庫や冷凍庫で保管することです。

最後のやっつけるは、加熱調理のことです。

カンピロバクターやO-157はもちろん、アニサキスも加熱をすることで死滅するため、やはり夏場は特に加熱調理をしっかりとして、食中毒予防をするのが望ましいです。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属