COVID-19の飲み薬はどうなってるの?#587

本格的に処方され始めたcovid-19の「飲み薬」

首都圏など、一部地域に発令されているまん延防止等重点処置の延長も決定され、依然として陽性率が高いcovid-19ですが、本格的に患者さんへ行き渡り始めているのが「飲み薬」です。

今回はこのcovid-19の飲み薬について、国産のお薬なども含めて、最新情報をまとめて行きます。

ラゲブリオが国内で流通

まず、現在60歳以上の感染者で、重症化リスクの高い人を中心に実際に処方が始まっているのが「ラゲブリオ」というお薬です。

voicyでも以前から度々出てきた、イベルメクチンの製造を手掛けるメルク社が開発したcovid-19用の飲み薬になります。

18歳以上であれば使用できますが、量が非常に限られているため、まずは60歳以上で重症化リスクが高い方を優先して処方されています。

これは具体的には、60歳以上で糖尿病や腎臓病、がんのような疾患がある人などが対象です。

ラゲブリオの効果は、飲むことで入院や死亡のリスクを3割から5割ほど減らせる、というもので、基本的には陽性であっても軽症の方にはあまり使えないタイプのお薬になります。

もともと重症化リスクが高い人に向けて、入院や重症のリスクを減らすのが主な使い方になっているお薬です。

このラゲブリオの最大の特徴で、最も大切なのが「症状が出てすぐに使う」という点です。

これは、症状が出てから6日以上経過してから飲んでも、治療効果が見込めない可能性が高いとされています。

つまり、5日経つまでに、可能であれば症状が出てすぐに飲み始めることが大切なお薬となります。

薬本体はカプセル型で極めて大きく、そのカプセルを1回で4錠、1日2回飲みます。

トータルで1日8錠を、5日間毎日飲み切る、と言う飲み方をします。

ラゲブリオの仕組みは、ウイルスの設計図を狂わせる働きをします。

ざっくり言うと、お薬を飲むことでウイルスの設計図がそれまでと全く違うものとなり、体内で増えることができずに体内で自然と無くなっていく、という流れです。

そして、現時点では大きな副作用は報告されておらず、およそ100人に5人ほどの割合で若干の気持ち悪さ、めまい、頭痛があり、100人に一人程度の方に軽いじんましんが起こったという報告があります。

ちなみに、ラゲブリオはオミクロン株に対してもしっかりと効果が認められています。

2月10日に「パキロビッド」が承認

そして、先日2月10日に承認され、今後流通されていくと思われるのが、ファイザー社の飲み薬の「パキロビット」です。

これはラゲブリオとは飲み方は同じですが、仕組みも効果が異なるお薬で、ウイルスを体内で組み立てられなくする、という働きをします。

ウイルスに感染すると、ウイルスの部品が体内に作られ、それをもとにどんどん増殖していきますが、このお薬を飲むことで、その部品を組み立てられなくなり、増殖が出来ずに無くなっていくという流れです。

パキロビットは現在の段階では入院や死亡リスクを9割減らせられる上に、ラゲブリオと同じくオミクロン株に対しても効果が認められています。

対象年齢もラゲブリオは18歳以上でしたが、これは12歳以上で体重40キロ以上の方であれば問題なく使えるとされています。

しかし、パキロビットの一番の問題が、お薬の飲み合わせです。

パキロビットと一緒に飲んではいけないお薬が非常に多く、すでに何かのお薬を服用中であればかなり引っかかる危険があると言われています。

その範囲が非常に広く、例えば血圧や心臓のお薬から、睡眠薬やてんかんのお薬などが該当するため、何らかの疾患があってお薬を服用中の方は充分に気を付ける必要があります。

副作用については、こちらも重篤なものは未だ報告されておらず、およそ100人に6人程度で軽い下痢、味覚障害が報告されており、100人に一人程度で血圧が高くなる、筋肉痛が起こるとされています。

塩野義製薬の飲み薬について

最後に、国産となるcovid-19の飲み薬を開発中なのが塩野義製薬で、仕組みとしてはラゲブリオのようにウイルスの設計図を狂わせるというタイプで、重症化リスクを減らす効果を得るお薬になります。

これは現在、治験のさなかにありますが、現状では感染性のあるウイルスの量を6割から8割減らしていることが分かっています。

これをもとに、条件付き早期承認という制度を使って、承認、流通させる動きが本格化されてきています。

通常、治験は最低でも2000人程度の方を対象に調べる必要がありますが、この制度を使って数百人程度の方に試験的に使用して、効果が認められたら承認するという制度です。

この制度は以前から利用できましたが、オミクロン株の流行直前となる昨年11月、12月は日本での感染者数が著しく少なく、感染が落ち着いていたため、治験の参加者も必然的に減っていたという状況にありました。

年明けになってすぐにオミクロン株によって急速に感染拡大したことで、滞っていた治験が再開した上に、飲み薬の整備も急務となってきたため、2月には条件付き早期承認がされる見通しとなりました。

使用は限定的なものに

最後に、この塩野義製薬のお薬に対して用いられる制度は文字通り、条件付きで特別に、早期に承認するというものです。

お薬の安全性、リスクをきちんと確認するためには、事前にかなりの量の治験データを集める必要があります。

治験データが少ないということは、まれに起きる重大な副作用が分かりにくいという大きな不安を抱えることになります。

このお薬は、おそらく最初は副作用への対応や報告が素早くできるように、限られた一部の施設での患者さんに限定されると思われます。

使った患者さんに対して、追跡調査として服用後の調査も行っていくはずです。こうした調査は医療安全上非常に重要で大切なことになります。

もしこの制度を受けて、塩野義製薬さんのcovid-19のお薬を使う患者さんが居れば、ご協力いただければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属