市販薬の「乱用」
先日、滋賀県で女性高生が遺体で発見されたというニュースがあり、その死因が「市販薬を大量に飲んだ」というものでした。
これはいわゆる「オーバードーズ」とか「薬物乱用」で亡くなったという事になります。
ドラッグストアで売っている市販薬でも、一時的に大量に摂取することで危険薬物のような症状が起こることがあります。お薬は必ず飲み方通りに正しく飲む、と度々お伝えしていますが、それはこうしたことを防ぐことにもつながるためです。
今回はこのニュースから、オーバードーズについて少し触れて行きたいと思います。
市販薬でも大量に摂ると命を落とす
危険薬物のような症状とは簡単に言えば、一瞬だけ気持ちよくなったり頭がスッキリする感覚が得られるものの、その効果が切れると禁断症状が襲ってきて再度やりたくなってしまう、と言ったものです。
依存性もあるため、何度も繰り返すことで禁断症状はさらに強くなり、幻視や幻聴も起こることがあります。
そして市販薬は危険薬物と違って、健康に害のない成分のみが入っていますが、それでも大量に摂ってしまうと心臓や肝臓に一時的に急激な負担がかかります。
その結果、処置が間に合わずに命を落とす、という事があります。
今回の事件は、おそらくそれによって亡くなられたと考えられます。
お薬の安全な量の根拠
当然と言えば当然ですが、認可を受けて正規に流通しているお薬は、決められた量を飲む分には全く問題はありません。
その決められた量の根拠は、まず一定の量を摂取しないと効かない、という事が挙げられます。
これも当然ですが、少ない量を摂っても体には影響が出ず、効かないことがあります。
例えば、花粉症用などで使うアレルギーのお薬は、眠気が起こるという副作用を持っていることが多いです。
炎症を抑えるのと同時に副作用として眠気が起きますが、不用意に摂りすぎると、正しい良い作用よりも副作用の方が強くなります。
市販薬の取扱説明書に書いてある量は、正しい効果が得られる成分量と副作用が強く出始める成分量の丁度中間に設定されているのです。
この量を大幅に超えて飲むことで、副作用が激しく出たり、副作用以上の重大な悪影響が出るという事です。
ちなみにこの副作用とのバランスを調べることも、臨床試験や治験の大きな意味の一つとなります。
そしてもう一つ、お薬の飲み方についての話でしばしば聞くのが、決められた量の2倍飲んだら、効果も2倍になるのでは、という事ですが、これはそうなる薬もありますがそうならない薬も存在します。
例えば、お薬によっては、何らかのことを境として、量を少し多くとっただけで急激に作用してしまい、効果が2倍どころか10倍にまで強く出てしまう、というケースもあります。
これは言い換えれば、副作用も通常の10倍強く出ることになり、副作用によって死に至る可能性も当然出てきます。
飲むタイミングの根拠
お薬は飲む量ともう一つ、飲むタイミングも決められていますが、それも前項と同じく作用、副作用に影響が出てくるためです。
例えば、お魚の脂を用いた中性脂肪用のお薬は必ず食後に飲むように決められていますが、これは食前に飲んでも意味がほぼ無いためです。
食事をすることで出る物質がお薬に作用するため、胃に食べ物が無ければ効果が無いのです。
まれなものだと、ある花粉症のお薬では「空腹時に飲む」と決められているものがあります。
これは食後、胃に食べ物がある状態だと、お薬が半分しか吸収されず効果が出にくいため、必ず食前か食後最低2時間ほど経過した空腹時に、となっています。
さらに逆に、ある睡眠薬では食後に飲むとお薬の成分が通常の4倍以上吸収されてしまい、副作用が激しく出てしまい危険、というものもあります。
お薬の飲み方についての相談は是非、薬剤師まで
このように、お薬の飲み方は種類ごとに様々あります。
食後に1錠や3錠、食前に1包、等々ありとあらゆる飲み方がありますが、人によっては、このタイミングではあまり飲めないとか、そもそもこのお薬が飲みにくい、味が苦手と言ったことがあると思います。
そういう時は是非、薬剤師に相談してみてください。
飲み方についてアドバイスをしたり、場合によっては同じ成分の違うお薬を提案したり、と言ったことができます。非常に幅広い知識を持っていますので、お薬について些細なことでも不安があれば、是非気軽に相談していただければと思います。