貼り薬ってどんな風に効くの?【リスナーからの質問】#678

「貼るだけ」で効果が得られる貼り薬

今回も頂いたコメントから取り上げていきたいと思います。

メノエイドコンビパッチというパッチタイプの貼り薬を処方されている方で、自分で効いている感覚は無いものの効果は出ているため使い続けていますが、実際どういう仕組みで体に入っているのか?、といただきました。

voicyでも痛み止めなどの回で度々、湿布などのような貼り薬が登場していますが、実は貼り薬は技術の発展が著しいお薬で、非常に画期的な進化を遂げている薬の一つです。

今回はこの「貼り薬」というものについて、詳しく掘り下げていきたいと思います。

温める・冷やすのが始まり

貼り薬の原点となるのは、痛みのある場所を温めたり、冷やしたりするという処置です。

現在確認されているのは、古代ヨーロッパで行われていた民間療法が始まりで、それから江戸時代にお医者さんとして知られるシーボルトという方が、日本に持ってきたとされています。

単に患部に貼って、冷やしたり温めたりと言った効果を得るのが貼り薬ということですが、こうしたお薬は江戸時代ごろまでは無かったということです。

ちなみに、実は今でも、単に温めて血流を良くしたり、冷やして炎症を抑えるというだけで、お薬の成分が入っていない湿布が存在しており、接骨院では今でもたまに用いられることがあります。

それが進化して、炎症を抑える成分を入れるなどの改良が行われ、現在の湿布となりました。

voicyでも度々お伝えしていますが、現代の冷湿布や温湿布は、直接温めたり冷やしたりする効果は無く、冷たく感じる成分や熱く感じる成分が入っているだけで、実際に患部が冷えたり温まったりすることはありません。

あくまでも実感するだけで、痛みがとれるのは痛み止めの成分が皮膚の中に入っていき、炎症を抑えてくれるためです。

様々な効果があるパッチタイプの貼り薬

貼り薬は痛み止め以外にも様々あり、今回コメントで頂いたメディエイドコンビパッチというお薬は女性ホルモンのお薬だったり、胸に貼って喘息の発作を抑えたり狭心症に効果があるお薬も、貼り薬の一つとなります。

また禁煙治療に使われるニコチンパッチや、さらにパーキンソン病や認知症の方はお薬を継続して飲むのが難しいことから、貼り薬タイプの治療薬も登場してきています。

皮膚から血管までお薬が入っていく

当然と言えば当然ですが、どんなタイプの貼り薬も、皮膚から血管までお薬の成分が入っていき、効果が出てきます。

ただ、そのためには非常に厳重なバリアをくぐる必要があります。

皮膚は一番表面にあって外気に触れたり、指で触れられるのが角質と言う部分で、その下が表皮、さらにその下に分厚いのが真皮と、3つの層で構成されています。

真皮の下に血管や神経が通っているため、角質から真皮の下までお薬が入る必要があります。

これを実現させるのは相当難しかったと言われていますが、そもそもよく考えたら痛み止めを血管内に入れるのなら飲み薬で良いのでは、と思われるかもしれません。

貼り薬には様々なメリットがあり、例えば肝臓を経由せずにお薬を効かせられるのは、貼り薬の非常に大きな利点となります。

貼り薬が便利な理由

貼り薬のメリットは、まず飲まないため胃腸に負担がかかりにくく、飲み込む力も必要が無いという点があります。貼り薬が無ければ、チューブで粉状にしたお薬を鼻から入れるなどの処置が必要ですが、身体的にも負担になり、またコストもかさみます。

そして、お薬は腸で吸収されたのちに肝臓を通って、そこから必要な場所へ行き渡りますが、この時はいわば検査を受けているような感じで、お薬がある意味ろ過される形になり、成分の一部がわずかに除去されることがあります。

貼り薬は皮膚から直接体内、血管内に入っていくため、お薬の成分がくまなく吸収され、効いていくことになるのです。

また貼り薬はゆっくりと体の中に入るように調整されており、効果が長く続くものが大半なのも特徴です。

貼り薬は1日1回貼れば24時間効いて、次の日に貼りかえれば大丈夫なものが多いですが、飲み薬は1日3回飲む必要があるものがほとんどで、飲み忘れる可能性も充分出てきます。

ですので高齢者や認知症の方などで、薬の飲み忘れが多い場合には、同じような効果のある貼り薬を使うことで、大幅に防ぐことができます。万一副作用が起きた場合も、その薬をはがせば効果が消えるため対処も素早くできます。

お肌の弱い人には使いにくい

貼り薬の、唯一にして最大のデメリットが、「かぶれる」という点です。

やはり、皮膚が弱い人の場合は使うことができず、位置的にも使えない部分はあるため、全てに使えるということはありません。

また、同じ箇所に貼り続けると皮膚が弱くなってかぶれてくるため、貼る場所は毎日ずらすなどの対策が必要な上に、一部のお薬ではお風呂上りの温度が高い時に貼ると薬が一気に吸収されてしまい、何らかの副作用が起きる可能性があるため、お風呂上りのタイミングでは貼れないというものもあります。

お肌が弱い方には使いにくいですが、種類もたくさんあり非常に便利ですので、もし飲み薬が難しいという時には検討してみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属