オミクロン株の後遺症は?現段階での治療はどうなっている?#643

covid-19の後遺症の最新情報

今回は久々にcovid-19のお話です。

少し前の配信で、お盆明けごろに再度感染者が増加に転ずるかもという見立てをしましたが、現状は徐々に感染者数が減ってきており、今年夏はひとまずピークアウトしたと言えそうな状況にあります。

今年はオミクロン株による感染者が日本でも急増し、それに伴って後遺症とみられる症状に襲われる患者さんも増えてきました。

今回は国内でも情報が集まってきた、covid-19の後遺症の最新情報について、まとめていきます。

後遺症の定義

まず簡単に、後遺症の定義についておさらいすると、covid-19に感染、発症から3か月以内に起き、それが少なくとも2か月以上継続して発症して、ほかの病気とは説明がつかない症状、というのがcovid-19による後遺症、と定義されています。

これは現在のデータでは感染した人のおよそ3分の1の割合で現れています。

ちなみに、オミクロン株だからと言って特別割合が増えたということはなく、当初から特に変わっていません。

後遺症は基本的には時間経過とともに回復していく傾向ですが、後遺症が発症した方のうち1割ほどの方は、発症から1年が経過しても改善しないということがわかっています。

そして、covid-19の後遺症によって、仕事などの日常生活が出る、というケースも実際に起こっています。

例えば感染者数が当初から非常に多かったアメリカでは、後遺症によって働き手がいない、労働者不足も一部で起こっており、18歳から65歳までのアメリカ人の人口のうち1600万人が何らかの後遺症を抱えているとされています。

さらにそのうち200万人から400万人の方が、後遺症によってこれまでの仕事を続けることができなくなった、と推定されています。

アメリカの人口は3億5000万人ほどですので、単純計算で全体の5%弱ほどの方が、covid-19によって後遺症を抱えていることになります。

オミクロン株の後遺症

後遺症は大半のケースでは、感染から1か月以内に後遺症の症状が出ますが、2割ほどの方は感染してから1か月ほど経過してから発症することもあります。

ですので、covid-19の症状が一通り治って回復したのに、1か月ほど経ってから突然体調が悪くなる、何らかの不具合が起きるということもあります。

オミクロン株に感染した後に起きる後遺症としては、だるさと咳があります。

オミクロン株による、だるさと咳の後遺症は、これまでのアルファ株やデルタ株といったものによる後遺症よりも、10%から20%ほど多く確認されており、逆に味覚障害や嗅覚障害といった症状は少ないことがわかっています。

以前は味覚や匂いが元に戻らない、というのが有名でしたが、オミクロン株ではその症状が少ないということです。

そのほかだと、以前も取り上げた「ブレインフォグ」という、明らかにわかるはずのことも分からなくなる症状もあります。

例えば毎日の通勤通学時、毎日同じルートで同じ駅で降りるのに突然わからなくなったり、一桁の足し算引き算に違和感を覚え、解き方がわからなくなってつまづくというような症状です。

後遺症の治療法

後遺症の治療法についてですが、まずcovid-19の後遺症で最も多い「だるさ」ですが、これは多くの場合では鼻とほどの間あたりが炎症を起こしているとされています。

この炎症の場合は、Bスポット療法という方法が効いたという事例があります。

怪しい治療法と言われ、あまり注目されていませんでしたが、最近ではこのcovid-19の後遺症に対して使ってみると改善が見られたという報告があり、今後エビデンス化されていく可能性があります。

ほかには、呼吸のリハビリや酸素カプセルのような高圧酸素療法などで、炎症を鎮めていくという治療もあります。

また、鉄分不足によってだるさが出ているということもあるため、血液検査をして確認する場合もあります。

ちなみにだるさには漢方薬も一通り効果があります。

だるさと同時に冷えがあるケースでは、年齢が30代までの方は「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」、40代以降だと「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」の方が効きやすいとされています。

気分の落ち込みに関しては、ストレスも多いため無理せずに安静にするのが一番の解決になります。お薬でいうとやはり漢方薬が便利です。

「加味逍遥散(かみしょうようさん)」、「加味帰脾湯(かみきひとう)」、「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」などは精神的な症状に効果があります。

ただ、いずれにしても無理せずに、安静にして徐々に元に戻していくのが確実です。

最後にブレインフォグ、思考力の低下の症状は、かなり難しいところで一概にどれが効果がある、ということはまだ現状では不透明です。

一部では、最初のBスポット療法や呼吸リハビリ、高圧酸素療法で改善が見られたとか、血液の流れを良くして脳へ栄養をしっかりと送れるようにする薬を使うなどもありますが、まだ研究の余地があり、100%改善効果がある、と言える治療法はまだありません。

不安な時は後遺症外来へ

最後に、covid-19に感染したのちに何らかの症状が起き、後遺症かも、と思われるときはすぐに後遺症外来で相談してみてください。

後遺症は放っておいて発症の期間が長いほど治りづらく、悪化していきます。

感染してから思考力がおかしいと思った時はもちろんですが、妙にだるさが抜けない、体調はいいのに咳は治らないというようなときは早めに相談して、対処していくのをおすすめします。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属