おせち料理は健康に良いの?#673

おせち料理は健康にどう影響するのか

中身に差はあれど、日本全国どの地域でもお正月に食べられるのが「おせち」です。

「おせち」とは、漢字で書くと「お節」となりますが、これは元は「節句(せっく)」のお供え料理である「御節供(おせちく)」が始まりとされています。

ですので、年始のお正月だけではなく、端午の節句や桃の節句、さらに七夕の節句など、日本の暦で節目となるタイミングで供えられる料理全般が「おせち」となります。

御節供から今の「おせち」と呼ばれるようになったのは江戸時代の中期以降で、このころから正月限定の料理の名前として定着されたようで、現在に至ります。

お正月は神様が家にやってくる時期で、その期間は火や水を使わず、煮炊きや洗濯を控えて物静かに出迎えるというのが由来で、元日からの三が日は日持ちする保存食を作ってそれを食べる、という風習から来ているそうです。

見方を変えれば、3日間誰も炊事や家事をせずに、全員がゆっくり休むための策という風にも見えます。

今回はお正月料理の「おせち」が実際に健康にどう役立つか、どういう影響をするかについて、少しまとめてみたいと思います。

おせち料理の意味

おせちは保存食であるのと同時に、一年の縁起を担ぐ意味もあることは有名だと思います。

今回は中でも代表的な、栗きんとん、昆布巻き、数の子、田作り、黒豆の5つについてご紹介していきます。

まず、栗きんとんですが、個人的にもおせち料理の中でも凄く好きなもので、もはやおせちと言えば栗きんとんというレベルで代表格になっています。

栗きんとんは、見た目から財宝に例えられており、一年豊かな生活を送れるようにという願いが込められています。栗きんとんはサツマイモで出来ているため、サツマイモのビタミンCや食物繊維が豊富に、余すところなくとれため健康には非常に良いです。

次の昆布巻きですが、「喜ぶ」が変化して、縁起の良いタイミングやお祝い、おめでたい席では欠かせない一品料理になってます。

こちらも海藻となる昆布に含まれる豊富な栄養が摂れ、ミネラルや食物繊維はもちろん、昆布にはアルギン酸という成分が特に多く、悪玉コレステロールを減らしたり血圧を下げる働きが期待できます。

次の数の子は、魚卵ということで子宝や子孫繁栄の願いが込められています。

そして数の子は魚卵でありながらもプリン体が少ない上にDHAやEPAが多く、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らしたり、血液をさらさらにする効果があります。

次に田作りですが、ごまめとも呼ばれており、「五万米」とあてられることもあるほど、五穀豊穣の願いを込めて食べることがあります。

田作りは乾燥させたカタクチイワシの稚魚、小魚を佃煮のように調理したもので、カルシウムやビタミンDが非常に豊富です。

最後の黒豆は文字通り黒い豆で、種類としては大豆の一つになり、タンパク質はもちろん、イソフラボンという成分が多いです。

イソフラボンは特に女性にとって非常に有効な成分で、お肌の調子を整えるとか、骨粗しょう症予防になるとか、特に年配の方には是非意識してとって欲しい成分です。

ちなみに、お正月のお酒に「お屠蘇(おとそ)」というものがあると思いますが、お屠蘇は元々は邪気を払って魂を蘇らせるという意味が込められています。

本来のお屠蘇とは「屠蘇散(とそさん)」という生薬を配合した漢方薬みたいなものを、日本酒やみりんといったアルコールに漬け込んだもので、これを飲むことで胃腸の調子を整えたり、血行を良くして健康にするという意味があります。

野菜を追加する

おせち料理は発酵食品等もあり、基本的にはどれも健康に良いですが、一つだけ注意が必要なのが、野菜が少ないという点です。

なますや筑前煮のような煮物はありますが、それを除くと野菜量がかなり少なくなるため、出来ればサラダのような生野菜を追加すると、なお良いです。

また、おせち料理は保存食としての意味もあるため、塩分糖分が多めに作られているものもいくつかあります。

ですので3日間おせち料理を食べると、塩分や糖分を摂り過ぎる恐れがあります。

それと同時に、おせち料理を食べ終わって普通の食生活に戻ったとき、味付けが物足りなくなって味が濃くなっていったり、満腹感が得られにくくなって食べ過ぎるという可能性も出てきます。

さらにこれに寝正月のようなお正月の過ごし方等の問題も重なると、食生活と生活リズムが大きく乱れ、生活習慣病が悪化するという事にもなりかねません。

ですので、お正月明けはきちんと意識して、料理の味付けが濃くならないように注意してください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属