質問よりっ!ドラッグストアの抗原検査は正確なの?#540

Voicy更新しましたっ!

今回は頂いたコメントから、市販されている抗原検査キットにまつわるお話

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市販されている「抗原検査薬」の効果

先日コメントにて、「ドラッグストアなどで売ってる、市販のコロナウイルス抗原検査薬の信頼性はどれぐらいなのでしょうか。」というものをいただきました。

PCR検査と並んで、抗体検査や抗原検査という言葉を耳にすると思いますが、今回はこの「抗原検査」について詳しくお伝えしていきます。

PCR検査はもちろんですが、抗体検査と抗原検査もそれぞれ種類が異なります。

ウイルスの抗体が入っている検査キット

コメントで頂いた「ウイルスの抗体が入っている検査キット」のことです。

前々回でウイルスの仕組みについて少し触れましたが、キットの中にウイルスの抗体が入っていますので、自分の体液をキットに入れたとき、体液の中にウイルスがあれば、その抗体にくっついて陽性となります。

くっつかなければ体液の中にウイルスはありませんので陰性となります。

これが抗原検査の仕組みです。

方法はインフルエンザの検査と同じで、鼻の奥の粘膜からとって検査するという流れで、およそ20分程度で陽性か陰性化が分かります。

抗原検査の最大のメリットは、covid-19であっても、インフルエンザの検査と同じレベルで非常に短時間で、普通のクリニックや診療所にある綿棒で簡単にできるという点です。

ただ逆に言えば、PCR検査に比べると、ウイルスを検出する精度が落ちるというのがデメリットになります。

単純に、検体の中にウイルスが含まれていなければ、もしくはウイルスの量が少なければ、見逃す可能性が出てきます。

以前の配信で、インフルエンザの検査は発熱してから12時間ぐらい経って、体内に充分にウイルスの量が無いと、検査結果が正確に出ないというお話をしましたが、covid-19も同様ですので、使うのが難しいタイプの検査と言えます。

ですので例えば、熱や咳の症状があって、息苦しさも感じるというときに、それがcovid-19に感染しているのかどうか、というのを確認するという使い方があります。

PCR検査の仕組み

一方、感染拡大当初から現在も行われている「PCR検査」とは、検査したいウイルス専用の薬液を用いて、ウイルスの遺伝子を大幅に増やします。

つまり、体内にあるウイルスが少なく、症状が出ていない状態であっても、感染しているかどうかを確認できるのです。当然、前項の抗原検査と比べると精度ははるかに高いのです。

逆にデメリットは、抗原検査では使わない特殊な検査機器や薬液が必要なため、街の小さなクリニック、診療所ではまずできません。

病院でPCR検査を行っているとしても、そこから別の場所にある検査センターに検体を送って検査をする、ということをしますので、時間が非常にかかるという点があります。

その分、無症状のうちから感染者を発見できるため、濃厚接触者の検査ができ、感染拡大を大きく食い止めることができます。これができるのはPCR検査のみです。

簡単にまとめると、抗原検査は症状が出たときにcovid-19かどうかがわかる検査、PCR検査は症状が無くてもcovid-19かどうかがわかる検査、と区別できます。

市販で売っている「抗原検査キット」について

以上を踏まえて、コメントにあった「市販の抗原検査薬」についてですが、市販されているのは「研究用」のキットです。

医療現場で実際に用いられているのは「診断用」と言い、れっきとした医療機器の一つとして、厚労省からの検査、承認制度のもとで用いられています。

しかし、一般向けに販売されているものは「研究用」と言い、いわゆる雑貨の一つで、具体的な検査精度などは求められておらず、医療機器としての認可はありません。

とにかく、検体の中にウイルスがいるかいないかが分かる、というのが市販の検査キットです。

そのキットが、どれほどのウイルスがいれば陽性なのか、陰性なのかということは、正確に決められていないのです。なので、市販の抗原検査キット、正直に言ってかなりの大きな問題と言えます。

精度が決まっていないため、例えばどういう方のどういう検体を入れても、陰性にしかならない検査キットも売られていることがありました。

また陰性と出ることで、当然ながら安心して他地域への往来をするきっかけとなり、感染拡大の一因となることも容易に想像できます。

さらに、現在では一応取り締まりが入っていますが、ネット上で売られているもので、全く根拠も何もないのに「厚労省認可」とか「唯一輸入が認められたキット」といった誇大広告がされていたキットもありました。

あくまでも「雑貨」でしかないという事実

ネットで販売されているものはともかく、実際にドラックストアや薬局で、「検査キット」というものが売られていて、実際にそれで陰性となったら、多かれ少なかれ安心すると思います。

精度もネットで売られているものよりはあるのかもしれませんが、最初に書いたように、抗原検査は基本的には症状が出て、ウイルスが体内で増えている状態でなければ、ほぼ意味がありません。

そういったものが市販されているのがそもそもの問題なのですが、危険な薬品等とは違うため、検査キットでも「雑貨」扱いであれば販売できるという現状があります。

ネット、実店舗問わず、市販されている抗原検査キットは意味が無いもの、と思っていただければ幸いです。

もし症状が無くて感染しているかどうかを知りたい場合は自治体が行うPCR検査を、もし症状があって抗原検査を受けたい場合は、お医者さんの診断のもとで行いますので、まずは病院や発熱外来のような窓口に相談してみてください。

重ねてになりますが、抗原検査そのものは、タイミングが若干難しいだけで充分有効な検査方法です。

ただ、市販の抗原検査キットで信用できるものは無いと思っていただければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属