風疹と麻疹ってどう違うの?【リスナーからの質問】#717

麻疹(はしか・ましん)の患者さんが急増

新型コロナが5類になって久しいですが、最近急増している感染症が麻疹(はしか)です。

麻疹は直近だと新型コロナの流行の前年、2019年に大流行しており、その年は合計で744人の方に感染が認められていました。

今年は6月現在で、すでに10人の感染が確認されており、流行の兆しを見せています。

2019年以前の麻疹の患者さんは年間で10人程度、一桁台がほとんどでしたので、もしかしたら再度大流行する恐れがあるとして、少しニュースになっています。

そんな中、「麻疹と風疹の違い」について、難しくてわからないというコメントを頂きました。

麻疹は「ましん」と読むこともあり、特に病院などでは「麻疹・風疹ワクチン」としてワクチン接種を呼びかけるポスターも多いと思います。

今回はこの麻疹の流行に合わせて、麻疹と風疹について今一度まとめて行きたいと思います。

風疹とは

まず、今回流行しているものではない、風疹というものについてですが、一昔前は「3日ばしか」と呼ばれることもあった病で、麻疹と非常に似ているのが特徴です。

ウイルスは風疹のウイルスですので麻疹とは違いますが、感染力が強く、経路としては飛沫感染になります。

飛沫感染ですので、簡単に言えば新型コロナやインフルエンザのような形ですが、数字で言うとインフルエンザの34倍ほどとされています。

そしてもう一つの特徴が、潜伏期間が長いという点です。

感染してからおよそ2週間から3週間ほど潜伏期間があり、それから微熱が出て、湿疹と同時に高熱が出るという風に進行していきます。

風疹によって出る湿疹は、体の広範囲に小さいぶつぶつができることが多く、基本的には数日経てば痕も残らずに消えて、熱もすぐ下がります。

ただ、首回りや耳の後ろといったリンパ節が腫れることが多く、熱が下がって症状が引いても腫れは数週間ほど残る、ということがあります。

症状を見ると、風疹はあまり重度ではないように思われそうですが、最も厄介で注意が必要なのが、妊娠初期の方の風疹への感染です。

妊娠初期に風疹に感染してしまうと、胎児に影響が及び、先天性風疹症候群という症状を抱えたままお子さんが産まれてくることになります。

ですので後述しますが、何よりもワクチンによる予防が必要といえます。

空気感染する麻疹

そしてもう一つの、今回のテーマとなる麻疹ですが、麻疹は麻疹のウイルスによって感染するもので、前項の風疹とは少し異なります。

症状も感染力も、風疹より強力で、特に感染力は空気感染をするウイルスの一つとして有名です。

潜伏期間は10日で、風疹のように風邪のような症状が初期症状として現れます。

咳や鼻水、微熱といった症状が出ますが、それらが一旦引きます。引いた少し後に、湿疹とともに高熱が出ます。

これが麻疹の最大の特徴です。

この時の湿疹は風疹のよりも大きく、赤みも強くなり、さらに治ってからも色素沈着として痕が残るケースが多いです。

また、風疹のようにリンパ節にウイルスが入るため首回りが腫れるという症状も出ますが、麻疹の場合は風疹よりもはるかに強いため、戦いが激しくなり、体の免疫力が一時的に大きく下がります。

ですので高齢者ではない、健康な成人の方であっても肺炎にかかる恐れがあり、麻疹で免疫力が下がることで命の危険が出るということも珍しくないのです。

しかもこれは、前述の風疹のように、症状が治ったとしてもリンパ節が腫れていれば、まだ体の免疫が戦っている証拠ですので、免疫力が著しく低いまま過ごすことになります。

さらに麻疹には、SSPEと言い、感染後およそ2年から10年ほど経ってから発症するという症状もあります。

SSPEは脳への後遺症のようなもので、物忘れや癇癪を起こすなど、少し認知症に近い症状が出ます。

しかも徐々に進行していくため、最終的には植物状態になる恐れもあります。

麻疹は感染すると、およそ1000人に一人は亡くなっている計算になり、治療法は現在もなく、安静にして体の免疫力で治していく以外に無いという現状です。

ワクチンの再接種の検討も

風疹、麻疹のワクチン接種は、日本では義務化されており、1990年、平成2年以降に産まれた方は原則全員受けていることになり、現在では一昔前よりは感染者数は少なくなっている傾向にあります。

それでも最近、風疹や麻疹に感染する方が増えている理由は大きく二つあり、まず一つが1962年から79年生まれの方は、当時の政策では義務化されておらず、ワクチン接種をされていないという方が多いという点です。

次に、近年風疹や麻疹の患者さんが減ってきていたのは、ワクチンと同時に昔よりも清潔な世の中になり、ウイルスの接触機会が減っていたという点もあります。

言い換えれば、昔はウイルスとの接触機会があったため、ワクチンで得た免疫が戦うことで細胞が刺激され、免疫力が上がって維持されていたものの、現代はその接触機会が少なくなり、ワクチンを接種した中高年以上の方でもウイルスへの免疫力が下がり、感染するリスクが高まっているということです。

またそもそもワクチンを打っても体質的に免疫がつきづらい人、というケースもあり、こうした要因によって感染者数が増えているという可能性が考えられます。

もし不安があれば、抗体検査をして風疹麻疹への交代があるかを確認するという手があります。

風疹麻疹の抗体検査をしている病院は多く、同時に風疹麻疹の混合ワクチンもあるため、それを接種して、免疫力を高めて予防していくのがおすすめです。

中高年の方や、免疫力に不安がある場合は検討してみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属