鉄欠乏だけじゃない?貧血の予防と対策は?#791

意外と知らない貧血のこと

最近、貧血の患者さんが連続して来られたことがあります。

ふと思い返してみると、実は意外にも、貧血そのものについて取り上げたことがありませんでしたので、今回は貧血という症状について、詳しくまとめて行きます。

そして今回から数回ほど、医療用語でコモンディジーズと言う、よくある病気について、詳しくご紹介していきたいと思いますので、是非ご覧いただければ幸いです。

貧血という症状

貧血とは、文字通り血液が貧しく、乏しい状態になることです。

血液とは、赤血球やヘモグロビンと言ったもので、酸素や栄養を運ぶのが主な役割になります。

例えば、ヘモグロビンの中には、酸素を入れてため込む部分があります。

その部分に鉄分が必要ですので、鉄分が不足することで、ヘモグロビンの働きが悪くなり、体の中に酸素が行き渡らなくなり、貧血の症状が起こります。

それ以外にも様々な仕組みで貧血が起こることがあり、前述のものは一般的な鉄欠乏性貧血になります。

他には、ビタミンB12や葉酸不足によって起こる悪性貧血や、何らかの理由で赤血球が早く壊れてしまい、体内での生成が追い付かずに貧血になってしまう溶血性貧血、骨髄の機能の不調によって起こる再生不良性貧血、腎機能障害によって起こる腎性貧血などが挙げられます。

また、女性であれば月経や妊娠によって、血液そのものが損失することが多く、慢性的に鉄分などの栄養が不足してしまい、貧血を起こしやすくなるとも言えます。

貧血の症状は、例えば疲労や息切れ、集中力が低下したり、心臓の働く量も増えるため負担が上がり、心不全のリスクを高めることにもなります。

貧血の種類

前述の貧血の種類について、一つずつ簡単にまとめていくと、まず鉄欠乏性貧血は、文字通り鉄が不足していることで起こる貧血です。

これは単純に、鉄分の摂取量が少ないか、もしくは鉄分の吸収が上手く行っていないかの2パターンがあります。

次に悪性貧血は、ビタミンB12や葉酸が不足することで、正常な赤血球が作れないという状態で起こる貧血です。

通常、現代人の食事でビタミンB12や葉酸が不足ことはまず無く、吸収の機能が何らかの原因で衰えることで起こります。

溶血性貧血は、内出血のような怪我もそうですが、例えば自己免疫疾患によって、免疫細胞が体内の赤血球を攻撃してしまうことで赤血球が不足するということもあります。

再生不良性貧血は、骨髄の問題によって起こる貧血ですので、赤血球だけではなく白血球も不足する状態になります。

最後の腎性貧血は、文字通り腎臓の機能の低下によって起こる貧血で、直接の原因としては腎臓に赤血球の生成を促す物質があるためです。

その物質の機能が低下することで、赤血球の量が減り、貧血となります。

栄養をきちんと取ること

貧血の解消と予防は、とにかく栄養をきちんと取ることに尽きます。

貧血と一言に行っても遺伝的な問題や重大な病によることもあるため、一概には言えませんが、まず出来ることとしては栄養補給になります。

前述の鉄分やビタミンB12、葉酸と言ったものはやはり欠かせません。

具体的には赤身のお肉やお魚、レバー、豆類、ホウレンソウと言ったものには鉄分が多く、葉酸は緑黄色野菜全般に含まれています。

ポイントになるのが、カフェインは鉄の吸収を妨げる恐れがあるため、もし心当たりがあれば避けるのも手です。

次に大切なのが運動で、運動をすることで血流が良くなり、代謝が進むため結果として貧血の予防につながります。

ただ、こうしたことはあくまでも一般的な、鉄欠乏性貧血の解消で、前述したそのほかの原因によって起こっている貧血は、きちんと治療しないと改善するのは非常に難しいです。

特に、原因をきちんと突き詰めて、それに合わせた治療をしないと、改善が見られないということです。

これは医療現場でも実際に起こっており、鉄分をどれだけ補給しても貧血が治らないということはよくありますので、不安なことがあれば相談してみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属