質問よりっ!covid-19と親孝行#404

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今回はコメントで頂いた、とても難しい「感染症のリいについて

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感染症のリスクがある中で、お見舞いに行ける?

今回はコメントで、難しいお話を頂きました。

内容は、自宅でがん闘病の最中にあるお父様が、お孫さんをとてもかわいがっており、せめてもの親孝行に、出来るだけ実家に帰って顔を見せて、励ましてあげたい、というものです。

そして、covid-19の「無症状感染」のリスクがあらゆる人に考えられる現状では、2月以降は実家に帰ることができず、顔を見せられていない、と頂きました。

高齢者の方、持病がある方にとって非常に脅威となるウイルスなのは事実で、今、抗がん剤治療中の方のお見舞いに行くのは確かに、きわめてリスクが高い行為となるのも事実です。

非常に難しい問題ですが、思い切って自分なりに、アドバイス出来たらと思います。

 

がんを治療するお薬か、再発予防のお薬か

コメントでは、一昨年胃がんを患い、現在も服薬の抗がん剤を使用していますが、免疫が低下するとコロナにかかりやすくなるからと、最近は薬をお休みしてるようですが、とあります。

つまり、covid-19の影響で一旦お薬を飲むのをストップして、免疫力を維持して様子を見ている最中と考えられます。

自分の推測ですが、服用されている抗がん剤が、治療の抗がん剤なのか再発予防のための抗がん剤かで変わって来ます。

もし、がんがある程度治っていて、再発予防のための抗がん剤を家で服用しながら安静にしている、ということであれば、急激に病状が悪化するのはそれほど考えにくい、となります。

ただし当然、がんの患者さんは、健康な人と比べると免疫力は確かに低く、covid-19によって重症化する可能性は充分考えられます。

そして、このコメントをくださった方は、都内に通勤しているため、自らや息子さんが既に感染している可能性を完全には否定できない、と言う状況にあります。

少し整理してみましたが、やはりかなり難しい問題です。

正直、単なる一般論にはなってしまいますがやはり、単純に「濃厚接触を避ける」のがまず挙げられますが、一番大切なのは、後述する「お父様の意見・考え方」だと思います。

 

濃厚接触とは

様々なメディアで連日取りざたされている「濃厚接触」ですが、これにはきちんとした定義があります。

これは2つあり、「対面で手の届く範囲で一定時間以上の接触があった場合」です。

前者の、予防策をせずに手で触れるということですが、これはまさに手洗いや手指の消毒のことで、例えば他人が触ったものを触ったあとに手洗いをせずに顔を触ったり、粘膜を触ってしまうと、感染するリスクが高まるということです。

後者がとても難しい問題で、まずお互いにマスクをして会話をするのは、対面で手の届く範囲の距離だとしても、濃厚接触にはなりません

マスクをせず普通に会話をする際、手の届く範囲は一人分だとおよそ1メートルほどです。つまり、向き合った二人で会話をする場合であれば、2m以上離れた状態である必要があります。

その上で、一定時間とありますが、これは大体30分ほどをめどにすると確実です。

室内でマスクをしていない場合は、2m以上離れて、30分程度に収めての接触であれば、濃厚接触にならないという事です。

 

3密を避ける

そして、東京都などが発表した「3密を避ける」のも大切です。

密閉、密集、密接せず、換気が出来ている外で、距離をきちんととれるとか、前述したようにお互いにマスクをしていれば問題ありません。

例えば長時間病院内にとどまって勤務する医療従事者は必ずマスクをして、応対しています。

もしある程度楽に動けるようであれば、屋外で、散歩を兼ねて少し遊ぶ、というのが一つの手かもしれません。

その他、タブレットやスマホを使ったビデオ通話で、顔を見せながら話すのももちろん良いと思います。

 

お父様本人が今、何を考えるか

ただ、ここまではあくまでも一般論で、おそらくこうしたことは重々承知の上で、コメントをくださったのだと思います。

実はコメントの最後に「父は病状を多くは語りませんが、決して良い状況ではないように見えます。今、この間にも、父の余命は短くなっているのではないかと思うと、苦しいです。とりためのない悩みで恐縮ですが、こんな時どんな心持ちでいたら良いのか、アドバイス頂けると幸いです。」

とありました。

どういう心持ちでいたらいいか、どうするのが一番良いのか、という事が一番大きな問題で、悩みになっていると思います。

個人的なアドバイスにはなりますが、思い切って詳しく、お父様と話してみるのが良いと思います。

はっきりとした病状は今、お父様本人しか分かっていない状態と思います。

家族に心配をかけまいと、病状を聞いてもなかなかはっきり答えてくれないところで、covid-19の問題で直接会う機会が大きく減った、という状況ですので、思い切って「もうちょっと知りたい」ということで、はっきりと聞いてみてください。

そして逆に、「孫の顔を見せて少しでも親孝行をしたい、顔を見せに行きたい」という気持ちと「自分と家族も無症状感染の可能性を完全に否定出来ないため、なかなか行けない」ということもきちんと伝えてみてください。

そうしたことを話してみると、おそらくそこで、お父様がどういう風に考えて、どういう選択をとるかが大きく変わってくるはずです。

もし、万が一厳しい状況であれば、出来るだけ多く顔を見たいと思う可能性もありますし、一先ずは大丈夫そうだからしばらくは大丈夫、と言う可能性もあります。

簡単ではありませんが、お互いに打ち明けてみると、様々なことが分かって来て、色々な方法が取れるようになります。

そこで出た、お父様の考えを尊重するのが、一番良いのかなと思います。

 

「意思を尊重する」ということ

この、本人の意思を尊重するというのは、少し縁起が悪い極端な例ですが、分かりやすいのが、救命処置についてです。

本人は救命処置を止めて欲しいと思っていても、ご家族が救命処置をしてくださいと頼む、というケースがあります。

ご家族としては、ご本人に少しでも長生きしてほしいという思いが充分ある一方で、その当の本人の意向とは反してしまうことがある、ということです。

なので、出来れば早めに、難しければゆっくりとでも良いので、是非お父様と話し合ってみてください。

お孫さんの顔を見せるのも親孝行ですが、お父様と時間をとって話し合うのも、一つのとても良い親孝行になるはずです。

自分の意見ではありますが、何かのきっかけになればと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属