男性こそ必聴のピルの話【リスナーの質問】#594

「ピル」ってどういうお薬?

先日コメントにて、男性の方から「自分が男なのですが女性のピルについて質問です彼女はピルを飲んでいるようなのですがピルは排卵が起こらないという認識で合っておりますでしょうか」

と言った内容のものをいただきました。

ピルについては以前、426回や306回でも詳しく触れておりますが、今回は少し男性目線から、まとめて行きたいと思います。

ピルは女性ホルモンを主成分とした飲み薬

まず、ピルとは簡単に言うと、女性ホルモンを整えるためのお薬、となります。

女性ホルモンは2種類あり、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの二つで構成されています。

そして、ピルと言うと「飲むことで避妊になる」と言うのが最も有名かと思います。

この仕組みは、ピルを飲むことで体内のホルモンのバランスが、妊娠したときに近い状態になるためです。

つまり、ピルを飲むことで、体のホルモンバランスが妊娠したときとほぼ同じ感覚になるため、しばらくの間は排卵することがなくなるのです。

ホルモンバランスが元に戻る一定期間、排卵する可能性が大幅に抑えられ、正しくきちんと飲めば確実に避妊できる、というお薬がピルです。

ただし、正しく飲まなければ効果が無いどころか、性ホルモンに影響するため体にも悪い影響が出る恐れがあります。

通常、処方されるピルは3週間分の量が入っていて、3週間飲みきったら1週間お薬を止めて、生理を迎える、というのが主流です。

他には、28日間毎日飲むタイプでは、最後の7日分は女性ホルモンが入っていないものになっており、飲み忘れが無く意識づけもしっかりできるよう、飲んだ日数を分かりやすく把握できるというピルもあります。

さらに28日周期以外でも、含むホルモンの量や成分を調節して、77日後に1回とか120日後に1回生理が、というように周期ごとでもいくつかの種類があります。

ホルモンバランスに影響を与えるため、こうした「飲み方」をきちんと守らなければ効果が上手く出ません。

とはいえ、毎日きちんと同じ時間に飲む必要がある、というほど厳格ではなく、基本的には午前中飲んでいれば、夜になる前、夕方までに飲む、と言う程度で大丈夫です。

ただ、そうしたことが2日以上続いたり、何日か飲み忘れが起きてしまったという場合では、しばらくの間飲むのをやめて仕切り直すとか、次のシートに移るなど、お薬ごとに対処が変わってくるので、万が一飲み忘れたというときにはきちんと薬剤師やお医者さんに相談してください。

ピルは避妊以外で飲むことの方が多い

以上を踏まえると、実はピルは避妊ではなく、生理の問題を解決するのにも役立つお薬で、むしろ避妊目的以外のために飲んでいる人の方が圧倒的に多いお薬なのです。

例えば生理痛がひどく日常生活に支障をきたしている場合で飲めば、お薬によってホルモンバランスが整い、痛みが引いていきます。

また生理前に精神的にイライラするような症状が出る、PMSという病の治療が出来たり、さらにはピルを飲むことで生理による出血を減らして、貧血を改善していくという事も可能です。

いずれも男性にとってはなかなか分かりにくく、気付きにくいと思います。

他には、子宮内膜症という病の治療にも使います。

「排卵」によって体にかかる負担

女性に起こる「生理」「排卵」という現象は、実は人体にかなりの負担がかかっています。

排卵を簡単に説明すると、体の中にある「卵巣」から、卵子と言う細胞が突き破って出てくる、ということになります。

何らかの弁や出入り口があるわけではなく、自分の細胞を傷つけ、壊して出てくるため、排卵後は免疫力や体力を使って卵巣を修復していきます。

そしてまた卵子が育てば、再度突き破って出てきます。

これが自分の意志と関係なく起こっているのが、女性の体です。

傷つく回数が不用意に増えれば、その分体に負担がかかり、がんのリスクも高まります。

そこでピルによって排卵を一時的に止め、卵巣や子宮を休ませるということも、場合によっては行うのです。

ピルの副作用

ピルの副作用ですが、やはりホルモンバランスに影響が出るため、飲み始めには特に起こりやすいです。

不正出血と言い、周期と関係なく出血してしまうとか、軽い吐き気やだるさ、頭痛、胸の張りと言った症状が起きます。

これらはいずれも軽微な副作用ですが、一番注意が必要なのが、血栓症という症状です。

血栓症で最も有名なのが、エコノミークラス症候群です。

長時間座りっぱなしでいることで、血流が滞り、血栓ができてしまい、その血栓が血管に詰まってしまう症状です。

ピルを飲むことで、血液が固まりやすくなってしまい、血栓症のリスクが高まるのです。

ピルは喫煙されている方や心臓、肝臓、腎臓に疾患がある方、肥満気味の方、高血圧の方は血栓症のリスクが高まるため、通常のピルは飲むことができません。

そういった方向けへは、「ミニピル」というタイプのピルがあります。

ミニピルは黄体ホルモンだけが入っており、血栓を起こしやすい卵胞ホルモンが入っていないという特徴があります。

血栓症のリスクが無いため幅広い方が飲めるタイプですが、これも出来るだけ時間通りに飲まなければ効果が出ないため、飲み方はしっかりと気を付けてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属