薬局薬剤師だって医療従事者だっ!#425

Voicy更新しましたっ!

今回は”薬剤師と医療従事者”についてのお話

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薬剤師も医療従事者

緊急事態宣言の解除も久しく、covid-19の感染者数も徐々に減少に向かっていますが、最近見かけるようになってきたのが「医療従事者への支援・慰労」です。

未曾有のウイルスと最前線で戦う医療従事者、お年寄りに付き添う介護士など医療福祉に関わる方々への感謝の意を、と様々な支援活動がされていて、その一つに政府の補助金の政策があり、実際に補正予算に組み込まれました。

ただ実は現時点では、この対象には、患者さんと直接接する薬剤師であっても、入らないことになっています。

今回はこのニュースにも絡めて、薬剤師のお仕事、薬剤師がやっていることについて今一度、詳しくお話していきたいと思います。

 

始めにするのは「処方監査」

薬剤師の仕事について、しばしば「結局もらった処方箋を見てそのまま薬を袋に詰めるだけ」と言われがちですが、実際には処方箋を受け取ってから、調剤して最後に患者さんに渡して精算するまで、様々な工程があります。

そしてそのすべてが薬剤師の責任であり、薬剤師個々人で技術の差が生まれる部分になります。

まず、処方箋を受け取って始めにするのが「処方監査」です。

処方箋に書かれているお薬の種類、必要な量が、その患者さんの症状や体格、年齢に合っているかの確認です。

様々な患者さんが来られるので、年齢層もお子さんからお年寄りまで幅広く対応する必要があります。薬同士の飲み合わせの確認に加えて、患者さんからの要望にも合わせて薬を組み合わせるのも、処方監査をしっかりとして行います。

 

副作用の確認も

また当然、薬の副作用の確認も同時に行います。

薬が効きすぎることで逆に副作用として、体に影響が出ることがあり、それを防ぐために、薬の量を減らして対応するのも可能です。

さらに、患者さんの持つ病によっては、使えない薬もあるとか、粉薬やシロップを混ぜると効果が変わるお薬もあります。

例えば血圧のお薬で、心臓の動きを少し抑えて血圧を下げるという仕組みのものは、喘息がある方には使いにくく、場合によっては喘息の発作がひどく出ることがあります。

粉薬やシロップを混ぜて、飲みやすくしてお渡しする場合では、一緒に飲んで意で混ざる分には問題ないものでも、同じ袋に入れて混ぜ合わせると変質して効果が変わるというものもあり、その結果全く効果が無くなるケースもあるのです。

こうした関連を見て、調節するのは薬剤師の大きな仕事になります。

 

薬歴を見るのに時間がかかる

前項のが処方監査となりますが、患者さんからもらった処方箋を見るのは、ベテランになってくると平均して5秒程度でざっと見ることが多いです。

ただ、お薬が揃っていてもなかなか渡されない、薬剤師が何かを確認しているようにボーっと立っている光景を見たことがあるかもしれません。

これは「薬歴」を見ている時間です。

薬歴は薬についてのカルテのようなもので、今までどんな病で、どういうお薬を飲んでいたか、そしてどういう体質でどのようなアレルギーがあるか、そうした情報が詳しく載っています。

全て大切な情報ですが、いつも飲んでいる薬だとしてもずっと飲み続けることで初めて出てくる副作用、というものもるので、薬歴を見て薬を飲んでいる期間も忘れずに見ておきます。

処方箋を作るお医者さんは様々な患者さんを毎日見ているので、ごくまれにアレルギーや患者さんからのお薬についての注文を忘れることがあります。そこで薬剤師が、その患者さんの薬歴を見ながら最後に確認するのです。

あとは、患者さんに渡すときに、どういうお話をするかを考えるのもこのタイミングです。

 

お医者さんに言ったことをもう一回薬剤師に話す理由

以前も何度か、似たようなことをお話しましたが、薬局でお医者さんに言ったことをもう一回薬剤師に聞かれて面倒、と思う事があると思います。

処方箋にはお薬以外の情報があまり書いていないので、渡す前に処方箋の内容と患者さんが合っているか、最後にもう一度確認します。

例えば、処方箋には血圧のお薬となっていて、それに合わせて調剤をして、薬歴を見ても特に問題ないとしても、実は糖尿病で糖尿病のためのお薬が必要だった、という事があります。

これは実際、糖尿病のお薬と血圧のお薬の名前が似ているためよく起きる例として有名です。

こうしたことがあるので、渡す前にもう一度患者さんのお話を聞いてみて、正しいか間違っているかを判断するのも薬剤師しかできません。

 

何かあれば疑義照会をする

先ほど、副作用の確認もすると述べましたが、実は、元々お医者さんはシステム上どうしても、薬の副作用に注視する視点がそれほどありません。

お医者さんは患者さんの病を取り除くために治療をするので、治療薬による副作用や、患者さんの体質とその薬との相性にまで気を配るのは難しいのです。

そうは言ってもお医者さんはそんなに間違えず、ある程度は知っているのでは?と思われそうですが、処方箋のうち全体の3%は「疑義照会」をして、お医者さんまで処方箋を返すことをします。

そのうち、確認した中で3分の2ほどは、受け取った処方箋から変更になり、新しい正しい処方箋になって戻って来て、調剤をし直します。

これを人数にするとざっくりした単純計算で、50人に一人ほどの割合で間違いあると言えます。

これは処方箋のミスなので、単純にお医者さんが書くのを間違えた以外にも、医療事務の方のタイピングミス、見間違えなどによることもあります。

そのケースを入れて、自分の体感でも、50人に一人ぐらいの割合はあながち間違いではないと思います。

疑義照会の時、薬剤師はそのお医者さんと、その患者さんに対してしている治療についてのお話もします。これは、お医者さんの考えで何らかの意図があって、あえて一般的でない薬の使い方をすることもあるためです。

全ては患者さんのために、一番良い方法は何かをそれぞれの角度で話し合う、という事をします。

患者さんが飲む薬についての専門家として、薬剤師が存在しています。薬剤師の持つ薬の知識を、普段から様々なところで活用できれば、と思っています。

薬について、些細なことでも構いませんので、是非色々質問してみて頂ければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属