認知症の暴力行動に治療薬ってどんなの?#829

認知症の暴力行動への新薬が登場

先日、認知症用の新薬が誕生したというニュースが入りました。

認知症は主に高齢者にとって非常に厄介な病気で、文字通り認知に関する機能が著しく低下していくという病です。

以前、原因物質の一つとなるベータアミロイドタンパクを除去するというお薬が出た際も、取り上げたことがありますが、今回は中でも暴力的な行動に関して効果的なお薬が出ましたので、取り上げて行きたいと思います。

認知症の症状と仕組み

認知症とは、簡単に言うと脳の神経細胞が損傷していき、記憶や判断力、思考能力や認知能力が低下していくという病で、現在は65歳以上の方の7人に一人は認知症とされています。

いくつか種類がありますが、最もメジャーなのがアルツハイマー型認知症で、次に多いのがレビー小体型認知症です。

アルツハイマー型は物忘れや人の顔が分からなくなる症状が多く、レビー小体型は無い物が見えてしまう幻視や幻聴、歩くのが難しくなると言った症状が主です。

認知症になると性格が変わって行くというのは、主に前頭側頭型認知症というタイプで、性格が変わったり、一般的な理性的な行動がとれなくなるといったことが起こります。

また脳の血管が詰まることで起きた、血管性認知症というものもあります。

今回、新薬が出たのはアルツハイマー型認知症での暴力行動に効果のあるお薬です。

うつや統合失調症のお薬が認知症患者のストレスを和らげる

これは性格が変わったというよりも、認知症を発症した患者さんが、認知症による強いストレスや不安を感じたことで起こしたような、いわば八つ当たりの行為や、自傷行為といったものが該当します。

当然、個人差があるため一概には言えませんが、例えば大声を出したり、強くイライラしたりといったことがあります。

今回出たお薬は、抗精神病薬という主に精神科で処方されるレキサルティというお薬で、脳よりもメンタルに作用するという特徴があります。

すでに海外では使用がされており、日本で治験が完了した段階ですので、年内には承認となる可能性があります。

うつや統合失調症用のお薬として、精神的な起伏を抑えて落ち着けるようにしたのがお薬ですので、厳密には治療薬ではありませんが、症状を緩和させるという意味ではとても役に立つかと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属