肝臓の働きと肝機能の検査値は?【リスナーからの質問】#662

肝機能の数字の意味

先日コメントにて、「健康診断の結果を眺めてたら、γ-GTPの数字が悪く、昨年のAからCになった」というものをいただきました。

肝臓についてはvoicyでも何度か取り上げていますが、今回は健康診断で出てくる「γ-GTP」という数字について、肝機能のおさらいもしつつ、まとめて行きたいと思います

肝臓の機能を表す数値

γ-GTPは、簡単に言うと肝機能を表す数値の事です。

肝臓の働きは、凄く簡単に言うと、胃や腸で吸収された栄養素を、使いやすい形に変えて一時的に貯蔵したり、アルコールやお薬を分解して実際に使えるようにするとか、タンパク質や脂肪を吸収しやすくする胆汁を作る、といったことがあります。

肝臓について、詳しくは259回でお話ししておりますので、そちらも参考にしていただければ幸いです。

そして健康診断の際、この肝臓がどういう風に働いているか、どういう負担がかかっているかを示す数値となるのが、ALT、AST、そしてγ-GTPです。

ASTは一昔前ではGOT、ALTはGTPと呼ばれていたこともあるため、今でもたまにその名残でカッコ書きで併記されていることがあると思います。

これらの数字は肝臓に何らかの異変があると、高くなってきます。

ただ、数値が上がって来たからといってすぐに注意したり何かをしなければならない、ということはありません。

肝臓の機能や働き方は様々あるため、数字が上がったからといって、実際に肝臓がどういう状態になっているかは不明なのです。

言ってしまえば、健康診断で正常値を少し超える程度のことは、あまり珍しくないのです。

さらに、正常値より少し高い程度でキープしていても、その原因が分かっていれば問題とならないことも多いため、お医者さんもひとまず様子を見ましょうというだけで、特に処置をしない事もあります。

問題なのは、心当たりもなく急激に数字が上がったりした場合で、それはいわゆる「異常値」となり、精密検査の対象となって、詳しく原因を探っていきます。

今回のコメントの方は、AからCまで突然変化して再検査となったようです。

再検査の結果特に問題ないこともありますが、実際に肝臓で何が起こっているかは数字を見るだけではわからないため、やはり受ける方が良いと言えます。

沈黙の臓器といわれる所以

肝臓はしばしば「沈黙の臓器」と言われますが、これは肝臓に異常があっても、それによって痛みが出たりだるくなることがあまりないためです。

病が深刻な状態まで進行してようやく、原因不明の微熱や黄疸、だるさや眠気と言った症状になって現れます。

こうした症状は先述の数値が急激に悪くなることでも起きますが、ゆっくりと徐々に数値が上がる事のほうが多く、その場合は症状が起きづらいため、やはり定期的な検査や、気になったことがあれば再検査、精密検査をするのが安全です。

肝臓に異常をきたす原因はいくつかあり、それは数値の種類の違いによってある程度判断できます。

例えば、ASTとALTが高い場合はB型肝炎とC型肝炎ウイルスによる肝炎が起きているとか、γ-GTPが高い場合は主にアルコールの影響が強いことが多いです。

これはあくまでも、傾向があるという程度で、いわゆる胆石や脂肪肝によって上がることもある上に、非アルコール性脂肪肝という病もあり、一概にアルコールや肝炎ウイルスのせいとは、数値だけで断言することはできません。

健康診断を担当したお医者さんは肝臓の数字だけではなく、他の種類の数値との関連がどうなっているかを見たり、その患者さんの持病や症状、生活習慣等も考慮して、肝臓で何が起こっているかを推測するのです。

ちなみに、肝臓の数値が急激に上がるのは非常に危険なことで、急性肝炎と言い、すぐに緊急入院となるケースがほとんどです。

なかなか急性肝炎になることは無いですが、疲労が溜まったりして肝臓の働きが著しく落ちると起こるため、休肝日を設けるとか、疲れを溜め込まないようにして、対策していってください。

一か月ほど断酒すると言う手も

今回取り上げるきっかけとなった「γ-GTP」ですが、前述したようにγ-GTPが高くなるのはアルコールが原因であることがほとんどですので、まずはお酒の量を減らして、休肝日を設けてください。

継続して数字が高めになっている場合は、断続的な休肝日ではなく、1か月ほど継続してお酒を辞めるというのも良い休養になります。

もし、お酒を飲んでいないのにγ-GTPが高い場合は、脂肪肝の可能性が高いため、溜まった中性脂肪を減らしていく必要があります。

中性脂肪というと、脂ものを控えるのが一番のように思えますが、中性脂肪の大きな原因は脂ものよりも炭水化物や糖質で、それらの物質が体内で中性脂肪となって蓄えられてしまうため、食事に気を付ける場合はどちらかというと炭水化物、糖質を控えるようにするのが最善です。

そしてやはり、運動も大切です。

体内にすでにある脂肪を減らしていく必要があるため、少しでも大丈夫ですので体を動かす習慣を増やして、脂肪を燃やして行ってください。

一駅分歩くとか、階段を使う頻度を上げる、万歩計を付けて歩数を記録してみるなど、わずかにでもいいので運動の機会を増やして、意識して運動していくと、効率良く脂肪が減って行きますので試してみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属