お腹に来る「風邪」
前々回、風邪という病についてまとめましたが、たまに発熱と同時にお腹の調子が悪くなって、風邪をひいたと思うことがあると思います。
こうした症状を正式に言うと「感染性胃腸炎」となります。
「風邪」とは
まず前提として、これまで普通に用いてきた「風邪」という言葉ですが、風邪とはウイルスや菌が原因で体調が悪くなったことの総称です。
正式には「かぜ症候群」と言い、ウイルスや菌による発熱や鼻水、喉の痛み、咳と言った症状の総称になります。
そして、ウイルスや菌によって胃腸炎が起きることがあり、それは正式には「感染性胃腸炎」と言い、かぜ症候群の一つになります。
お腹の風邪とは、ウイルスや菌によって胃腸炎が起きている、と考えてください。
ですので例えば食中毒でノロウイルスやカンピロバクターなどのウイルスに感染してしまい、胃腸が多大なダメージを受けるのも、お腹の風邪の一つと言えます。
すぐに治るため検査はしない
お腹の風邪の特徴と言えば、喉や肺に来る風邪、インフルエンザなどのウイルスは検査をしますが、ノロウイルスなどは患者さんに対しては検査をしません。検査をしてる間に治るためです。
ノロウイルスの回で度々触れていますが、胃腸炎は水分と栄養を摂って炎症がひくのを待つのが基本的な治し方になり、それ以外にはほとんど治療法がありません。
飲食店などで、突然大量に食中毒にかかった方が出たなどの場合では、何が起きたのか保健所が検査をすることがありますが、患者さんは時間経過で治っていくため、個別に検査をする意味が無いのです。
胃腸炎にはビタミンCは不向き
風邪と言えばビタミンCが便利で、前々回でも免疫力に良い効果を与えると書きましたが、実は胃腸炎については不向きです。
むしろ、胃腸炎の時にビタミンCをたくさんとってしまうと逆に治りづらく恐れがあります。
その理由は、まずビタミンCはアスコルビン酸というものが主成分となっており、文字通り「酸」の一種なため、粘膜に対しては実は刺激物となる成分になります。
通常であれば全く問題ない程度の酸ですが、胃腸炎の時は胃腸で炎症が起きていますので、わずかな刺激でも加わると炎症が長引く可能性があります。
やはり、きちんと出し切ることが一番の治療になります。
これは言い換えれば、下痢止めで下痢を無理に止めないことが必要です。
ノロウイルスの回でも必ず触れているように、下痢を止めるという事は体内にあるウイルスが出て行かないことにつながり、無意味に治るのを遅らせることになります。
なので胃腸炎のときの下痢や嘔吐は必ずむやみに止めず、出したいと思ったときにしっかりと出すようにしてください。
そして必ず、出て行った分の水分を補給してください。
軽い物であればお水やスポーツドリンクで大丈夫ですが、ノロウイルスのように一気に大量に下痢や嘔吐をしてしまった場合は経口補水液があると役立ちます。
これに、キャップ1杯程度の量のお水を15分に1回ほど、こまめに摂ってください。
もしそれも受け付けないほどであれば、病院で点滴による水分補給が必要ですので、すぐに相談してください。
回復期の過ごし方
下痢や嘔吐の症状が落ち着いてきて、徐々に元に戻っていく、いわゆる「回復期」「治りかけ」のときの過ごし方ですが、これは前々回の普通の風邪と同じく「睡眠」が最も重要です。
食べ物も同様に、温かく、負担にならないものが必要です。
特にスパイス、香辛料のある食べ物は強い刺激となりますので、避けてください。
普通の風邪ではない胃腸炎の治りかけの時は、特に胃腸への負担に注意して食べ物を選びましょう。
最後に、胃腸炎から治りを早くするのには、漢方が便利だと思います。
前々回の最後にご紹介した補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)は、胃腸に負担にならずに、エネルギーが回復しやすくなるため非常に役立ちます。
回復してからは、タンパク質やアミノ酸を多めにとっていくと、だるさや疲れが取れて行くので試してみてください。