現在マスクは何処まで必要?最近の治験は?#615

マスク着用の見直しが本格化

先日5月19日、厚労省が「屋外でのマスク着用への見解」として、屋外でのマスク着用は必ずしも必要ではないケースがある、という発表をしました。

今回は、現状のマスクの取り扱いについて、厚労省の発表を踏まえながらまとめていきたいと思います。

屋外でのマスク着用が緩和

まず先ほどの発表についてですが、以前までは屋外であっても、周囲との距離が2メートルなど充分確保できている場合や、同居している家族などの人と過ごす場合のみマスクは着用せず、それ以外は着用を推奨していました。

現在は、他者との会話が無ければ充分な距離がとれていなくてもマスクは不要で、散歩やランニング、自転車などでの移動中にはマスクは不要、という見解に変わりました。

一方で、屋外であってもライブイベントのような密になる場所では、エアロゾルが空間中に滞留して吸い込みやすい環境になるため、引き続きマスクの着用を推奨しており、また公共交通機関も同様に密になる空間ですので、同じくマスクの着用を強く推奨しています。

距離が近く、エアロゾル感染のリスクが高い場所では、引き続きマスクが必要という事ですので、屋内ではこれからも当然マスクは必要になるかと思います。

続いて議論が活発に交わされてきた、お子さんへのマスク着用についてですが、これもこれまで通り、通常の登下校時は原則マスク着用、熱中症のリスクが高い時や、屋外での活動時はマスク不要としています。

マスクの効果・意味はあるの?

医療健康ナビなくすりーなでは、covid-19感染拡大当初からマスクへ注目して、国内外様々な研究や実験のデータをもとに、マスクの効果や意味について都度お伝えしてきました。

感染拡大から丸2年以上を迎えた、2022年現在分かっているマスクの効果ですが、やはり「予防効果はあるものの、完全には防げない」というのが結論です。

不織布マスクをはじめとした高性能のマスクであっても、エアロゾルを完全に防ぐことはできません。

エアロゾルに感染力のあるウイルスが含まれていれば、マスクをしていても感染する可能性がある、という意味です。

しかし全く防げないわけではなく、マスクをしていれば自分が吸い込むエアロゾルの量も、逆に自分から出すエアロゾルの量も減ります。

結果として、マスクをつけることが、感染リスクを減らすことにつながるということです。

マスクをつけて感染者数は減った?

マスクをして実際に感染者数が減ったのかどうかですが、これは2年経った現在でも、正直難しいところがあります。

まずアメリカやイタリアでは、一旦落ち着いた時にマスク着用義務が無くなり、その後再度拡大したタイミングで再度マスク着用義務が出された、という経緯があります。

着用義務が発令されている時は、実際に感染者数減少のスピードが発令前に比べて速くなったことが、推移のデータで明らかになっています。ただし、これがマスク着用の効果かどうかまでは検証されていません。

そして、感染のリスクは、自分の近くにどの程度のエアロゾルの濃さがあるか、という事も一つのポイントになります。

これは以前からお伝えしている「換気」に関する部分で、密閉された室内で長時間、そして人数が多ければ多いほどエアロゾルは濃くなり、感染のリスクは高まります。

今回発表されたマスクへの見解も、屋外での活動に限ったことであり、屋内においてはこれまで通りと変わっていません。

屋内などエアロゾルが濃くなりそうな空間ではマスクをして、エアロゾルが滞留しない屋外で他者との会話が無い状態であればマスクは不要、というのが現在の見解になります。

マスクをつけ続けることのデメリット

引き続き、基本的にはマスクが必要と思って頂ければと思いますが、世界的にマスク着用がスタンダードになって来た現在、マスクをつけることのデメリット、副作用も明らかになってきています。

例えば、長時間マスクをして仕事をするのは頭痛が起きやすくなる、というデータがあります。

これはアメリカで医療従事者を対象にした論文で、マスクをつけているときは付けていないときに比べ、二酸化炭素濃度が濃くなっていることが原因で、特にアメリカの医療従事者は市販の不織布マスクなどと違い、N95マスクのような完全な密閉型のマスクを使っているのも一因と考えられます。

とはいえ、マスクによる息苦しさから、頭痛になることはあるためデメリットの一つと言えますので、定期的に屋外でマスクを外して休憩する時間をとるようにすると安全かと思います。

また、マスク皮膚炎も徐々に問題になってきています。

耳にかかる部分や、鼻や口などマスクに当たる部分に炎症が起きることですが、これはやはりマスクの素材や体質によるところが大きいです。

マスクの種類を選ぶのと同時に、早めに皮膚科に行って処置してもらいましょう。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属