体調不良、胃もたれで食べられない!消化に良い食べ方、食べ物とは?#641

消化という言葉の意味

先日、胃もたれや食欲不振の症状がある方との会話の中で「しばらく食べなければ良くなる」という話をしました。

少し前の腸疲労の中でも少し触れた「プチ断食」のように、少しの間食べないだけでも消化不良は改善されます。

今回は人間が生きる上で欠かせない働きの一つである「消化」について、詳しく掘り下げて行きたいと思います。

食べ物を分解するシステムのこと

人間は食べ物が体内に入ったとき、栄養として吸収するために様々な工程を経て分解していきます。

「消化」とは、その仕組みを指す言葉です。

消化にかかわるすべての臓器、管のことですので、例えば口から入って最初に通る「食道」、そして「胃」、胃の次に通る「小腸」、「大腸」、最後に栄養を吸収しきって残ったもの、消化できなかったものを排出する器官となる「肛門」、これらはすべて消化管と言います。

また、唾液腺や胃腺、腸線、そして消化に関連して働く肝臓や脾臓のことが「消化器系」となります。

消化管、消化器系を合わせたすべての臓器や管が「消化器」という分類になります。

口の中の唾液から消化が始まる

消化は、口の中に食べ物が入って噛んだ瞬間から、唾液によって始まります。

唾液は糖質、炭水化物を手始めに粗く分解します。

歯による咀嚼もあり、胃に入りやすい形になったところで、食道を通って胃に入ります。

そして、胃が実際に動いて食べ物と胃液を混ぜたり、動きによってより細かくする働きもします。

さらに胃の中の胃液と胃酸によって、特にたんぱく質を粗く分解します。

ちなみに胃酸は体の中でも非常に強い酸で、食道に逆流すると焼けてしまい危険なほどですが、胃酸が強い理由は食べ物の微生物を殺すためです。

体に不必要な、余分な微生物を胃酸によって一通り殺菌してから、十二指腸に送ります。

十二指腸とは脾臓が出す膵液、肝臓が作る胆のうから出す胆汁を使って、本格的に食べ物を分解していく器官となります。

糖質やたんぱく質、脂肪など体にとって重要なエネルギー源となる栄養をここで得ます。

十二指腸を経て、長い小腸へと入り、より細かく栄養を得ていきます。

小腸へ進む間に、十二指腸などから出た消化液と、細かくなった食べ物とが混ざり、小腸内の細かいヒダから吸収されていきます。

そこで吸収されなかったものが大腸へ行き、水分を得たり、大腸内にしかいない細菌を駆使してさらに分解吸収していきます。

同時に便を整え、肛門から排出されます。

これが人間の、消化吸収の仕組みになります。

「よく噛む」ことが最も「消化に良い」食べ方

この「消化」が最も効率よく、スムーズに進む食べ方ですが、これは一言で「よく嚙むこと」に尽きます。

極めてシンプルで真っ当なことですが、消化のプロセスの中で一番最初に行うことは、自分の意志で行う「噛む」という動作です。

体に必要な栄養素はすべて、細かくしなければ吸収されません。

唾液や胃酸や胆汁などの様々な液や細菌を使って分解しますが、最初からよく噛んで細かくしておけばその後のプロセスもどんどんうまく進むのです。

例えば唾液の次のステップで活躍する胃、胃酸も、最初から細かくなっていれば働きは最小限で済み、負担も減ります。

胃の負担が減れば当然、胃もたれの予防になります。

ポイントとしてはゆっくり噛むことが大切です。

噛むスピードがゆっくりになるということは、ゆっくり食べることに直結し、より一層胃腸の負担が軽減されます。

また、人間の体は満腹だと感じるまでにおよそ30分ほどはかかるため、食べるスピードが速ければ自然と食べる量が増えてしまい、胃腸の負担が増えたり肥満の原因になります。

ゆっくりと食べることで丁度いい量で満腹を感じるようになり、食べすぎを大きく防止できます。

よく噛んでゆっくり食べることと、もう一つ意識したいのが、食後はできるだけ動かずに体を休めることです。

消化をする際、消化管には様々な栄養や酸素が必要になり、血液が慌ただしく動きます。

その時に激しい運動をしてしまうと、筋肉の方にも血液が必要になり、消化管に必要な血液が少なくなり、結果として働きが悪くなってしまい、いわゆる「消化不良」となります。

食後は最低30分程度は運動をせずに休むのがベストですが、横になって寝ることはしないでください。

胃腸が休むモードに入ってしまって結局働きが悪くなるうえに、横になると胃の食べ物が逆流しやすくなり、胸やけや逆流性食道炎の引き金になります。

ですので食後はそのまま座った体勢でいるとか、動く場合は疲れない程度に、最小限にとどめるようにしてください。

できれば、好きな音楽を聴くなどでストレス無く、リラックスしている状態で過ごせるのが最も好ましいです。

胃の中にとどまる時間が短い食べ物がおすすめ

最後に、消化に良い食べ物ですが、具体的に言うと「胃の中にとどまっている時間が短いもの」が消化に良いもの、となります。

炭水化物系が最も消化に良く、次にたんぱく質、脂肪と続きます。

糖質類は消化に良いですが、脂肪は最も消化に悪い栄養になります。

調子が悪いときはおかゆやうどんが良いと言われるのは、この消化の効率の良さもあるためです。

ただし、炭水化物でも食物繊維は消化に時間がかかり、重い負担となるため避けてください。

また調理でも、煮る、蒸す、役、揚げるの順で消化のしやすさが変わってきます。

お湯で煮たり蒸す料理は消化に良いですが、焼いたり油を使う揚げ物は負担が重くなり消化も難しいのです。油を使わずに焼いたものも、胃にとっては意外と重いため、調子の悪いときは避けるのがおすすめです。

さらに、香辛料やアルコール、カフェインといった刺激物も、どちらかというと消化に悪い方になります。

胃腸を活発にしたり食欲を促す効果があるものもありますが、とりすぎると刺激になり、消化には逆効果です。

水分についても、いきなり冷たいものを飲むと胃腸が一気に冷えてしまい、いわゆる「お腹を壊す」ことになりますので、温かいものや常温のものを飲むようにしてください。

最後に、消化に良い食事でも何らかの原因で体にとって負担になっていて、食欲が出ない、あまり食べたいと思わないときは無理して食べずに様子を見ることも大切です。

その時はお米やうどんなどの炭水化物、糖質類を取らずに水分だけをとって安静にしてください。

自分が食べたくないと感じているときは実際に食べずに休んだ方が良い場合がほとんどですので、無理して食べずに、安静にして食欲の回復を待つようにしてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属