天気痛!なんで台風が近づくと調子が悪くなるの?#649

9月も後半になり、今年も秋の連休となるシルバーウィークが終わりました。

今年のシルバーウィークを直撃したのが、台風です。

九州地方を直撃した台風14号を始めとして、いくつかの台風が連発し全国的にも天気が悪い日々が続きました。

同時に、当薬局なくすりーなでも、妙に不調を訴える方が何人か見受けられ、いわゆる「天気痛」の患者さんが増加したタイミングでもありました。

今回はこの台風にも関連して、今一度「天気痛」についてまとめていきたいと思います。

天気が悪いことで引き起こされる症状

しばしば「古傷が痛む」という表現を目にすることがあると思います。

昔負った病や怪我の痛みが、様々な要因で再びやってくる、ということですが、意外と多いのが「雨が降ると痛みが出る」ということです。

例えば偏頭痛や、交通事故などの後遺症で、むち打ちの痛みが天気の悪さとともに定期的にやってくるとか、慢性的なリウマチの痛みがくるなどです。

また、めまいやぜんそくの発作など、痛み以外の症状も、雨が降ると起きる、ということがあります。

これらはいずれも、一言でまとめると「自律神経の乱れ」で起きている症状、と言えます。

気圧の変動や気温の変動によって、自律神経が乱れてしまい、様々な症状が起きる、というものです。

実際に天気痛を証明するための実験が以前行われており、天気痛と思われる症状がある方を、気圧をコントロールできる部屋に入れ、およそ15分かけて気圧を40hPa下げました。

40hPaというのは、簡単に言えばそこそこ大きめの台風が来たぐらいの気圧変動です。

40hPa下げたまましばらく置き、再度15分ほどかけて気圧をもとに戻し、いわば台風が過ぎ去ったような環境にします。

この実験の中で、最も痛みなどの症状が出たのが、序盤の気圧が下がり始めたタイミングです。

下げ始めた時が症状のピークで、40hPa下がってしばらく過ごしている間は、症状が落ち着いたのです。

ですので天気痛は天気が良かったところから崩れ始めたタイミングで強まり、天気が悪くなってからは落ち着くという傾向にある、ということがわかったのです。

曇り空や、雨が降りそうと思えるタイミングで「古傷が痛む」感じがするのは、確かに気圧が変動している最中にあるためです。

気圧や温度の変動が自律神経に影響する理由

具体的に、なぜ気圧や温度が変動することが、体の自律神経に影響が出るか、ということですが、この原因はいくつかはわかっており、まずヒスタミンという物質が関連してきます。

ヒスタミンというと炎症を引き起こす原因の物質ですが、自分が過ごしているところの気温が下がると、このヒスタミンが分泌されてしまい、痛みが出るのです。

そしてもう一つ、気圧が下がると体内の血液の環境が悪くなる、というのもわかっています。

気圧が下がることで体内の水分の巡りに影響が出て、「むくんだ」状態になります。

むくみというと水や老廃物が不必要にたまってしまうことですが、水がたまるまではいかずとも、気圧が下がることでわずかながら流れが滞り、全身がむくむような状態になります。

その結果、水分などがたまって膨らんだ部分が神経などにあたり、痛みなどの症状となって現れます。

さらにもう一つ、痛みが出る原因の一つとして、耳の中にある気圧のセンサーに影響が出ているという説もあります。

気圧が下がると、自律神経の交感神経という、車のアクセルのような、活動を活発にさせる神経が働きます。

そのとき、ノルアドレナリンという物質が出て、血管を締めるような働きをします。

この刺激によって神経が刺激されて痛みが出ている、という説です。

自律神経の乱れは様々な原因があり、個人差もあるため一概には言えませんが、天気が悪くなることで起こる症状の原因としては、こうしたものが挙げられます。

自律神経を整えることの難しさ

天気痛対策としては、「自律神経が乱れないように普段から整える」ことが大切です。

ただ、自律神経は自分で動かせる神経ではありません。

指や足の動きをつかさどる神経は、脳からの指令により動けるため、自力で動かすことは可能ですが、自律神経というものはそうしたことはできません。

例えば、しっかり眠ろうとか、リラックスしようと強く思っても全く眠れず、リラックスできないことはよくあることで、むしろそう考えるほどに眠れなくなることの方が多いはずです。

自律神経はそうした神経ですので、自らの意志で整えることはできません。

もし、すでに痛みが出ている場合の応急処置としては、痛んでいる部分をゆっくりストレッチしたり、揉んでみると血流が良くなったりむくみが取れていき、改善する可能性があります。

それ以外だと、普段からなるべく、シャワーではなくお風呂に入って体を温め、血行を良くしておくことで気圧の変化にも対応しやすくしておくのも一つです。

あとはやはり、基本的なことになりますがストレスへの対策も重要です。

特に天気痛においては、天気が悪くなることで気持ちが沈むのも要因の一つですので、しっかりとケアするのがおすすめです。

好きなことをするのが一番ですが、個人的に眠れない方に対しておすすめなのが、起きた時にやることを、寝る前に決めておくことです。

朝ごはんの一品を決めてから寝るとか、朝起きた時に一番にかける音楽を決めるなど、些細な事で構いませんので、起きた時の楽しみを一つ作ると、その日を気分よく始められるためとてもおすすめです。

最後にお薬についてですが、めまいのためのお薬としては「メリスロン」や「セファドール」があり、トラベルミンという車酔い用のお薬がめまいに効果的です。

あと自律神経においては漢方薬も様々あり、例えば体内の水分の流れが悪くなってむくみが出るときには、「五苓散(ごれいさん)」という漢方で、体の中の余分な水分を排出することができます。

自律神経への対策はかなり難しいところもありますが、是非日ごろから意識して、整えていきましょう。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属