女性特有のガン予防にも?正しく知ろうピルの功罪#426

Voicy更新しましたっ!

今回は女性の方に関わる「ピル」と言うお薬について

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「ピル」の役割

今回はピルのお話です。

covid-19による休校中に、若い方の望まない妊娠が増えた、と言う報道が一部でありました。

このようなニュースもあり、今回は避妊薬として有名な「ピル」について深くご紹介していきたいと思います。

女性ホルモンのためのお薬

まず、ピルというお薬は婦人科のお医者さんによる処方箋がないと、手に入らないお薬です。

おそらく、男性にとっては避妊に使うものというイメージが多いかもしれませんが、女性ホルモンのバランスをコントロールして排卵を抑えるという仕組みですので、生理痛や生理不順のような、生理にまつわる症状に対して非常によく使われています。

例えば生理前後の特有の肌荒れを和らげるのにも使います。

さらに、副次効果ではありますが、ピルを飲むことでホルモンバランスが整って、結果的に卵巣がんや子宮体がんの予防にもつながります。

これは具体的には、1年飲み続けると5%ずつ発がんリスクが下がることが分かっています。つまり、卵巣がんであれば、10年飲み続けると50%リスクが下がります。

子宮体がんはそこまでは下がりませんが、ある程度はリスクが下がり、何年か飲み続けてリスクを下げたら、それから20年程度はリスクが下がった状態で居られる、ということは確認されています。

ピルの避妊効果

避妊のためにピルを飲む場合は、月経の初日から飲むと、その日から避妊効果が得られます。

しかし、月経の初日でないタイミングでピルを飲むと、その日から最初の1週間ほどは、避妊効果が薄いですので注意してください。

また逆に、ピルを飲むのを止めた後、きちんと妊娠できるのか、ということですが、これはおよそ1か月で、半分ほどはバランスが元に戻ります。

個人差がありますが、およそ2か月ほどでほとんどの方が、ピルの影響を受けずに、ホルモンバランスが整います。

女性の方であればとても便利なお薬に見えそうですが、やはり副作用の問題があり、場合によってはピルを飲むことが出来ないケースもあります。

ピルを服用できない方

副作用の前に、そもそもピルを服用できないというケースがあります。

まず、15本以上たばこを吸う35歳以上の方はピルが使えません。

以前、たばこについて触れたときにもお話しましたが、たばこは血管を収縮させる作用があります。

そしてピルを飲むと血が固まりやすくなるため、二つ同時に体内に入ると血栓症を引き起こす可能性が高まります。

なので、たばこを辞めなければ、飲むことはできません。

これは言い換えると元々血が固まりやすい体質、血栓症が頻繁に起こる体質と言う場合や、高血圧や糖尿病と言った生活習慣病がある人も、同じように血栓症のリスクが高まるので注意が必要です。

また、50歳以上の方はそもそも飲むことが出来ません。

そしてもう一つ、すでに乳がんや子宮頸がんの疑いがある人もピルを飲めません。すでにある場合は、ピルによって逆にリスクが高まり悪化する恐れがあるためです。

低用量ピルとは

飲むのに注意が必要で、飲める方もある程度限られてるピルですが、現在処方されているのは「低用量ピル」になります。

低用量ピルは、従来のピルよりも含まれているホルモンの量が少ないというもので、副作用のリスクが従来よりも大幅に低いという特徴があります。

また、ピルを飲むと太ると言われており、実際に食欲が増えて体重が増えることがありますが、低用量ピルであればホルモンの量が少ないため、その副作用もほぼなくなっています。

低用量ピルの副作用は飲み始めの初期、1か月か2か月ぐらいの間は、少し気持ち悪くなるとか、不正出血の症状が出ますが、3か月ほど経過すると慣れて整ってきます。

そして、前項の血栓症のリスクも、ゼロになったわけではないので、引き続き注意が必要です。

もっと言うと、全くリスクがないはずの方でも、稀にピルによる血栓症が出ることがあります。例えば足の静脈が詰まるとか、ふくらはぎのむくみ、痛みの症状です。

そう言った症状が出たときに心当たりがあるのが、ピルを飲んだことだけであれば、婦人科のお医者さんに相談するのが確実です。

飲むのに気を付ける必要がある

ご存知の方も多いかもしれませんが、ピルは外国では一般的なドラッグストアで購入できる国もありますが、日本では婦人科のお医者さんの指示で、処方箋が無いと手に入らないお薬です。

これについては現在進行形で、議論されている課題の一つで、制度改正の動きも徐々に見られますが、まだ具体的には決まっていません。

処方箋が必要な理由はやはり、気を付けないといけない点が非常に多い、ことにあります。

飲んでも大丈夫なのかどうなのか、そして量はどれくらいが適正なのかを正確に決めないと、前述の血栓症のリスクが大きくなります。

日本で低用量ピルを手に入れるためには、婦人科のお医者さんのもと、血液検査等も含めてきちんと確認して、それから飲んでも良いかどうかを判断します。

ちなみにピルは自由診療で、病院によって値段に差があるお薬です。これも日本においての問題の一つです。

反対に、海外では薬局で誰でも買えるお薬ですので、個人輸入でネットで買うという方も多いですが、一番危険なのが偽物が送られてくる、詐欺のリスクがあることです。

パッケージとかは同じでも、中身が全く違うとか、粗悪なものな場合もあります。さらに、一般のお薬では副作用救済機構という副作用について相談できる機関がありますが、個人輸入で購入した場合は救済の対象にならないこともあります。

インターネットで購入するのはやはり、非常にリスクが高いことと言えます。

アフターピルについて

ピルと言えば、最近話題になっている「アフターピル」というものがあります。避妊に失敗したとき、事後に緊急で飲むピルのことを指します。

これまで話したように、一般的なピルは避妊以外の役割もあるので、飲み方としては毎日決まった時間に飲んで、時間をかけて女性ホルモンをコントロールしていくというものですが、アフターピルは事後に飲んで避妊効果を得るというピルです。

アフターピルは特に、早く飲まなければ意味が無くなります。

時間にするとおよそ72時間以内に飲めば、避妊効果が期待できますが、早ければ早いほど効果的と言う特徴があります。

しかし、通常のと同じく、お医者さんにかかって処方箋をもらって、それから飲むことになるため、アフターピルだけをもらいに婦人科さんに行くのは非常にハードルが高く、また経済的な負担も重くのしかかります。

そこで現在、オンライン診療と言い、オンラインで診察、処方箋を出すというシステムがあり、実際に取り入れている病院もいくつかあります。

とは言え、それからアフターピルが手元に来るためには、薬局まで行ったり、郵送で届くのを待つ必要があります。この仕組みもどうにか、スピーディーできればと感じています。

アフターピルではなく、低用量ピルの活用を

最後に、前述のアフターピルの副作用ですが、普通のピルと比べて副作用が非常に大きく出やすいデメリットがあります。

そして最初にお伝えしたように、ピルもアフターピルも女性ホルモンに作用するお薬ですので、性病の予防には全く関係がないので注意してください。

安易に性交渉を進めず、本当に緊急時に必要な時だけ、活用するようにしてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属