続く医薬品不足。いつまで続くの?#601

医薬品不足が徐々に深刻化

以前、およそ半年ほど前の550回の配信で、「医薬品不足」について取り上げました。

イベルメクチンというお薬がcovid-19に効果があると言われたことで、需要が急激に高まったとか、医薬品メーカーの不祥事、さらには医薬品倉庫の火事によって10トン単位の量のお薬が一気に焼失した、ということもありました。

そして現在、この医薬品不足の状況は、実は深刻化してきているのです。

ポピュラーなお薬が不足しつつある

前項の550回のお話など、これまで不足していたのは、イベルメクチンを筆頭とした「一部のお薬」でした。

他には、リウマチのお薬もcovid-19に効果があると話題になって需要が高まったということがありましたが、いずれも特定の、一部の患者さんが必要とするお薬で、一般的な胃薬や風邪薬はそれほど影響はありませんでした。

しかし、現在不足し始めているのが、そういった胃薬や風邪薬、具体的には吐き止めや痰切りのお薬など、患者さんが多く、需要も普段から高いお薬です。

この原因は、前項のことが尾を引いているためですが、やはり最大の要因となったのが、価格の低下です。

医薬品不足が解消するタイミング

この状況は見通しが難しいですが、予想レベルの話しでは当面は続く見込みと言われています。

医薬品メーカーの情報担当の方と頻繁にお話しますが、この状況はあと1年ぐらい続く予想が多いです。

医薬品メーカーは現在、とにかく効率化をして生産を続けています。

お薬も需要と供給があるように、採算が取れるものと取れないものに分かれます。

例えば、自社が開発したものでも採算が合わなければ、自社のお薬の権利を譲渡してコストを削減するなど、いわば「生き残り戦略」ともとれる施策を重ねているさなかです。

「コストの削減」は現在の医薬品メーカーにとって最大の問題であり、その原因が、毎年薬価の低下を求められるようになったためです。

見直しという形で、薬価が毎年変わりますが、基本的にはどれも安価になります。

メーカーはしっかりと採算が取れるように、生産体制を逐一見直しているのです。

薬局に在庫の確認を

これを踏まえて気を付けて欲しいのが、まず最初のような、あまりポピュラーではない一部の患者さんが使うようなお薬が必要な場合は、薬局に問い合わせて在庫があるかを確認するのがおすすめです。

需要が多くない一部のお薬は、依然としてかなりひっ迫している状況にありますので、もし必要な際には問い合わせるのが確実です。場合によっては、取り寄せに数日単位で時間がかかることもありますので、心当たりがあれば早めに問い合わせてみるのがおすすめです。

最後に、少し話がそれますが、少し問題となっているのが「お薬の飲み残し」です

これは例えば、単純に患者さんが飲む時間を忘れるなどで、朝昼晩飲むところを朝晩の2回しか飲めなかったとか、胃の調子が悪くて胃薬を処方したという場合、胃の調子が治った後も念のためということでお医者さんが同じ胃薬を処方し続け、患者さんが家で廃棄しているなどというケースで、お薬が余分に廃棄されているということです。

総額にすると、年間およそ500億円ほどのお薬が捨てられている、とされています。

処方するお医者さん、受け取った患者さんのどちらにも事情があり、完全にゼロにすることはもちろん出来ませんが、こういった問題も、薬剤師を活用していただければ、改善が見込める部分だと思います。

是非とも、普段からお薬については薬剤師に気軽に相談していただければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属