薬剤師って何科が得意なの?【リスナーの質問】#600

薬剤師が得意な「科」は?

先日コメントにて、「お医者さんには内科や皮膚科など専門があると思うのですが、薬剤師さんは何科が得意、とかはないんですか?」と言った質問をいただきました。

薬剤師はお医者さんとは違い、お薬を一手に扱う業種であり、特定の分野を勉強するという機会はありません。ですが、薬剤師ごとに得意なこと、不得意なことはあります。

そこで、今回はいつもとはガラッと変わって、久々に薬剤師についてのお話しをしていきます。

勉強するのは「薬学」

薬剤師が勉強するのは、名前にもある通り「お薬」のことで、「薬学」と言います。薬学部、薬学科と言い、国家資格となる薬剤師免許を取るための勉強を行います。

お薬の効果や飲み合わせ、副作用の出方を主に学びますが、病気そのものについては、お医者さんほどは詳しく学びません。

20年ほど前の薬剤師の業界では、臨床検査の値、例えば血液検査の値については、卒業して免許を取得したての頃はほぼ分かりません。おそらく最近薬剤師になった方や勉強中の方は、血液検査の値は学ぶと思いますが、私が薬剤師になった当時は学校では習わずなかったため「看護師さんでもわかるのに薬剤師はそんなことも知らないのか」なんて言い草をされたこともあります。

薬剤師は「病気のこともある程度詳しい」と思われますが、実はそれは単純に、卒業後に、働きながら勉強していくためです。

働く中で「自分が得意な部分」が決まって来る

例えば、病院の中でお薬を扱う、病院薬剤師として働くとか、一般的な街の調剤薬局であれば、その隣接の病院の科のお薬について詳しくなると思います。自分もそうでした。

例えば内科の隣の薬局であれば内科のお薬や病気に関して自然と詳しくなり、整形外科であれば外科的な病、怪我について詳しくなるなどです。

さらには、総合病院の近くの薬局であれば、様々な科が集まっているため全体的に知識が付いたり、色々なお薬に触れる機会が得られるとか、大学病院の前であればがんの治療や救急に関する知識が増えることもあります。

このように、卒業後に薬剤師として実際に働く環境で、自然と得意な部分が決まってきます。

これがいわば、お医者さんのような「科」になるかと思います。

特殊な漢方薬

voicyでも度々、漢方薬について触れますが、漢方薬も薬剤師になる過程で学ぶことの一つです。

ただやはり漢方薬は非常に特殊で、得意不得意や、好き嫌いが一際出やすい部分でもあります。

まず漢方薬が何から構成されているか、どんな生薬の組み合わせで出来ているかを把握したり、さらにそれぞれの生薬がどういう効能を持っているかも覚える必要があります。

例えば葛根湯(かっこんとう)は葛根(かっこん)大棗(たいそう)麻黄(まおう)甘草(かんぞう)桂皮(けいひ)芍薬(しゃくやく)生姜(しょうきょう)の7種類で出来ており、それぞれの効果効能についても覚えます。

薬剤師はお薬を扱うため、必然的に理系の中でも化学が得意だったり好きで入る人が非常に多いです。ですが、漢方薬は西洋薬とは大きく違うため、漢方薬に関する授業はその他とは性質が変わります。

そのため現在でも卒業後に漢方の勉強会に行くなどで、独学で少しずつ知識を身に着けて行くという方が多いのです。自分も学生時代は漢方薬が苦手でしたが、最初に入った病院の先生が漢方薬をとても気に入っていて、色々な漢方薬を処方していたという経験から、知識が身についたという経緯があります。

薬局薬剤師が一番得意なこと

以上を踏まえて、今の自分のような薬局薬剤師が、得意なことを考えてみると、「患者さんに合ったお薬や飲み方を考える」ことが得意だと思います。

例えば1日3回飲むお薬が処方された方がいるとして、生活リズムや体力的に負担になってどうしても1日2回しか飲めないという場合、患者さんやお医者さんに対して、1日1回や2回で同じ効果が得られるお薬を提案してみて、大丈夫そうであればそのお薬に変更する、ということができます。

他には、飲み忘れが多い場合は一つ一つを小分けにして、分かりやすくしておくとか、先ほどのように1日1回で済ませられるお薬に変える、という提案ができます。患者さんごとに適したお薬の飲み方を提案できるのは、薬剤師が得意とする最大の部分であり、また極めて大きな仕事と言えます。

ちなみに、薬剤師を活用してきちんとお薬を飲むということは、お薬の効果が最大まで出ることにもつながり、回復が進んで病院に行く回数が減ることにも、巡り廻って繋がるはずです。

是非とも、普段から薬剤師を活用していただければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属