オミクロン株対応ワクチンってどんなもの?#644

「オミクロン株」のワクチンが承認申請

最近、covid-19関連のニュースで大きい話題になっているのが「オミクロン株対応」のワクチンです。

早ければ今月9月中にも、オミクロン株対応ワクチンの承認申請がされ、流通から接種まで一層素早く行えるように動きが加速しています。

開発は従来のワクチンを手掛けてきたファイザー社とモデルナ社の2社で進んでいます。

今回はこのオミクロン株対応ワクチンについて、現時点での最新情報をいくつかご紹介していきたいと思います。

オミクロン株対応ワクチンと従来のワクチンの違い

まず、このオミクロン株対応ワクチンと従来型のワクチンの違いですが、オミクロン株対応ワクチンには2種類のウイルスのメッセンジャーRNAが入っています。

一つは従来の、一番最初のcovid-19の武漢株と呼ばれるもので、もう一つはオミクロン株のBA,1のメッセンジャーRNAが入っています。

ワクチンの仕組みは現在流通しているメッセンジャーRNAワクチンと同じで、詳しくは475回でも触れておりますが、簡単におさらいすると、ウイルスの表面についている「スパイク」というものだけを作る遺伝子を体内に入れます。

すると免疫はそのスパイクを異物と認識して、攻撃、対処していきます。

これがcovid-19のウイルスへの「免疫」となり、今後実際にウイルスが体内に入ったときに攻撃しやすい環境になります。

従来のワクチンは、最初の従来型のスパイクの遺伝子情報しか入っておらず、変異を繰り返して形が従来より大幅に変わったオミクロン株へは効果が非常に薄まっていました。

そこで、従来の株に加え、オミクロン株の遺伝子情報を追加したワクチンを開発して、ワクチンの効果の引き上げを狙ったのです。

これが現在開発中で、今後流通される見通しのオミクロン株対応ワクチンになります。

BA.4、5に効果があるのか

このオミクロン株対応ワクチンは、前述のようにオミクロン株のBA.1のメッセンジャーRNAが入っています。

日本も含め世界的に流行しているのは、BA.4やBA.5のオミクロン株ですが、それら用のワクチンはまだ時間がかかるため、日本政府としては早急にオミクロン株対応ワクチンを接種させるという目的のもと、BA.1用のワクチンの購入を進めています。

BA1用では、現在流行しているBA4や5へは効果が落ちると思われそうですが、現状の従来型にしか効果が無いワクチンと比べると、オミクロン株への抗体量は確実に多いことがわかっています。

つまり、現状のワクチンではBA.4、5も含め、オミクロン株への感染予防は期待できないというレベルですが、このBA.1用のワクチンは、BA.4、5への感染予防効果がある程度得られるレベルである可能性が高いということです。

まだ現状では試験中ですので、確実と言えるほどのデータは集まっておらず、同時に副反応についてもわからない部分が多いです。

ただ推測ですが、仕組みがほぼ変わっていない以上は、副反応については従来のとそれほど大きく変わることはないと思います。

4回目接種をするのか、オミクロン株対応ワクチンを待つのか

このオミクロン株対応ワクチンの流通に伴って問題になるのが、従来型ワクチンの4回目の接種をするのか、それともこのオミクロン株対応ワクチンの流通、接種開始を待つのかというものです。

これはかなり難しいところで、一人一人の生活環境やライフスタイルに合わせた選択になるかと思います。

現状、全国的にも感染者数はあまり低下しておらず、感染のリスクは引き続き高い状態にあると言えるため、重症化のリスクがある人はやはり、重症化予防の効果を引き上げるためにも4回目接種が始まった際には打つことをおすすめします。

ただし前項でも記載したように、現在のワクチンにはオミクロン株への感染予防効果はほぼない上に、最速で9月中にはオミクロン株対応ワクチンの接種が始まるという報道がされています。

そして現状では、4回目の従来のワクチンを打ってから、オミクロン株対応ワクチンが打てるまでの期間が決まっていないため、場合によってはオミクロン株対応ワクチンの接種が始まってるにもかかわらず、いつ打てるようになるか不明、という状態に陥る可能性もあります。

さらに最速で流通されるオミクロン株対応ワクチンは、前述のようにBA.1用ですので、BA.5への感染予防効果は言ってしまえば未知数です。

抗体量はあっても、実際にどれほどの感染予防効果があるのか、副反応はどうなのかは、確かなデータはほぼ集まっていないため、不安に思う部分も正直かなり多いと言えます。

個人的にも、データがほとんどそろっていない現状では、始まり次第すぐに打っていいのか心配なところもあります。

ですので、3回目接種の際と同じく、重症化リスクがある人であれば従来型のワクチンの接種、つまり4回目の接種をして、その後データが集まって効果が確認されてきた、オミクロン株対応ワクチンを打つというのが良いかと思います。

重症化リスクが低い方の場合は、医療従事者などでない場合はやはり、接種券が届くなど接種が開始されるまではあ3,4か月程度はかかるはずですので、その間に4回目接種ができれば、打つことをおすすめします。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属