質問より!covid-19ワクチンの動向と安全性は?#475

Voicy更新しましたっ!

今回は頂いたコメントから、covid-19のワクチンの続報、あれこれについて

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欧米でワクチンの接種が本格的にスタート

今回は頂いたコメントからワクチンに関する続報、あれこれについて再度まとめていきたいと思います。

頂いたコメントは、効果と副作用がいまいちわからず、またステロイド治療中の方でも大丈夫か、という不安の声です。

またついに、ファイザー/ビヨンテック社のワクチンがアメリカで27万人に、イギリスで13万人に実際に接種されました。

さらに、アメリカのモデルナ社のワクチンもアメリカ国内で緊急許可がされ、ワクチンの接種が本格的にスタートしています。

併せて、コメントにあるような、分かりにくい副作用、アレルギーの報告も徐々に出てきています。

今回はワクチンについて、現時点での事を含めてあれこれについて、まとめて行きます。

 

流通が始まったワクチンは、”mRNAワクチン”

まず始めに、少しややこしく難しい話になりますが、今回流通されて接種が始まったファイザー/ビヨンテック社、モデルナ社、両方のワクチンは「mRNAワクチン」という種類のものです。

mRNAとは、遺伝情報の一つです。

そして、covid-19ウイルスの表面には、”スパイク”というものがあります。

このcovid-19の”スパイクだけ”を形作る遺伝情報、mRNAを体の中に入れます。

そのmRNAが体の中に入ると、体内の細胞に、covid-19のウイルスのようにスパイクをたくさん作ります。

するとそのスパイクのある細胞に対して、体にある免疫が働き、スパイクのある細胞を取り除きます。

これで、外から入ってきたスパイクのある細胞をやっつける体、態勢が整うのです。

結果的に、今後covid-19のウイルスが体内に入った時に、感染する前にスパイクのある細胞を感知してやっつけることが出来るため、感染せずに済む、という仕組みです。

 

もう一方の”ウイルスベクターワクチン”

そしてもう一つ、以前お伝えしたロシアでいち早く開発流通されたワクチンや、現在開発中のアストラゼネカ社のワクチンは、実は併用できる形を模索しており、両者がそろって治験を開始しています。

そのワクチンはmRNAワクチンではなく、ウイルスベクターワクチンという種類になります。

前項のはcovid-19のスパイクの遺伝情報を直接、体内に入れて細胞を作る形でしたが、これは人に無害なウイルスを入れて体内で運ばせて、同じようにスパイクのある細胞をやっつけられるようにしておく、という仕組みです。

実験の段階ではmRNAワクチンは95%ほどの効果で、こちらは70%から90%としているため、併用が出来ればより高い効果が得られる、という事です。

ちなみに、ステロイドは免疫力を一時的に下げてしまうので、生ワクチンというタイプのものは使用できません。

これらのmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンは、生ワクチンではないため、おそらくステロイド治療中でも使うことが出来るタイプのワクチンになります。

きちんとした発表が無いため憶測にはなりますが、現時点ではステロイドに関しては、安心して使用して良いかと思います。

 

その他の副作用について

その他の副作用についてですが、一番大きいもので、世界的にも報道されているのがアナフィラキシーショックです。

体質に合わないものが体内に入ってしまい、排除しようとする働きが出るのがアレルギーですが、アナフィラキシーショックはより命にかかわるような、重大な事態につながります。

今回のワクチンでのアナフィラキシーショックが、イギリスで2名、アメリカで6名、現時点で報告されています。

具体的に何が起こるかと言うと、接種してすぐにまぶたや唇が腫れるとか、喉の粘膜が大きく腫れて気道が塞がれる、血圧が急激に下がって失神、といった症状です。

いずれも病院内であれば素早く処置できて、助かるものですが、逆に言うと素早く処置できなければ死に至る程重大なアレルギー反応になります。

ワクチンによってアナフィラキシーショックが起こる割合は、現時点の報告を基に単純計算したら、10万人あたりで二人ほどは起こることになります。

現在、例年に一般的に流通しているインフルエンザワクチンで考えると、10万人あたりで0.4人の割合でアナフィラキシーショックが起こる可能性があります。

ですので単純計算で5倍近く、起こしやすいという風になります。

ちなみにワクチンではなく、人間ドックの時に飲むような、造影剤では10万人あたり40人の割合で起こる可能性がありますので、単純に起こしやすい、起こりにくいというのは現時点では何とも言いにくいです。

大事なのはしっかりと対策をとれるかどうかで、このワクチンに関してはアナフィラキシーショックは接種後30分以内に起こることが分かっているため、接種後30分は病院内にとどまって安静にしている、という風にすると安全です。

 

アナフィラキシーショックが起こったからと言って、ワクチンが打てないわけではない

コメントに「以前アナフィラキシーショックを起こした人が打ってみたり」とありました。

これより前に、別のワクチンでアナフィラキシーショックを起こした人が、このワクチンを打っても良いのか、問題ないのかですが、何の物質が原因でアレルギー反応が起きているのかがポイントになります。

例えば、一昔前に少し話題になりましたが、インフルエンザのワクチンの材料に卵が使われていて、卵アレルギーの人が打つとアナフィラキシーショックの危険がある、と言われています。

ですが、これらのcovid-19のワクチンには卵が使われていないため、卵のアレルギー反応によるアナフィラキシーショックは起きません。

このように、ワクチンに何の物質が入っていて、それの何が自分の体質に反応するかで、アナフィラキシーショックが起こるかどうかが決まります。

これらのワクチンでは、ポリエチレングリコールが含まれていて、これが強いアレルギー反応を起こす可能性がある、と言われていますが現時点ではっきりしたことはわかっていません。

そして、アナフィラキシーショック以外の副作用は、現時点ではそれほど大きな副作用は報告されていません。

ただ次の2回目の接種の時にどうなるかはまだ不明なので、また追って取り上げて行きたいと思います。

 

国内の状況

最後に、国内のワクチンの状況ですが、現在正式に発表されているのが、2月中の特例承認の方針です。

2月下旬から医療従事者、1か月後の3月下旬から高齢者、4月の順以降から妊婦さんと一般向けに流通するという形です。

まだ流動的ではありますが、現時点ではこのような方針が決まっています。そして接種をするのは、現在は任意接種という形です。

ちなみに、話が少しそれますが、ワクチン接種に積極的ではない人、ワクチンを打ちたくないと言う人が3割ほどはいます。

これは日本も含めた世界的なことで、若い人は基本的には感染しても軽症で済むことが多いため、打つことによる副作用の方が怖く、リスクを負いたくないという気持ちが少なからずあるためです。

全く新しいワクチンで、開発スピードも異例中の異例ですので、この考えも充分分かりますが、ワクチンを打って感染しないようにする、という事は、ウイルスの拡散を防ぐことに繋がるため、結果的に医療が守ることに大いに繋がります。

また当然、前述のようにワクチン内の何らかの物質でアレルギー反応を起こしてしまうなど、何らかの理由で、いずれのメーカーのワクチンも使えないという方もおそらく存在します。

数字で言うと、接種率が最低70%ほどにならないと、covid-19による感染を抑え込むことは難しいです。

「ワクチンを打った方が良い」という風に世論を持っていくためには、効果がどれくらいあって、副作用はこうしたもので、といったことを逐一発表して、信頼をしっかりと得る事が必要になります。

ちなみに自分ももちろん、打つ順番が来たら打たせて頂こうと思います。

一応医療従事者ですが、順番としてはcovid-19に直接かかわる方の次なのか、単純に一般の人扱いになるかまだ不明ですが、順番が来たらすぐに打つつもりです。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属