その症状はもしかして?covid-19の後遺症とは?#541

Voicy更新しましたっ!

今回は徐々に正確な情報が集まってきた、covid-19の後遺症についてのお話

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東京都が「後遺症のパンフレット」を発行

以前、およそ1年ほど前の435回の配信で、covid-19の後遺症について触れました。

今回は、以前よりも正確な「後遺症」のデータを中心に、いくつか触れていきたいと思います。

先日東京都が発行した、後遺症に関する資料、パンフレットも踏まえつつ、お伝えしていきます。

 

治ってから3週間経っても体調が戻らないというケースが3割

都が発行しているパンフレットによると、covid-19が治ったと診断されてから3週間経っても体調が元に戻らない人の割合がフランスでは30%、アメリカでは35%で居る、と書かれています。

治ったという診断は国々で若干ずれがあり難しいところですが、基本的には症状が出てから2週間経ち、その人からウイルスが外に出なくなれば、いったんはcovid-19の治療は終了で、治ったということになります。

そこから徐々に体調が回復するはずですが、3週間経っても体調が以前のようにならない、ということがあるのです。

これは欧米のデータですが、おそらく3割という数字は日本でも同じほどになるかと思います。

このデータでは、男女差があり、女性が男性の1.5倍の割合で後遺症が出やすい、ということが書かれていますが、その原因についてはこのパンフレットには書かれていません。

次に、その後遺症が出たという人の中で、日常生活や仕事に何らかの支障が出るほどのレベルになったという方は、3人に2人、ということが分かりました。

つまりこの3割のうち、3人に2人は、感染前と同じ活動ができなくなり、休むことが増えたとか、最悪退職を余儀なくされたということです。

 

後遺症の期間

重要な、どれくらいの間、後遺症が続くかということについてですが、後遺症が出たと思われる方のうち半分ほどは1か月程度続いた、ということが分かっています。

そして残り5割のうち3割程度の方が、後遺症が3か月ほど続き、2割は半年以上となっており、もう治る見込みがないという方もいます。

以前から言われていた代表的なものが「肺線維症」というものです。

肺には肺胞という、小さな袋が集まっており、そこに外から取り入れた酸素を溜めます。

肺炎とは、この肺胞に炎症が起きた状態ですが、肺炎によってその袋が分厚くなってしまい、取り込める酸素の量が減ることがあります。

肺線維症は軽いものであれば治りますが、炎症が重かったり長引いたりといった事態になると、どんどん分厚くなってしまい、元の肺胞に戻らなくなる、ということがあるのです。

 

後遺症の症状

肺線維症の他にも、具体的な症状も徐々にわかってきていますが、現状は様々な国々、角度からのデータがあるのでここで一概にまとめるのはかなり難しいです。

今回はこの東京都が発行したパンフレットの内容をもとにお話ししますので、ご了承いただければと思います。

まず症状としても代表的な「においが無くなる」「味がわからなくなる」といったものですが、肺炎の症状が完全に治ってるのに、これだけは治らないということが良くあります。

またもう一つ、体のだるさ、重さといった倦怠感も同時にあります。

こういった症状がある方は、現在東京都が把握している限りでも3割ほどいる、と記されています。

そしてそのうち2割の方が、咳や息苦しさが以前のレベルまで治らず、わずかに熱がある微熱の状態がかなり長いという状態です。

例えば以前は問題なかったレベルの階段の上り下りや軽い運動でもすぐ息切れするようになった、といったものです。

そしてこちらも有名ですが、抜け毛が増えるという後遺症も確実に報告されています。

また、以前わずかに触れた心筋炎、筋膜炎が、covid-19にかかった後で起こるという例も確認されています。

 

頭の中に霧がかかる「ブレインフォグ」

以上はcovid-19の症状や後遺症として有名で、voicyでもこれまでも何度か触れていたものですが、最近covid-19の大きな後遺症として分かってきたのが「ブレインフォグ」というものです。

covid-19による何らかの後遺症が6週間以上続いている人のうち、8割の方がこのブレインフォグという症状がある、とされています。

ブレインフォグとは、文字通り脳に霧がかかったように、何も考えられなくなる、頭が回らなくなるという症状です。ただ、こう言われてもかなりイメージしにくいと思います。

ある方のケースでは、covid-19が治って職場復帰した際、普段通りの通勤ルートをたどって電車に乗ったところ、突然降りる駅が分からなくなって、頭にもやがかかったように考えが回らなくなった、というものです。

他には簡単な計算が急にできなくなる、突然集中力が落ちてミスをする、といった例もあります。

これは精神的なものではなく、普段は普通に考えられていることが、突然霧がかかったかのように、ふと考えられなくなる、というような症状です。

鼻の奥の部分でcovid-19による炎症が起きて、脳に何らかのダメージが加わった、という説がありますが、原因ははっきりとはわかっていません。

これはいわば、認知機能への影響となりますので、例えばこのダメージによって認知症になるのでは、と思われそうですが、若年層の場合では時間はかかるものの自然と戻っていくと考えられています。

ただし、50代以上の人だと、もしかしたらこの症状によって認知症のリスクが上がるのでは、とも言われますが、まだ確かなことはわかっていません。

ブレインフォグも前項の他の後遺症と同様、1か月程度で症状が無くなって元に戻ったという方もいれば、半年経っても戻らないという方もいます。

おそらく個人的には、時間はかかるかと思いますが最終的には回復する可能性が高いと思います。

 

covid-19の後遺症かも、と思ったら

現在、各地で「後遺症外来」といい、後遺症の相談窓口がある程度充実しています。

特にこのパンフレットを作製した東京都も特に力を入れているため、もしcovid-19に感染、発症して回復したという方で、何か体調が優れない点があれば、是非相談してみてください。

最後に後遺症とは、文字通りかかった後に残る症状ですので、かからないことが何よりも重要です。

可能であればきちんとワクチンを打って予防をする、難しい場合はできるだけ接触機会を減らすこと、マスクをする、人との距離をとる、こまめに手洗い消毒を徹底する、といった基本的なことを、今一度きちんと意識して、これからも続けて行きましょう。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属